⚠️中太
⚠️急展開多め
⚠️モブ発生!!
あれから俺は、太宰と連絡先を交換して、すぐ店を出た。
どちらかといえば、太宰の方が先に出ていってしまった。
正直傷ついたが、俺も男だ。ずっとずるずる引きずるほど女々しくなどない。決して。
じゃあ何年もの片思いは?と言うことは聞かないで欲しい。それは仕方がないことだと自分でも吹っ切れているからだ。
…ホントに、何年片思い引きずってンだろうなァ…。
「…それにしても太宰から連絡がこねぇ~~~!!!!」
数時間前から…、いや連絡先を交換してから1分ごとにチェックしている。
重いだとか、自分からしろだとかいう意見は受け付けない。一切。
何度目かわからないため息をつく。
もうこの部屋には俺のため息という名の憂鬱で埋め尽くされているのではないか、と言うくらい空気がが暗い、重い。
「初めの、よろしく、とか送ってくれてもいいじゃんかよぉ“~……」
スマホを見ないように裏返して机に置く。そして、机に頬をついて情けない声を漏らす。
こんな風に葛藤する姿は、いつしか出演した恋愛ドラマの、青春真っ只中の男子高校生のようだ。
いや実際、モデルなんていう職業でなければ、あのように青春を謳歌している年頃であるとは思うが、モデルなんだからしょうがない。
「いや、俺から送るべきか。だって俺が交換しようって言った訳だもンな…?」
嗚呼この言葉3分前にも言ったなァ。どんだけ情けねェんだ俺。
「!!」
スマホに伸びる自分の手が、あり得ないスピードで機体を掴んだのは、チャットの通知音が鳴り響いたからであった。
良かった。
現場にも常にスマホを常備して、ちょくちょく確認しながら待っていた甲斐があっった……!!!!!!
思わずスマホを胸に抱きしめて、喜びを噛み締める。
大袈裟かもしれないが、いつもは聞き慣れている通話音も素晴らしいジャズのような、華美な音に聞こえてくる。
まぁ多分、それくらい嬉しいのだ。
電源を入れると『一件のメッセージ』という名目がロック画面に表示される。
太宰はなんて送ったのだろうか、一応送った、っていう感じの一文字だけ?それともよろしく?何であれ嬉しいことに変わりはない。
うきうきと画面をタップしようとするが、或ることに気づき、嫌な予感に見舞われる。
…なんでDMなンだ…?
確か太宰には、個人用メールを教えた筈。社長と、親密な関係の者だけしか知らないアドレスを。
なのに態々DMで送ってくる理由って…。
「ッ…!」
開くべきではなかった。
しかし、微かに震える手が、吸い込まれるように其処をタップしてしまった。
酷く、眩暈と吐き気がした。
「こ、れは……。」
『中也くんの初恋の人特定!!』
そんな莫迦けたメッセージと共に添えられた、俺と太宰が喋っている写真。
それだけではない。太宰は気が付いてただろうか。あの帰宅の最中に、自分がカメラを向けられていたことを。
「太宰、 」
力の抜けた声が虚空を落ちる。
どうすれば。
目の前がぐるぐると回った。また、まただ。
「と、取り敢えず社長に…。」
いやだめだ。心配をかける訳にはいかない。姐さんにも、芥川にも。
スマホを持つ手の力すら完全に抜けて、冷えたフローリングの床に落ちる。
若干ヒビが入ってしまう。それを拾おうとしゃがむも、吐き気が込み上げてくる。
あの苦い思い出と共に。
