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冬休みが明けた新学期。
登校する道で、匠海と京介は並んで歩いていた。
「なぁ京介、手ぇ繋いで行こか?」
匠海が冗談半分に言うと、京介は顔を赤くしながら睨む。
「バカか。学校やぞ。兄弟で手ぇ繋ぐとか怪しすぎんだろ」
「兄弟やから逆にええんちゃう?」
「はぁ!? 余計アブねぇだろ!」
言い合いながらも、二人の距離は自然と近くなる。
生徒会室。
匠海は会長として堂々と指示を出し、京介は横でサポート。
「さすが匠海先輩、頼りになりますね!」
後輩に褒められる匠海を見て、京介は小さく舌打ちする。
(……わかってんだよ。匠海がカッコいいのは。けど人前でベタ褒めされると、なんかムカつく)
匠海がふいに京介へ視線を送り、微笑む。
「京介、ちょっと手伝ってくれるか?」
その笑顔は「恋人への合図」のようで、京介の心臓が跳ねる。
「……っ、わかったよ」
(頼むから人前でそういう顔すんな……バレるだろ……!)
部活終わり、教室に残る二人。
窓から差し込む夕焼けに、匠海がぽつり。
「なぁ京介。学校でも普通に”恋人”として過ごしたいな」
京介は即座に睨む。
「アホか。そんなことしたら一発で終わりだ」
「でも、俺は京介が好きやって隠すの、ちょっと辛いわ」
「……っ」
京介は机に突っ伏し、顔を隠す。
「……お前な、簡単にそういうこと言うなよ。……俺だって、ほんとは匠海のこと、みんなの前でも好きって言いてぇんだよ」
匠海は目を丸くしたあと、静かに笑みを浮かべる。
「京介、素直になったらめっちゃ可愛いな」
「うっせぇ! 調子乗んな!」
そう言いながらも、京介の耳は真っ赤だった。
帰り道。
夜空には星が瞬き、冬の冷たい風が吹いていた。
匠海がポケットに手を突っ込み、京介の手をそっと握る。
「外やけど、これくらいならええやろ?」
京介は一瞬驚くが、振りほどかない。
「……バカ。誰か見たらどうすんだ」
「見られたら見られたで、俺が守る」
「……ほんと、調子いいな」
そう言いながらも、京介の口元には微かな笑みが浮かんでいた。
二人だけの秘密の恋は、まだ始まったばかりだった。