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fw『』
「ふわっち、これ!」
『ん?なんこれ、』
ぐい、と前に差し出した明那の手に握られているのは、風呂敷に何かが入ったようなもの。
その物体が何なのかイマイチ理解できなくてそう聞くと、明那は相変わらずニコニコとした笑顔でそれについて話し出した。
「手作り弁当…ってやつ?ふわっち前言っとったよな、久々に誰かの手作りが食べたいーって」
その言葉を聞き、急いで朧げな記憶を呼び戻す。
そう言った記憶がどうにも思い出せなかったが、少し間を開けてやっと数週間前にそんなことを言ったのを思い出した。
ていうか、もう随分と前のことなのに明那が覚えていたことにびっくりした。しかも話の流れでポツリと零した、本当に些細な一言だ。
手作り弁当を作ってくれた事実だけでも大変嬉しいが、何より明那がそんな小さなことまで記憶しくれていたことが嬉しかった。
『え、え、そんなこと覚えたってくれとったん?えー!!真面目に嬉しい!ありがとー!』
「んはは、どういたしましてーw」
『…もう食べてええ?』
「えっ!?ここで!?早すぎん?」
『んー!せっかく明那が俺のために作ってくれた弁当はよ食べたいやんー!』
「んん…。まぁ、別にええけど…」
照れたように笑う明那はやっぱ誰より可愛い。
明那の了承も得たことだし、と袋を開けると中にはきちんと二段の弁当があった。
中を見てビビった。だって俺の好きなもんしか入ってないから。
それほどまでに明那が俺のことを理解してくれてるってことなのか、それともただの偶然か…。まあどっちにしろ嬉しいのには変わりない。
『俺の好きなもんばっかり!!めちゃくちゃ美味そうやん!』
「やろ〜?普段料理なんてほぼせんせいで結構時間かかったんやから!」
感謝して食べろよ〜、と笑いながら言う明那に当たり前だと返しながら、手元の箸を取る。
ぶっちゃけ今どれだけ不味くても笑いながら食べれる自信がある。まあ明那の料理が不味いわけないんですけどね。
『っ、うまぁ!明那これ天才やわ!』
「ww流石に?ww」
俺の言葉できゃらきゃらと笑う明那が愛おしい。
てかほんまに上手い。冗談抜きで俺の今まで食べてきた料理の中で一番かも。
こんなこと明那に言ったら、お世辞やめろwと笑い飛ばされてしまう気がするが。お世辞やないのに。
明那は未だ楽しそうに笑っていて、俺も釣られて笑う。
この時間が一生続けばええのに、なんて思った。
…でもこの手作り弁当だって、本命にも作るんだろうな〜。そう思うと、熱かった頭が急激に冷めた。
『明那これまーじで上手い。これ本命に作ったら絶対いい感じになるって!』
「…ああ、うん。そやね」
『?』
善意で言ったその言葉に明那も乗っかってくれるかと思っていたのに、返ってきたのは少し元気のない声。
見ると、明那は何故かどこか複雑そうな顔で笑っていた。
思わず俺も箸を止めると、しーんと妙な間が訪れる。
「ごめん。俺帰るな」
『っえ、あ、ああ…分かった』
さっきまであんなに楽しそうだった明那の笑顔が一瞬で消えたことに戸惑いながらもそう答えると、明那は浮かない顔のまま出て行ってしまった。
何かいけないことを言ってしまっただろうかと考えるが、やはりよく分からなくて。 理由も分からないのに何となく罪悪感を覚えてしまう。
ハッと弁当の存在を思い出して、まあいいかと思いまたそれを食べ始めた。
誰もいない中の食事は何だか寂しくて、さっきまであんなに美味しかったはずの弁当も、先程より美味しく感じなかった。
それからしばらく経って、ふと俺のスマホが音を立てて鳴った。
画面を見てみると明那からで、その文字を見た瞬間すぐに通話のボタンを押す。
電話の中の明那はもうすっかり元の明那に戻っていた。
【さっきはいきなり帰ってごめん!弁当の入れ物とかそのままよな!?てか話したいことあるから今日俺ん家来れる?】
『んーや、全然大丈夫やでぇ。オッケー、すぐ行くわあ』
話したいこととは何だろう。何か嫌なことでないといいが…。
そんな不安を募らせつつ、俺は明那宅へと向かい始めた。