「だめだ…、誰にも頼れない。あの時みたいに、自分で解決しねぇと…」
涎と、胃液と共に吐き出される頼りない言葉。
誰にも頼れない。
自分で言った言葉が妙に苦しい。
きっと話せば嫌がる人達ではない。
けれどみんなにも其々の人生がある。
其れを壊すことはできない。
家族に等しい、大事な人達だから…。
「くそッ、なンで、また…。」
思い出したくない。気持ち悪い。気持ち悪い。キモチワルイ……。
「中也くん。今日は酷くやつれているねぇ。一昨日の騒動。そんなに対処が難しかったのかい?」
ストーカーの対策方法。まずは家を変えて、セーフハウスも変えておくか。スマホも…ヒビが入ってしまったから、ついでに新品にしよう。この前はスタジオまで来たから、芥川達の収録現場から離れるか。社長に頼んで、遠くの現場に回してもらおう。それで、太宰は……。
「…中也くん?」
「…太宰には……。」
どう説明しようか。急にストーカーが、なんて言われても信じないだろうし。会う口実に思われてより嫌悪されるかもしれない。だが太宰に被害が行くのは確実。だったら彼奴の家も変えてもらうか…?でも勝手に変えるのはダメだ。彼奴の合意がいる。けど巻き込むのは嫌だ…。
俺のせいで、彼奴が苦しむのだけは……。
「チュウヤ!!」
「うぁっ!?」
急に肩を掴まれた。
変な声でちまった~~“っ…‼︎
肩に手を置いたのは、金髪の可愛らしい少女だった。
「す、すみません!!!」
「大丈夫よチュウヤ。疲れているのね。リンタロウが仕事を詰めすぎるせいよ!」
にこにこと微笑んでいた少女ーエリスーは、社長ー森鴎外ーに向き直ると、頬を膨らませた。
「い、いや俺が悪いんです。エリス嬢…。」
「そう?チュウヤは優しいのね!」
「じー……。」
「エリス嬢…社長からの視線が痛いです…。」
若干拗ねたように凝視してくる社長。怖い、と思いつつも暖かい空間に、思わず頬が緩む。気を抜いては駄目で、ポーカーフェイスが上手くなっていった職業柄、心から笑顔になれる瞬間は数少ない。矢張りこの人たちは優しくて大切な人たちなのだと、改めて実感させられる。
「ふふ、笑ったね中也くん。」
「あっ、すみません…。」
「謝らなくていいのだよ。
それに、何か困り事があるのではないのかい?」
流石社長。この人には敵わないな…、と苦笑する。
「なんでもないですよ。ただ疲れが溜まっていて…。
社長がよろしければ、2日、休暇を頂けませんか?」
2日。この期間でストーカーを対処する。どんな手を使ってでも。
けれど表の業界にでる自分たちは、そう易々と休むことはできない。
それに、自分のスケジュール表は、来年まで埋まっているぐらいなのだから、尚更だ。
「えぇ、2日でいいのかい?」
「一週間は休んだ方がいいと思うわ。」
「そうじゃぞ中也。愛いお主には身体を壊して欲しくはない。」
「社長、エリス嬢…、姐さん…、有り難う御座います。」
三人の暖かい言葉に胸がじんわりと熱くなる。
それにしても一週間もくれるなんて…。
………。
ん?3人????
「あっ、姐さん!?!?」
「どうしたのかえ中也。幽霊でも見たような顔をして。」
「いっ、や、あの…、先程までは居なかった…ですよね、?」
居なかった。確かに居なかった…はず。疑問系になってしまうのは、姐さんが、ずっと居た、と言った顔持ちでいるからだ。…居た、のか…?
