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「朝か、、っ」
「すー、っぅ、ふー、すー」
最悪の目覚めだ。気分が良くない。今日も憂鬱なまま過ごさないといけないのか。
最近はもう起きることでさえ苦痛だ。生きるのも疲れてしまったから次の日がきてほしくない。寝ないとこうして精神がすり減っていくのはわかるが、寝たら次の日がくる恐怖でもう少し、起きていたいという考えになる。
気分転換に久しぶりに外でも出るか。もう少しで食材とか日用品がなくなるから買いに行かないと。
いつものように憂鬱だし、外に出たくないけどネット通販だと日用品の消費に間に合わないから動くのでさえ苦しい体に鞭を打って準備を始める。
ガチャと扉をあけ差し込んでくる光に嫌悪感を抱くが、昨日のパソコンで光に少し慣れたため、普段よりはマシだった。
十数分歩くと、小さいスーパーに着く。少し町外れの小さいスーパーだが、十分な食材や消耗品が売っている。大きいスーパーは混むし、うるさい。引きこもりで少し人混みや騒音が苦手になってしまった弊害で大きいスーパーに行くのは苦手だ。今はこの小さいスーパーが心地よい。
食材と、食器用洗剤、あとティッシュと掃除用具。いや、その二つはスーパーより帰り道にあるドラッグストア寄ったほうがいいか。あとは、なんだっけ。
会計を済ませて、歩きながらドラッグストアで買うものを考える。ティッシュ、掃除用具、あとなんかあるか?
「、、、」
包帯、消毒、それが思いついてしまった。いや、傷をつくった後の対処じゃなくて、傷をつくらない対処を考えたい。なんでこんなことしなくちゃならないんだよ。普通に暮らしたいだけなのに。あと、頭痛薬でも買っていくか。最近妙に体調が悪いし。
さらに憂鬱になって、今すぐしゃがみ込んで休みたい。だがそんなことしたら周りにいる人に軽蔑の目で見られそうだからなんとか歩く。
「はぁ、、」
やっとドラッグストアについた。やっとと言っても数分程しか歩いていないはずだ。それが途方もなく長い道のりに感じた。
まずはティッシュ、掃除用具を手に取った。歩いていると、洗顔や美容液などが売っている化粧品コーナーが目に入った。そういえば、化粧水がなくなりそうだったんだ。気づけてよかった。
いつも使っている化粧水を手に取る。その少し横に、見覚えのある、ピンク色のカミソリがあった。
「これって、」
あの、寝る前に見た衝撃的な動画で使われていたカミソリだ。病み垢がよく言う、貝印?のカミソリ、それだ。
「、、一応、一応だけど、」
なんの一応だよほんとに。ほんとに嫌になる。今あるカッターで大丈夫、そうだろ。と頭の中で唱えても、なんだか、なんだろう。もう手に取ってしまう理由も、手から離せられない意味もわからなかった。
包帯と消毒と、それから薬を買いに行こう。今回は余計なものを見ないように。
そうして医療品コーナーを探して再び歩き始める。着くと風邪薬、湿布、サプリなど様々なものが陳列されていた。
湿布も買っておくか、寝転んだり、座ったりすることが増えたから。包帯は、どれがいいんだろう。それともガーゼのように貼れるものの方がいいのか。いや、もうガーゼでは傷の範囲が収まらない。この、安い包帯でいいか。また買いに行くのが面倒だし、多めに買っておこう。
そして消毒と風邪薬を手に取って、会計をし、店を出て再び歩き出した。
やっと家に着いた。歩くのも含め、1時間ちょっとの外出なのにこんな疲れるだなんて。
重たい体を無理やり動かし、食材を冷蔵庫に入れ、消耗品を収納する。さて、包帯はどこに置こうか。できれば自室だよな。あと、一応カミソリも自室に。
「、、、ほんと何してんだろ、」
自分に傷をつけるためにカミソリを買って、包帯を買って、消毒を買って。それを自室に置いて。ほんとに虚無というか、なんというか、自分がしたい行動がよくわからない。
もう、無理だ、無理なんだ全部、だから、だから、、
