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「付き合うの?」
店長の一言で、店内の空気が爆発した。
「っ、げほっ、ごほっ!」
「店長!!」
仁人が真っ赤になって叫ぶ。
勇斗も耳まで赤い。
「いやいやいや!! 急すぎません!?」
「え〜? でも両想いっぽいじゃん」
「違っ……」
仁人が言葉に詰まる。
その反応を見て、店長がさらにニヤニヤした。
「え、違うの?」
「……」
「……」
二人そろって黙る。
店長、大爆笑。
「はい黒〜!」
「やめてください!!」
仁人はもう顔を覆ってしまった。
勇斗は混乱したまま天井を見る。
(待ってほんとにどういう状況……!?)
数日前まで、綺麗なお姉さんに片想いしてたはずなのに。
今はその人が男だと知って。
でも普通に可愛くて。
しかも店長に両想い認定されている。
意味が分からない。
「勇斗くん」
「……はい」
「送ってってあげなよ」
「え?」
仁人が勢いよく顔を上げる。
「は!?」
店長は当然みたいに言った。
「だってもう暗いし」
「いや、一人で帰れます!」
「でも勇斗くんいるじゃん」
「なんでそうなるんですか!」
「好きなんでしょ?」
「店長!!」
勇斗まで真っ赤になる。
店長は楽しそうに腕を組んだ。
「はい決定〜。一緒に帰りな〜」
「強引!」
「若者は夜道で距離縮まるの」
「偏見!」
仁人が抗議する横で、勇斗は小さく咳払いした。
「……俺は別に、送るの平気だけど」
仁人がぴたりと止まる。
勇斗は少し照れくさそうに視線を逸らした。
「心配だし」
「……」
「ダメ?」
その聞き方は反則だった。
仁人は数秒黙ってから、小さくため息をつく。
「……じゃあ途中まで」
「やった」
「嬉しそう……」
「嬉しいから」
即答。
仁人はまた顔を赤くする。
店長は満足げに頷いた。
「青春だねぇ」
「店長ほんと黙ってて」
閉店後。
シャッターを下ろした商店街は、昼間より静かだった。
春の夜風が少しだけ冷たい。
仁人はウィッグを被り直すか迷って、結局そのままにした。
短い黒髪のまま。
隣を歩く勇斗がちらりと見る。
「……その髪も好き」
「急に喋る」
「思ったから」
「思っても全部言わなくていいんですよ」
「でも伝えたいじゃん」
「恥ずかしい人……」
仁人は笑いながら肩をすくめた。
でも。
嫌じゃなかった。
むしろ、少し嬉しい。
勇斗がふと聞く。
「疲れてない?」
「大丈夫です」
「今日いろいろあったし」
「まぁ……」
仁人は苦笑する。
「勇斗さんの方が疲れてそう」
「それはそう」
「ふふ」
勇斗は歩きながら小さく息を吐いた。
「……でもさ」
「はい?」
「なんか安心した」
「え?」
「まさこさんが消えた感じしなくて」
仁人が少し目を丸くする。
勇斗は頭を掻いた。
「いや、うまく言えないんだけど」
「……」
「女装してる時も仁人だし、今も仁人だなって」
その言葉に、仁人の足が少し止まる。
「……そんなふうに言われたの初めてです」
「ほんと?」
「はい」
仁人は少し困ったように笑った。
「みんな、どっちなの?って聞くから」
勇斗は眉を寄せる。
「どっちって変じゃない?」
「変ですか?」
「仁人は仁人じゃん」
さらっと言う。
本当にこの人は、こういうところだ。
まっすぐで。
優しくて。
だから、困る。
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹
コメント
2件
店長、良い味出してて好きです もちろん、2人の雰囲気も柔らかくていいですね まさこさんでも、💛さんでもどっちも同じ人だからって、丸ごと好きって感じでキュンとしました
読んだよ〜〜っ🥀🖤 もうね、店長の「付き合うの?」からの流れ、しんどすぎて埋まった……「心配だし」「ダメ?」の勇斗くん反則すぎるでしょ😭💘 仁人が「そう言われたの初めて」って笑ったとこ、すごく刺さった。勇斗くんの「仁人は仁人じゃん」っていう言葉がこの物語の全てだと思う。藍月。さん、感情の描き方がほんとに繊細で泣ける🤍