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夏休みが終わり、授業が再開された。学校中どこでも生徒会役員三人の退学の噂話で持ちきりだった。さすがにブラジル行きの話は僕と彼女以外誰も知らないようだったけれど。
始業式の日の朝、相変わらず僕はボッチだった。でもいいんだ。自分がクラスメートと話すことより、メンヘラの彼女がクラスの女子たちの輪に入って楽しそうに話しているのを見る方が楽しい。なぜかその中にリョータもいる。女神とあがめる彼女と交際することはあきらめても、彼女の話を聞けることはうれしいようだ。
「霊山寺さん、夏休み、どうだった?」
「楽しいことも嫌なこともあったよ」
「嫌なこと?」
「彼氏に浮気されてね」
「浮気!?」
一斉に驚きの視線が僕に集中した。こんなボッチのメンヘラ男に浮気なんかできるのかという、そういう驚き。
「浮気ってあれでしょ。エッチな動画を見てたとかそういうやつ?」
「それも浮気だと思うけど、もっと分かりやすい浮気。他校の女子に言い寄られて、ボクの目の前でディープキスして、その人の胸をまさぐってた。悲しくて思わず泣いてしまったけど、結局彼氏はボクを選んでくれた。次の日に避妊なしでセックスされたけど、別にいいんだ。彼氏に捨てられないためなら、ボクは彼氏にどんな無茶な要求されても応じようと決めたから」
「片方がそこまで卑屈になるのは健全な恋愛とは言えないよ!」
「彼氏はボクの恥ずかしい動画も持ってる。ボクは彼氏に絶対逆らえないんだ」
僕への驚きの視線が憎悪と侮蔑の視線に変化したのは言うまでもない。教室中から白い目で見られているのが分かる。針のむしろとはこのことだ。リョータがゆっくりと僕の方に近づいてきた。