俳優(モデル)中と一応学生太!!!
⚠️中太
⚠️急展開多め
突然だけど、私は顔がいい。凄く良い。
街中を歩けば老若男女問わず振り返って見惚れられてしまうし、微笑みかけてしまえば、もう完全に私の虜になる。
瞳の中にハートを散らばせて、脳内は私ばっかりになってしまう。自分の容姿が良いと気付いたのは物心がついたとき。
結構早く気づいた。大人は私に、気色悪いくらいデレデレするし、お遣いをすれば必ずおまけされるから。
中学まではよかったけれど、困ったことに、高校になると色々変わってきた。
争いが生まれるのだ。
私の元カノだとかなんだとかで女子が争い、刺されそうになったことは数えきれない。
男子は密かに好意を寄せて、友情という名目で近づいてスキンシップを沢山して、セクハラ紛いのことをしてくる。
にこにこと笑いながら、何度心の中でうざったい‼︎と叫んだものか。
まぁそんなこんなで気づいたことは全て利用するしかないってこと。
自分の顔面を売って金を稼ぐ。 頭脳を使って相手の望む行動をしてあげる。
修羅場は良い感じに回避して、面倒臭くなったら見捨てる。
どんなに最低な発言でも、私のご尊顔の前では全て無罪になるのだから。
「……つまり何が言いたい。」
「まぁ、つまり、そんな私をスカウトする気はなぁい?」
目の前で、あからさまに苛立って、貧乏ゆすりまでしている彼ににこりと笑みを向けてあげる。
午後4時半のファーストフード店。酷く混み合っている中、どうにか席をとった。どちらかと言えば譲ってもらった、というニュアンスが正しいのだろうけど、どうでも良いので詳細は省く。
そして、店内の隅にある、二人用の向かい席に座る私と彼は、多くの視線を奪っていた。
私 は勿論だけど、彼も人気らしいから珍しいことでもない。
「あのなァ、頭に蛆虫でも湧いてンのか?そりゃ手前は顔面が良いだろうけどよ……。」
「?」
「事務所に入れてくださいっていう申し出を、その事務所のモデルにいうのか??」
「えぇ?何が駄目なのかなぁ、森事務所の中原中也くーん。」
そう、彼はあの人気の……、と言っても興味がないから私は知らなかったけれど、森事務所という海外進出までしている大手事務所の人気モデルらしい。
よくテレビで見るモデルとかアイドルとか、正直自分の方が顔面偏差値が高かったので興味がなかった。でも確かに中也(興味ないし人気気取りでムカつくから呼び捨てにすることにした)はそこら辺のモデルやアイドルよりかも顔面が良いし、雰囲気も違う。 流石海外まで行ってる俳優サンだ。
でも、正直どうでも良いなぁ。
丁度店員サンが頼んでいたコーラを持ってきてくれたので、目の前の人間などお構いなしにストローをさしてちゅうっと吸う。
ん、相変わらず味が薄い。
ストローでコーラの中に入った氷をカラカラと回していると、中也 が思いっきり舌打ちをした。
「ちっ…まじで何でこんなヤツに捕まるんだか…」
「幼馴染のよしみでしょ。社長の森さん?って人に紹介してよ。」
「馬鹿なのか手前。彼の人は多忙だ。ンな簡単に会えねぇよ。
それに、なんで俺が俳優なって、 高校生活の半分をあっちで送ってたかわかるか?」
幼馴染。彼と私の関係を簡潔的に表すのであればそれだ。中也がいつの間にか俳優になって、人気になって、海外へ行くまではずっと一緒だった。仲が良かったから、とかそういうのでは一切ない。クラスはいつも同じで席は周辺。何度も席替えのくじを引き直してもあまり変わらない。呪いみたいでやだなぁ、としか正直思っていなかった。まぁ所謂、腐れ縁というヤツ。
「ん〜、私の顔面に勝てないと諦めたから。」
あ、また癖でストロー噛んじゃった。変えてもらおう。
「そういうとこだよ。そういう手前が嫌いだから離れてたンだ‼︎」