「そうじゃよ、すまんのう。焦るお主が可愛い故、少し意地悪をしてしまったのう。」
袖を口元に当ててそそっと笑う姐さん。
この人は俺の保護者のようなものだ。まぁ保護者と言えば社長も同じようなものだけれど…。
実の家族が留守にしている間、よくこの人たちに預けられたものだ。
だから実の家族よりも、姐さんや社長たちといる方が安心する。
「え~…と、それで姐さんは何か用が…?」
姐さんが片手で抱えている小包。きっと要はあれだろう。
「嗚呼そうじゃ。ほれ中也、お主の支持者からだぞ。」
矢ッ張り、と内心で思いつつ礼を言って小包を受け取った。
支持者からの贈答品は絶えない。
だからこそその分、恩返しをしなければいけないのだが…。
「何かしら。これ。」
稀に、敵対者なるものが、嫌がらせとして変なものを送ってくることもある。
「う~ん、敵対者の仕業、かなぁ…。」
社長が苦々しく呟く。
「そうみたいですね…、後で捨てます。」
最近は結構見るようになったなァ…敵対者。
正直図星を突かれたり、人に向ける言葉ではない言葉をかけられたりと、相当メンタルにクるが、まァそれもこれも、人気になった証拠だと思えばギリギリ耐えられる。
……耐えられない人もいるが。
「ほぉ…?私の可愛い可愛い中也にちょっかいをかける童は何処の何奴かのう…?」
何時もの美しい笑顔が、今は怖さを倍増させている。
姐さんは微笑みながら、懐から短刀を……、短刀!?!?!?
「ああああ姐さん⁉︎なンて物騒なものを持ってるンですか⁉︎」
「なに問題はないぞ、これはあくまで護身用だからのう…。」
弁明されたが、このままでは護身用ではなくて殺人用に変わってしまいそうな気が…。
「紅葉くんストップストップ‼︎うちは武装組織じゃないよ⁉︎」
「…鴎外殿は許せるのかえ?中也への侮辱を。」
止めに入った社長をキッと睨みつける姐さん。この事務所の中で、社長にあンな態度を取れる人間はそういない。
「いや、確かに許せないと思うよ、私の大事な子だもの。でもねぇ、中也くんが怒ってない以上、私たちが口出すすることでもないよ。」
「…それもそうじゃな。ムキになって申し訳ない…。」
「いえいえ⁉︎大丈夫です姐さん‼︎…それに俺、姐さんたちが怒ってくれたの、嬉しかったですし。」
実際言葉にすると照れ臭くて、なかなか目が合わせられない。3人はどんな表情しているのだろうか…。
「愛いのう中也‼︎‼︎‼︎」
「チュウヤ、可愛いわ!」
「中也くんは私たちの家族同然だもの。そりゃあ怒るよ。」
うっ、姐さん力が強い…‼︎俺の死因が抱擁とか洒落になンねェぞ…‼︎
姐さんに抱擁され、足が地に付かず空を切って、ワタワタしていると、社長が見兼ねて「そう言えば」と声を上げた。
「先程紅葉くんが言っていた護身用、中也くんも持っていた方が良いと思わなかい?」
「…確かにのう、中也は体術もできるが、刃物を持って襲われては流石に対応できないだろうしのう…。」
考え込んでいるのか、姐さんの力が弱くなり解放される。
それにしても護身用、かァ…。
「それに、ストーカー対策にもなるしねぇ。」
社長が不意打ちでかけてきたその言葉に、びくりと反応する。
「ストーカー…。」
更に姐さんが繰り返すように呟いた言葉にもぎくりと反応してしまう。
「中也お主…、もしかしてまたストーカー被害に」
姐さんが何か言いかけた時、それを遮るようにドアの外から声がした。
「……は?」
それはとても、聞き馴染みのある声だった。
*編集後記*
どうも、どうにか書き上げました第二話‼︎展開に悩みすぎたんですけれど、これで採用ってことにしておきます。そしてどうにも、姐さんも口調が難しい…‼︎なんていうンだろう…難しい…。なので雰囲気で描いてます姐さんの台詞は。おかしかったら申し訳ないです。あとあと森さんの呼び方社長じゃなくて首領にした~い!‼︎もしかしたら次からさらっと変わってるかもです汗 毎回首領って打って、読み返す段階で気づいて全部社長に直してるんですよ泣 あと首領がいい、普通に。
社長だと彼の人しか浮かばないぞ…。
さて次回、「中也、2度目の再会⁉︎3度目はなくってよ‼︎」の回です‼︎是非お楽しみに~‼︎‼︎
(中身が結構シリアスだから題名はふざけようと言った魂胆)
コメント
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続き待ってました✨ 今回も最高‼️ ありがとうございます❤︎