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ーレヴナントによる犯罪行為により、治安は悪化し良質な血を提供する人間が減り続け
深刻な血液不足となる。
正常なレヴナントならば、幸福を感じている人間の血を好む傾向にあり
理性が失われると血の好みも変わってくる。
オリバー。庶民階級のレヴナントであり日に日に理性を無くし、今や廃墟の奥を根城にし、夜になると人間の街に出ては、誘拐、拉致、監禁、暴行、強制的吸血を繰り返す手配ランクCの危険手配犯だ
彼の家は貧しく、二ヶ月に一度の政府からのブラッドパック提供に頼る日々が続き
乾きをだんだん癒せなくなり、ついに人をさらい強制的吸血を行う
その時の一瞬の幸福と満腹感はオリバーの頭を鈍らせてゆき今に至る。
三日目前 政府特別対策本部会議室
「よくぞいらっしゃいました。」初老の男性がにこやかにティアナを迎える。
「よろしくお願いします」ティアナは緊張でカチコチになりながらも席に付き任務について説明を受ける。
「今回のターゲットは、個体名オリバー、庶民階級で街外れの廃墟を根城に人間をさらい犯行を続けている。主用武器はこんぼうと見られ、パワーだけならSランクだろう。」
その他属性耐性が高く魔術や魔法は効きにくいこと、一緒に行動しているゴブリンの軍勢が厄介であるということ。
任務の基本は徹底した情報収集にある、諜報部が掴んだ解析情報を聞いていく。
「ゴブリンは固まって動く習性があるので、広範囲魔術で一度に仕留めます。」
発言したのはナーヴェに変わり、バディとして派遣されたウィエだった。
基礎能力ランクS、種族レベル120ほど武器はルーン文字が刻まれた投げナイフと高威力、広範囲の魔術だ。距離を取って闘うキャスターである。
数時間前
ドロッセル邸宅 応接間
「はじめまして、ウィエ・アルトリウスです。真祖様。」
宜しくと手を差し出し微笑みを浮かべる、美青年。
どこの乙女ゲームだよ!というツッコミを押し殺し握手を交わすティアナ。
アルビノの美しい絹糸のような髪にルビーのような瞳の色、色白で痩せ型だが意外と筋肉はあるらしい、半袖からたくましい二の腕が見える。
「前衛はお願いしようかな?距離を取って戦うのが得意なんだけど防御力もそれなりにあるよ。」作戦での前衛をティアナが後衛をウィエが担当することが決まりお互いのスキル戦闘タイプなどの情報を確認する。
一通り確認し会議に望むのだった。
夜ではなく明け方油断しているであろう時間帯を狙って奇襲をかけ殲滅することで話は終わり移動を始める。
オリバーの拠点に流星群と火球が降り注ぎゴブリンを焼き尽くした
オリバーは乾きで鈍る体をなんとか動かし眼の前の獲物、ティアナめがけて突進しこんぼうを大きく振り上げるが剣で受けられ、数歩後ずさる。
睨み合いが続き、一騎打ちを制したのはティアナだった。
素早さを活かしヒット・アンド・アウェイで間合いを取り、欠かさず遠くから魔力弾が飛んでくるためオリバーは防戦一方で攻撃できず。
隙をわざとみせたティアナにフェイントで斬りつけられオリバーは致命傷を負う。
「もう苦しまなくていいよ。さよなら。」
ティアナは震える身体でとどめを刺す。
オリバーは霧とも塵とも分からぬ姿に変わり力尽きた。
「これでようやく眠れる、ありがとう小さな真祖姫。」
安らかな笑みを浮かべたようにオリバーは消え去った。
「はあ はあ」息を切らして、座り込むティアナ
「大丈夫?」ウィエが近づき手を差し伸べる
庶民でも貧困層だと深刻な血液不足の影響をモロに受け貧困から犯罪者となる場合が多い
血液不足解消に人造血液の開発が認められて、庶民にも安くて安全な血が供給されるようになったのはつい一週間前で、制度を知らない庶民も多い。
制度改革と情報開示は今後のレヴナントの国の課題だろう。
幸い今回、汚染された被害者は居なかった。
汚染、レヴナントの持つ毒素に汚染されると、狂犬病のような症状と人間なのに血の乾きを覚え、無差別に生き物を襲うようになり手がつけられない。
未だ治療薬はなく解毒剤による、毒素分解が対処方法だという。
ドロッセル邸宅 自室
ティアナは異世界に来て3年と少しでだいぶ生活にも慣れてきたが、貴族と庶民の格差が深刻であること、魔導家電は貴族にのみ普及しているのは、魔力を持つのが貴族のみであることに由来する。
庶民は血の定期供給を受けれる人とオリバーのように受けていても抑えが効かなくなり暴走するケースがある。
庶民でも電力が使えれば、魔導家電も動かせるはずと
必死に大学時代に努めていた家電量販店で覚えた冷蔵庫の設計図を書いてゆく
今日は久しぶりの徹夜かも。
どことなく沈んでいた気持ちは、庶民のための家電開発に向いていた
オリバーは血をもらっても腐らせたりして、品質が落ち、品質の悪いものは狂気を呼ぶ特質があると言っていたので定期供給された血を保存できれば少しは品質の悪いものを口にすることも減るかもしれないとティアナは考えていた。
夜は穏やかに深けてゆくのだった。
終わり