中也は、近くをパタパタと通った店員のお姉さんを呼び止めようとした私の手を掴んで、迫真の眼力でそう告白した。へぇ、私から離れるために。ふぅん。
「じゃあ残念?だね。でも仕事紹介してくれたら関わらないよ?」
そう言い切った後に、仕事の斡旋者と関わらないは無理かも、と思ったので多分、と付け加えた。
「抑もなんで俺の場所がわかった?もしかして…ストーカーとかしてンじゃねぇだろうな?」
「まさか。」
誰が好き好んで、蛞蝓なんかの追跡なんぞするものか。冗談でも寒気がする。
「だって君、目立つんだもん。」
窓に目を移すと室内が反射している。窓を通して、自分達に目線を向けている人達を呆れたように見つめる。
「あ~、まぁ、そう、かもな?」
「なんで喜んでるの、気持ち悪い。」
中也は、無造作に肩に垂れ流している毛をくるくると弄って、歯切れ悪く返してきた。これは彼が喜びを隠すときにする癖だ。そういう、妙にわかりやすいところが嫌いだったりする。
「…一番人が集まっていて、空気が明るかったら、その中心に、大体君がいる。
君を囲う人はみんな幸せそうで、目がきらきら輝いてる。」
私とは違う形で人を惹きつける才能を持った人物。正直、羨ましい。
何年も蓋をしていた感情が、ごぽごぽと濁り返った感触がした。
「……太宰、手前…。」
「……なに?」
中也に、あからさまに目を見開いて、驚きを露わにされた。それがまるで、私の中にある君への嫉妬がバレてしまったようで、少し恥ずかしく感じた。あー気まずい。恥ずい。先ほど変えてもらったばかりのストローを、またがじがじと噛む。
「 …いい加減その癖やめろよ。」
沈黙が続くかと思いきや、手が伸びてきた。
小柄な見た目とは違う、男性のしっかりとした手が、私の髪に触れた。何をするのだろう。ちらりと中也を見ると、ふんわりと頬を緩めて笑っていた。彼はそのまま、私の横髪を人差し指で掬って、耳にかける。微かに耳に当たった指は凄く暖かくて、そのまま触れられたいと感じてしまうほどだった。
「ん、可愛い。」
中也が満足そうに頷いてさらりと溢した言葉を、私は聞き逃さなかった。
「…え、は…?」
思わず、咥えていたストローを机の上に落としてしまう。でもそんなことはどうでも良い。
私に、彼奴が、可愛い…?はぁっ!?!?!?!?
全身に熱が伝い、鼓動が急速に早くなる。今の私はきっと、少女漫画に出てくるヒロイン達を馬鹿にできないだろう。こんなこと、慣れているはずなのに、不覚にもドキドキしてしまうなんて‼︎
「ちゅう、や…?」
「あ?ンだよ。」
声がうまくでずに、口をぱくぱくと動かす。そんな私を他所に、中也はカバンからスマホを取り出して弄り出した。誰かと連絡をとっているのか、画面の上をたたん、と軽やかにタップしている。先ほど私をときめかせた、あの指で。
「…彼女?」
「ばーか」
中也の動きを目で追ってしまう自分が気持ち悪い。自己嫌悪に呑まれながら、どうにか声を漏らした。中也の表情は前髪で隠れて見えない。彼はただ昔のような口調でそう言って、ンなわけねぇだろ、とけらけらと笑った。
「彼女なンて作ってみろ。速攻叩かれるぜ、俺。」
「ふぅん。お偉いものだね。」
「ま、モデルだからな。」
「相変わらずの人気気取り。ムカつく。」
「手前の澄まし顔で人見下してンのも、ムカつくわ。」
余計な一言をそれぞれ付け加えて、会話は終了した。
澄まし顔で、人を見下しているねぇ…。中也の癖に、痛いところつくじゃないか。
このまま居るのも気まずいし、帰ろ。
私は空になった容器を片手に、席を立った。
「おい、……もう帰ンのか?」
「うん。コーラは飲み終わったし、君の顔見てたら気分悪くなっちゃったしね。」
馬鹿力で腕を掴まれて、引き止められる。何この莫迦狗。力加減というものを習わなかったの?