「まじで来てくれてありがと!ふわっち!」
『にゃは、ええよぉ〜。あ、はいこれ。弁当の入れ物ある程度洗ってきたから!くっそ美味かったでえ』
「んえ、洗ってきてくれたん!?俺が勝手に作ったのに申し訳ないわぁ…」
『いや逆にこっちが作ってもらったんやからこんくらいさせてやw』
少し申し訳なさそうな顔をした明那を宥めながら、何度か足を踏み入れたことのある明那の家へと上がらせて貰う。
明那は弁当の入れ物を置いてから、俺の真正面に座った。正直隣に来て欲しかったが、今更呼ぶのも不自然なので仕方ない。
俺がそんなどうでもいいことをぼうっと考えていると、明那は何か決心したような顔でこちらを見上げた。
「───────ふわっち、俺、好きな人に告白してみようと思う」
『…………え?』
何を言っているか理解ができなかった。
少し経ってその意味自体は分かったものの、頭が理解を拒む。
まさか明那からそんなことを言ってくるとは思わなかった。 奥手な明那のことやから絶対に告白なんてしないと高を括っていたのが仇となってしまったのだろうか。
『…え、な、なんで、?』
「…俺も告白なんて無理やと思った。でも……相手といるとどんどんその人のことが好きになっちゃうから。こんなにアプローチをしても何もないなら、もうこの恋は叶わんってことやろ、?なら…もう思いっきり振られて次の恋行った方が幸せやんっ、…」
悲しげに瞳を揺らす明那の顔は見ていられないほど悲痛で、こちらも返す言葉が無くなる。
「俺だけが相手を好きなの、苦しい。
…今まで沢山恋愛相談乗ってくれてほんまありがとう。でも、もう無理やわ、ふわっち」
明那は、もうこの恋を終わらせたいんだろう。どう考えたって成就しないと分かっているこの恋を。告白して、振られて…そしたら次の恋に─────。
好きな人の恋も応援できず、ずるずるとこの感情を捨てれずにいる醜い俺なんかよりずっとずっと先に進んでいる明那を見ていると、目を逸らしてしまいそうになった。
でも。
ああ、やっぱり嫌だ。
明那が誰かに取られるのも、明那が誰かに告白するのも、反吐が出るほど嫌だ。
こんな汚い俺をどうか許してな、明那。
『俺、明那のことが───────』
「ふわっちのことが、好き」
『…ん?』
ピタリ、と場の空気が固まる。
俺が一番望んでいた言葉を明那が本当に言ったこの現実が、信じられなかった。
いや、いやいや、明那が俺のこと好きなわけない。
あ、これもしかして練習?好きな人への告白の練習か?
それならそうと言ってくれればいいのに。
『告白の練習?俺で試さんといてやw…あーでも、めちゃくちゃええ!それでいったらぜったッ…』
「ッ違う!!っおれ、は…ふわっちがッッ……. っ、」
『っ、明那!?』
声を震わせながら叫んだ明那は、最後まで言葉を言い切らずに部屋を出て行ってしまった。
追いかけることもできずにただ呆然と立ち尽くして、さっきの明那の言葉を頭の中でもう一度再生する。
明那、さっき何を言おうとしたんだろう。
[っおれ、は…ふわっちがッッ……っ]
俺が、何?
あれ?
おかしいな、俺が今までアドバイスしてきたもの、明那全部俺にやってないか?
[接触を増やしてみたら…──]
[冷たく接して───]
どれもこれも全部。あの不自然に多くなった接触も、冷たい態度も、全部明那は俺にしかやっていなかった。
それに、あの時まゆは、何て言おうとした?
[そこまで来て何でわかんないわけ?明那は……]
続きを言うのを、まゆはどうして躊躇った?
頭の中で一つ一つのピースがハマっていく。
「ふわっちのことが、好き」
ごめん、明那。俺本当に馬鹿野郎だったわ。答えは、こんなに簡単だったのに。
───────いや、“俺ら”、どっちもアホやったみたい。
俺は手元にあったスマホを手に取り、明那の後を追った。
コメント
3件
初コメ失礼いたします🙏本当に最高すぎます😭
終始降格戻りませんでした😭😭💞このお話何回も見返してしまいます😭💞アプリではなくサイトログインなのでたくさんハート押せないの残念ですがほんと1万回押したいくらいです😭

うぉぉお!!尊いぃぃ ついに来たぁぁぁ😭😭😭