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佐川は左肩、左肘に刺さった矢を乱暴に引き抜いた。
傷口から黒い血のようなものが溢れ出た。
「赤くない血、どういうことだ」
タールはゲラゲラと笑い、足をバタつかせていた。
「やはり、狩りは楽しい」
「獲物を仕留める快感は他に勝るものはありません」
謎めいた世界、黒い血、夢物語と理解したいが、痛みはどうやら現実らしい。
「これはやばいかな」
左腕から流れる黒い血が止まらない。
何か痛みを抑えるものはないかと、ポケットの中を探してみた。
四つ折りにされたA4の紙切れが入っていた。
「なんだこれ」
タールは見つけたと叫ぶ。
「やはり、持っていましたか」
「私が1番乗りです」
「あなたには不要の物です、それをよこしなさい」
タールは4本腕に戻り、佐川から紙を奪うべく前進する。
佐川は紙を元のポケットに戻し、呼吸を整えた。
右手で左肩を抑え走り出した。
「サーザスと同じ紙があった」
「これがあれば事態を打開できるかもしれない」
「まずは傷の手当てをしなければ」
近場で目につく建物を探した。
「あれは、工場の廃墟か」
古ぼけた3階建ての工場へ向けて、全速力で駆け出した。