数秒堪えたが、流石に痛かったので振り払った。パチンと音がして中也の手から解放される。
「あっ、その、すまねぇ。 」
中也は申し訳なさそうに目を伏せた。無意識に腕を押さえてしまったからかな。まぁ痣がつくほどじゃないと思うから、別にいいけど。
「別に。じゃあ。」
「太宰!!」
中也の声が、カバンを掴もうとする私の動きを再び静止させた。
「…なに?」
「えっと、その…。」
中也は目を泳がせてしどろもどろになりながら、口籠もっていた。
呼び止めてみたけれど、いう言葉が見つからない、と言った表情だった。
呼び止めたくせになんなの?私、もう帰りたいのだけれど。
痺れを切らしてため息を溢した時、やっと中也が口を開いた。
「事務所、いいのか?」
「…嗚呼、君の事務所?もう良いよ。」
「なんで。」
「なんでって…。まぁ、もう良いかなぁって。」
正直、早くこの場から去りたい。あの蛞蝓にときめく?な訳ないじゃないか。あれは何かの間違い。もしかしたら疲れがでたのかもしれない。取り敢えず、これ以上此奴と関わるのはやめよう。
私が、変な気を起こす前に。
「じゃ、じゃあ、連絡先。交換しようぜ。」
「…あー、スマホ持ってないや」
「嘘だろ。カバンの前ポケットみせろ」
中也が三白眼を鋭く細めて、私の学生カバンをびしぃっと指差す。
この蛞蝓…。
本来であれば、ポケットを探るフリをして本当にないという演技をするか、彼の死角に隠してポケットの中を見せるの二択で、回避することのできるイベントであった。
しかし、その2択が頭の中から消えたのは、ピロリンという連絡メッセージを告げる、通知音なる魔笛が鳴り響いたからであった。
「…。」
「ほら、早く貸せよ」
連絡など教えるものかと、ここから逃げる方法を急速で組み立てる私を他所に、中也は片手を前に突き出して急かした。
「…ほわぁ…。」
「きっめぇ、それやめろ。」
諦めの呟きは虚しく罵られて終わった。
▪️
久しぶりに出会った好きな人は、相も変わらず、むかつくほどに綺麗だった。
「ごめんねー、ちょっといい?」
俺は、俺の帰国を待っていたファン達に囲まれて騒がれている中、がシリと無遠慮に腕を掴まれた。
「やぁ、中也くん。相変わらずのチビだね。」
昔のようにそう揶揄って、にぃっと意地悪に笑う妖艶な表情にキュンとした。
「…ちょっと来い」
「はぁい。」
間抜けな返事が背中から聞こえてくる。
太宰だ。
あの、太宰だ。
久しぶりに好きな人から会いに来てくれたのなら、喜ばない人間などいないと思う。
いや、絶対いるわけねぇだろ。
一生懸命昂る気持ちを抑え込みながら、高く弾んでしまわないように、声を低くした。
「要件はなんだ。」
「えー此処で話すの?」
「どうでもいいだろ。早く言えや。」
「ファーストフード店は久しぶりだね。」
此奴、無視しやがった…。
まぁ確かに、此処は久しぶりだ。
四年前まではよく此処で勉強してたなァ…。
しみじみと思い出に浸り終わって、ぐるりと辺りを見回すと人混みが増えていることに気がつく。
「あれ中也くんじゃない?」
「えホントだ!?」
「なになになんかの撮影?」
「相席してる人も綺麗なんだけど」
「なんて名前の俳優さん?」
「あれモデルさんじゃないよ」
「あんなイケメンなのに!?」
「俳優さんにもいない…」
「でも絵面幸せすぎる!」
周囲が騒がしくなっていることを、もう少しだけ無視していたい。
太宰は相変わらず周囲の目などお構いなしに座っている。
