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「……ん、……」


肌寒さでふと目を覚ました私は、重い瞼をゆっくり開ける。


「……あれ? 私……」


いつの間にか眠ってしまったんだ、そう思いながら身体を起こして目を擦り、徐々に視界がクリアになっていくさ中、見慣れない部屋の感じに一瞬目を疑った。


「え? ここ、どこ?」


というかそもそも、何故私は部屋の中に居るのだろうか。最後の記憶を辿ると確か、一之瀬と居酒屋に居たはずなのに。


半ばパニックになりかけている中、横から微かに「……んん」という声が聞こえて来た事で我に返った私が声のした方へ視線を向けると、


「い、一之瀬……? 何で!?」


何故か隣に一之瀬が眠っていた。


そして、


「嘘……でしょ?」


再び肌寒さを感じて自分の身体に目を向けると、下着だけを身に付けた姿だった。


(え? 何? 一体……何がどうなってるの!?)


床には自分で脱ぎ捨てたのか脱がされたのか分からない、着ていたはずの服が散らばっている。


辺りを見回すと、ここはホテル……では無いようで、部屋の生活感から察するに一之瀬の部屋のようだった。


(え……、もしかして……私、一之瀬と、しちゃった?)


もう一度記憶を辿ってみても、思い出すのは居酒屋に居た部分までで、それ以降の記憶は全く無い。


この状況をどうすればいいのか悩んでいると、


「……本條……」

「い、ちのせ……お、おはよう……」

「……ああ、おはよ」


特に動じていない一之瀬が目を覚まし、挨拶を交わす。


「あの、一之瀬……これは、一体?」


何故そんなに普通にしていられるのか分からないけど、ここは冷静にいこうと恐る恐るこうなった経緯を尋ねてみると、


「お前、何も覚えてねぇの?」


頭を掻きながら身体を起こし、ベッドを降りた一之瀬もまた下着だけを身につけていて、床に落ちているズボンを手にするとそれを穿きながら問い掛けてきた。


咄嗟に一之瀬から目を背けた私は、「ごめん……全然、覚えてない」と答えると、


「まあ、俺も飲めって煽って飲ませ過ぎたのは反省してるけどよ……お前、酔うと結構絡んでくるのな?」


ズボンを穿き終えた一之瀬はキッチンへと向かって行き、冷蔵庫からペットボトルを取り出すとキャップを開けながらそう口にした。


「そ、そうなの?」

「ああ。ありゃ面倒だ。あんまし酔っ払うまで飲まねぇ方がいいぞ。本條も水、飲む?」

「あ、うん……飲みたい。っていうか、どんな風になるの? 酔っ払うと……」

「すげぇ素直ってか、とにかく甘えてくるけど、何でもかんでもくっつこうとするのは……やめた方がいい。ほれ、ミネラルウォーター」

「あ、りがと……」


再びこちらへ戻って来た一之瀬からペットボトルを受け取り、キャップを開ける。


「……くっつくって……何?」

「外では俺が背負ってたからいいけど、家着くなり『ギュッてしてー』とか言って人に抱き着いてきた……」

「嘘!?」

「嘘じゃねぇよ。しかも自分からくっついて来たくせに、その後で『暑い~』って言いながら服脱ぎ始めるし……」

「う、嘘……」


一之瀬から酔っ払っていた時の状況を聞けば聞く程に耳を覆いたくなる。


(最悪……私、酔うとヤバい奴じゃん……)


普段酔うまで飲まないから全然知らなかったけど、こんなの外でやってたら大変なんて一言では片付けられない。


「……ご、ごめん……迷惑かけて……」

「いや、俺も飲ませ過ぎたし。本條っていつも酔わねぇから、平気だと思ってた」

「私も酔わないと思ってたよ……」


今の話から私が下着姿だった理由は分かったけれど、ベッドで眠っていた事と一之瀬までもが下着姿で同じベッドで眠っていた事の説明にはなっていないと気付く。


「あのさ、その……一之瀬は何で、下着姿で……同じベッドに、寝てた……の?」


やっぱりエッチをしてしまったのか、それが知りたい私は言葉を濁しながら核心に触れると、持っていたペットボトルをローテーブルの上に置いた一之瀬がニヤリと口角を上げながらこちらへ近付いてきた。

傷心した私が一夜を共にしたのはエリート俺様同期

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