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怖がられることはあった。引かれることもあった。
でも。
「……ほんとに?」
「うん」
「無理してません?」
「してない」
「混乱してる顔ですけど」
「それはしてる」
「ふふっ」
仁人はまた笑った。
勇斗はその顔を見て、少し安心する。
よかった。
笑ってくれた。
「……でも」
仁人がぽつりと言う。
「勇斗さん、すごいですね」
「何が?」
「わたし……じゃない、俺」
「どっちでもいいよ」
「……っ」
さらっと言われて、仁人が言葉に詰まる。
勇斗は続ける。
「仁人が呼ばれたい方で呼べばいいじゃん」
「……」
「まさこさんでも、仁人でも」
仁人はしばらく黙っていた。
それから、小さく笑う。
「……勇斗さんって、ほんと変」
「なんで!?」
「普通もっと混乱しますよ」
「めちゃくちゃしてるよ!」
勇斗は頭をぐしゃぐしゃ掻く。
「俺、自分がどういう感情なのか分かんないもん!」
「ふふ」
「笑い事じゃないって!」
「だって可愛い」
「え?」
「勇斗さん、分かりやすいから」
勇斗が固まる。
仁人は少し悪戯っぽく笑った。
いつものまさこじゃない。
もっと自然な。
吉田仁人としての笑い方。
それが妙に新鮮で、勇斗の心臓がまたうるさくなる。
(……やばい)
勇斗は気づいてしまった。
まさこが好きだったんじゃない。
たぶん最初から。
吉田仁人という人間に惹かれていた。
その時。
店長が奥からそーっと顔を出した。
「……修羅場終わった?」
「店長!」
「盗み聞きしてました?」
「めちゃくちゃしてた」
「最低!」
店長はケラケラ笑う。
「いや〜、青春だねぇ」
「違います!」
仁人が真っ赤になる。
勇斗はぼそっと呟いた。
「……いや、青春かもね」
「勇斗さんまで!?」
店長はニヤニヤしながら言った。
「で? 結局どーすんの?」
勇斗と仁人、二人同時に固まる。
「どーするって?」
「付き合うの?」
「っ!?!?」
店内に、盛大に二人分の咳き込みが響いた。
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹
コメント
1件
第10話、読ませていただきました。仁人が「どっちでもいいよ」ってさらっと言われて詰まるシーン、すごく良かったです。あの言葉の軽さにどれだけ救われたか——そして勇斗が「まさこが好きだったんじゃない」って自分の中の気持ちに気づく流れ、自然で胸がぎゅっとなりました。店長の絶妙なタイミングのツッコミも笑いました。続き、気になります🤍