まず取り敢えず目を逸らす。
次、何気なく時計を見る。
で、時刻は4時半。
丁度帰宅時刻か。だが原因がそれだけでないのは分かっている。
まぁつまり……………俺のせいだ。
「ねぇ、注文しないの?」
事務所やファンへの対応で頭を悩ます俺を他所に、太宰はメニューをみてのんびりとしている。まぁ、そういうところが好きだったりするのだが。
「しねぇ、適当に頼め。金なら払ってやる。」
「酷いなぁ。私だってお金はあるのだよ。最近バイト始めたし。」
知らなかった。
まぁ四年も会ってなかったし、連絡も取り合ってなかったから当たり前なのだが。
「フゥン。じゃあ奢らなくてもいいか。」
出しかけていた財布を太宰にヒラヒラと見せつけたあと、懐にしまう。
「はぁ?誰が奢らなくていいっていったの?奢ってよ、ケチ蛞蝓。」
太宰は、綺麗に整った眉を微かに顰めて、不機嫌に近い声で言うと、俺から財布を奪った。
「あ、手前‼︎」
「いいじゃない。どうせたんまり持ってるんでしょ?」
俺の財布を片手に、俺を知り尽くしているかのような笑みを浮かべる太宰。
すっげぇ可愛い。
「まぁ、そりゃ、な。」
「うっわ莫迦正直に照れないでよ、鳥肌が立つ。」
そんな戯れに近い会話を交わした後、太宰は、早速だけれど。と本題に入り出した。
…もう少し、気軽に話したかったのになァ…。
どうやら太宰は、俺が海外へ行った後もモテていたらしい。
いや、あの顔面なら当たり前か。
ふわふわとした蓬髪に、大きな瞳。瞬きするたびに長い睫毛がぱしぱしとはためいて、行動一つ一つが美しい。透き通るような真っ白い肌は、触れてしまったら壊れそうなくらい儚い。
そんな性別問わず年代問わず虜になってしまう外見だ。
色々な奴に囲まれるのもしょうがない。
それはずっと前から知っている。だけど。
なんでこんなに嫉妬してしまうのか。
太宰の話を聞いて、こんなにイライラするのは、きっと嫉妬だ。
羨ましい。太宰へと軽々しく近づけるそいつらが。俺だって、一度も太宰に触れたことはなかったのに。その綺麗な、橙色の瞳にしっかりと入ったことは、数え切れるくらいしかないのに。
…海外へ行ったら、大嫌いで愛おしい此奴を、ただの大嫌いな幼馴染に変えられると思ったのに。
ファーストフード店が出るまでの間、身体が妙に熱ってしょうがなかった。同時に、頭を駆け巡るどろっとした濁った感情全てと戦いながら、終始太宰と過ごしていたことに別れてから気づいた。
*編集後記*
5739文字のなっっっっがい一話を読んでくださり誠にありがとうございます🙇
日をあけながら、ちびちびと書いていますので変な部分があるかもしれません。いつしか読み直した際に直すかもしれないので、取り敢えずはスルーして頂けると幸いです。
そして予告した学パロではなく現パロ(芸能パロに近い)ものに変更になりました。
そして中太にも変更になりました。
すっごく申し訳ない…。
理由としては、学パロが意外と難しかったこと、中太の自給自足がしたかったこと、アイデアが現パロしか無限に湧かなかったことです。予告とズレた一話目になってしまいましたが、続きも見てくださると嬉しいです。(毎週日曜日に投稿する予定)
それではスクロールお疲れ様でした~‼︎また👋
コメント
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俳優中也と学生太宰‼️ めっちゃ好きです😭😭 続き楽しみにしてます🫶💖