テラーノベル
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千歳は髪の毛をしっぽみたいに動かせるようになってから、俺と一緒にソファに座るときや、寝る時に、俺の胴体に髪の毛を巻きつけるようになってしまった。別にきつく締め付けられるわけじゃないし、いいんだけど。
そんな千歳は、ソファーで俺に髪の毛を巻き付けつつ、唐和開港綺譚三巻を読み直している。
『茉莉、ものすごく桂花のこと大好きだよなあ』
茉莉は唐和開港綺譚に出てくる、十四才で医師になった天才少女だ。で、主人公の桂花(美少女)は何故か俺がモデルである。こういうのもバ美肉なのか?
「桂花はさあ、茉莉のことを単に仲のいい友達だと思ってるけど、茉莉は桂花のこと恋愛的な意味でもうすごく好きって感じだよね」
『うん、話が桂花の語りだから茉莉の気持ちわかってないだけだよなあ』
ところで、茉莉も美少女の設定である。女体化されて美少女にモテる小説書かれてる俺、何?
前作のてんころでもそうだったけど、千歳は、狭山さんの小説の恋愛模様にいつもすごくワクワクしている。そういうのは好きみたいなんだけどな。
「……その、千歳はさ、小説とか漫画とかの恋愛模様、好き?」
『うん、見てて楽しい』
「……その、千歳は……自分でやるのは、どうなの?」
『自分で?』
千歳はキョトンとした。
「……恋愛模様を自分でやるのは、ピンとこない?」
『……自分で?』
千歳は首を傾げ、本を置いて、腕を組んで考え込み始めてしまった。
『うーん……ううーん……』
「あ、いや、ピンとこないならいいんだ、ごめんね」
俺は慌てて謝った。
千歳は、物語の恋愛模様見るのは楽しい、でも自分でやるのはよくわかんない、そういう感じなんだろうな。まあ、スポーツなんかも、人の対戦を見るのと自分で対戦をやるのでは、ぜんぜん違うもんな……。
……俺の千歳への気持ちは、やっぱり押し込めておくしかないな。こんなにくっつかれてても、遠い部分は、遠いもんだな……。
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凛道桜嵐 新
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がくじゅつてき・あかげ
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コメント
1件
ああ、このエピソード、すごく切なかったです……。千歳が無意識に髪を巻きつけてくる距離感と、主人公が「遠い部分は遠い」と自分を納得させるところの温度差が、心にじんわり来ました。物語の恋愛は見るのが好きだけど「自分でやる」がピンとこない千歳の反応、それに対する主人公の諦めの口調が、読んでいてもどかしくて愛おしかったです。この距離がどう変わっていくのか、気になります。