「切ろ、」
そうするしかなかった。切っている最中は痛いけど、どこか自分の感覚ではないような、なんというか。自分の脳まで一つ壁を通して痛覚が届くみたいならどこか他人事のような感覚。
もう、現実が現実じゃないような、自分を俯瞰しているような、そんな感覚がする。
あとでこれを離人症だと知ったのはもっと先の話。
浅い傷だから毎回大した血も出ないし、生活に支障もでない。けど、脳が切ったという事実に過剰に反応しているのか、サーっと血の気が引く感覚がする。頭がぼーっとしてきて、浮遊感というか、全部どうでもいいように感じれる。もう、この感覚が癖になってしまったのかもしれない。
落ち着いたから配信をつけよう。いやその前に消毒して、さっき買った包帯を巻こう。消毒といえば、小学校とかでは小さいわた、いやめん?か。それに消毒をつけてポンポンって消毒してもらってたなあ。とかバカみたいなことを考えて、もちろんめんなんてものはないから適当なティッシュに消毒をつけて腕に当てていく。多少染みるが、小学校のころ痛くて痛くて必死に抵抗していたことをおかしく思うくらい痛覚を感じなかった。
消毒が終わったら、包帯を適切な付け方もわからないが無作為に巻いていく。プレイにすこし支障が出そうだから手首の方は巻かないでおくか。
配信をつけて、挨拶をして、そして配信をTwitterでツイート。ここで本垢とあの暗黒の垢を使い間違えないようにしないとと注意する。あっちのアカウントは鍵垢にして、フォロワーもbotくらいしかいないから、もしツイートしてしまっても問題はないと思うが。
「じゃあ、今日はゆったり雑談しながらXマッチしていこうと思います」
別ルール珍しい!
やったー!
最近配信頻度少なかったから供給助かる。
配信でリスナーに求められるたびに、あぁ、自分は存在してても大丈夫なんだという安堵を得られる。もっと、頑張らないと。
最も安心したのは、傷が昨日より増えていて、手首にも大量の傷跡があっても問題なくプレイできていることだ。特に痛みも走らない。若干違和感はあるが、プレイに集中していたり、楽しく話していると傷がついていることも忘れるレベルだ。
これだったら隠し通せる。やっていける。
そう安心しながらしばらく、配信を続けた。
「じゃ、ありがとうございましたー」
ひと仕事終えた感じがして少し安心する。やっと、配信者として、人間としてやらねばならないことをやっとできた感じがする。久しぶりに動画でも出すか。今日の配信結構盛り上がったし、配信のダイジェストとか。
画面を切り替え、今日のアーカイブを保存し、編集に取り掛かる。編集とか、サムネとか、あまりよくわからないが、とりあえず字幕と効果音とか入れとけばリスナーは満足するだろう。
なんか、前より日常が充実し始めたな。リスカの恩恵か。するべき物ではないけど、最近はしないと生きていけないし、もうあまり悪いことだと思っていない。なんなら、生きるために、自分が生きていくためにやっている行為なんだから、別にいいんじゃないか?とか、リスカをすることに対しての罪悪感がだんだんと薄れていく。
いや、罪悪感が薄れたんじゃなく、現実と乖離してしまったような感覚があるからか。まあ、配信も続けていけるし、日常生活にも支障はない。もう、どうでもいいか。
最近は常に頭がぼーっとしてて、まともに考えがまとまらないことが多いが、それでも今、生きれている。死にたい、なんて考えが頭に浮かぶこともあるが、自分の生存本能が死ぬための行動を止めてしまう。心の根底では生きたいという感情があるのか、それともただただ人間としての本能が働いているだけなのか。まともに働かない頭では考えられないが、生きているので、全部どうでもいいのだろう。
そう、無駄な考えを頭の中で巡らせながら編集をしばらく続けた。
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