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皆さんどうも、からです。雑談の方も見てくれてる方なら分かると思うんですが私最近TRPGなるものにどハマりしまして、その三次創作をこっちに上げたいと思います。多分これ書いてる時は中の人のリアルSAN値が一桁台なのでテンションが低いですがお気になさらず。




TRPGが何かを知らない人のために説明するんですが、TRPGは一度ネタバレを踏んでしまうと自分がプレイするのも他の配信者の方が実況してるのを見るのも難しくなってしまうゲームなので、読む方はそれを踏まえてお読み下さい。



今回はロボしにグドモの三次創作です。あの物語のその後を想定して書いています。










ワンクッション


・このお話は「ロボロ×しにがみでGoodMorningAll」のネタバレを含みます


・自己解釈あり


・本家様の動画や他の方のアカウントのコメント欄で名前を出すのはNGです

















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つまらない。何もかも。





世界はただそこにあるだけでその廃れた姿を変えることはなく、悠久の時間は私の事を嘲笑うかのように隣を走り抜けていく。木の葉が擦れる音も、鳥が囀り他の動物たちがそれに共鳴するように鳴く声も、大地が揺らぎその猛威を振るう音ですらも、それを意識した瞬間にはもう私の周りから消え去っていた。



もう充分だ、消えてしまおう。何度もそう思った。世界中を周り、ここでなら消えても悔いはないと思える場所を探した。けれど、どれだけ探しても見つからない。いや見つからないのではなく、そう思いたくない。 もしかしたらこの場所よりも少しだけ高く、眺めの良い場所があるかもしれない。もしかしたらここよりも少しだけ多くの音が聞こえる場所があるかもしれない。どこへ行っても、結局最後に理由をつけて消えるのをやめてしまう。何故なのだろう。自分の中の何が消える事を止めているのだろう。



そんな私にも日常はある。変化しない事を嫌う私が、気がついたら毎日している事。

「…今日も暑いなぁ。…おはよう」

おはよう。朝の挨拶、それ以上でも以下でもない言葉。気がついた時には既に日課になっていた。誰に向けるわけでもない、ましてや向ける相手すらいないこの状況で、私は何を思って毎日この言葉を口にしているのだろう。




そんな事を思いながら、今日も何もないこの場所を歩く。ゴーツウッド。ここは以前まで少しの植物と直径3メートルもない小さな湖らしきものがあった。今となってはそれすらも枯れて朽ち果て、何も残っていない。しかし、唯一のお気に入りの場所。ここにいると自然と心が安らぎ何も考えずにいられる。



いつものように適当な場所に腰を下ろし、ぼーっと空を見上げる。頭上でさんざめく太陽はじりじりと、地上や自分の皮膚を照らしていく。しばらくの時間が経ってから、ふと意識があるものに引っ張られる。音が聞こえた。いや音ではない、何かの声だ。まるでか細く鳴く山羊のようで今にも消えてしまいそうな声。不信感を覚える反面、変化のない日常の中で聞こえた声に好奇心を抱くのもまた事実。



辺りを見渡し声の出処を探すと、そこは枯れてしまった湖の近くだった。声は次第にはっきり聞こえるようになる。漸く見つけた声の主は、手のひらにすっぽりと収まってしまうほど小さな木だった。枯れ木、と言えば良いのだろうか、まるで元からそういう生き物がいると言わんばかりにそこに存在している。すっと手のひらを差し出すと、一瞬後ずさって逡巡した後にそこに飛び乗ってきた。


「かわいい…!君、どこから来たの?一人?」


質問すると、意味自体は理解しているのか少し飛び跳ねたり回ったりするが、言語を話すことは出来ないらしい。


「まだ私以外に生きて動くものがいたんだ…あ、そうだ、名前どうしよっか?」





そう呟いた時、視界にノイズがかかる。色が霞んで世界がモノクロになったと錯覚するほど。目の前には、化け物としか形容できない口の生えた大木と、それの頭に乗る二人の人物。そのうちの片方は、私だった。動くことも、話すこともできない中で、私ではない誰かの優しい声が聞こえる。「大ちゃん」と。



瞬きをした瞬間、景色は先程と同じ小さな枯れ木を乗せた自分の手のひらに戻っていた。


「今の何だったんだろう?…大ちゃん、ふふっ、君の名前、大ちゃんにしよっか!」


やはり私の言葉を理解しているのか嬉しそうに飛び跳ねるが、やがて何かを思い出したかのように慌てて手のひらから飛び降りる。


「わ!大ちゃんどうしたの?」


大ちゃんはまるで私をどこかに導くかのように迷いなく進んでいく。





特にそれを止める理由も見つからず素直に後を着いていくと、暫くして開けた場所に出た。


「ここって…」


前を歩く大ちゃんの動きが止まる。今、目前にあるのは鉄のような硬い金属で作られた扉。幾度となく中を覗こうとして開けようと試みたが、びくともしなかった。


「大ちゃん、ここに何かあるの?」


そっと扉に手を伸ばすと冷たい感触が指先に伝わる。その瞬間ぎぃ、と重たい音を立てながら扉が開いた。


「すごい…今までこんなこと無かったのに…」





扉の中は洞窟のようになっていて薄暗く、数メートル先ですら靄がかかったようにぼやけていた。足元の感覚を頼りに数分歩き続けると行き止まりに着く。そこは洞窟内では比較的広い空間で耳を澄ましてみると何かの音が聞こえた。



次第に暗闇に慣れてきた目で辺りを見回すとすぐ足元には水溜りがあった。音の正体は揺れ動く水面。もはや水溜りと呼んでいいのかさえ分からないほど小さかったが、そこからは見る人の目を惹きつけるような得体の知れないエネルギーが発せられていた。しかしその水の色は薄気味悪く、乳白色の色をしていた。


「これって水溜まり、なのかな?変な色…」





好奇心は猫も殺す、という諺があると昔見た本に書いてあったような気がする。そんな言葉よく思いつくものだと当時は半ば呆れた気持ちで流したが、あながち間違っていなかったのかもしれない。伸ばしてしまった指先に生暖かい感触が伝わった時、脳に記憶が流れ込んでくる。



先ほど大ちゃんを見つけた時に見た景色と同じ光景。正確には全く同じと言うわけではなく同じ人物が写っている。優しい眼差しをこちらに向け楽しそうに話す姿が、必死な顔で私を助けようと叫ぶ姿が、何かを守ろうとして人ならざるものと対峙する姿が、そして悲しそうにこちらを見つめゆっくりとその命が潰えていく姿が、私の意識の全てを覆っていく。自分の記憶に無い光景。そう思っているはずなのに頬を伝う涙は止まることを知らない。





「げんき…」





たった三文字。なんの意識もせずに己の口から零れ落ちた、たった三文字の言葉。それがなぜだか無性に寂しくて愛おしくて、暖かい。正体のわからなかった謎の景色が、今までずっと追い求めていた自分の記憶の中に一筋の光となって広がっていく。



脳裏に蘇るのは鮮烈すぎる記憶。自分が上位神、豊穣の黒山羊シュブ=ニグラスであること、自分の気まぐれのせいで一人の人間の、元気の命を弄んでしまったこと、それでも彼は私と一緒にいる未来を望んでくれたこと、二人で世界中を歩き様々な物事を共有して笑いあったこと、最期まで私のことを想いながら潰えていった命があったこと。そして、たとえ元気と共に過ごした時間が私がこれから過ごしていく時間の内のほんの一部だとしても、元気がいる世界は私にとってかけがえの無いものであったこと。



全てを思い出してしまった今、もはや私は壊れた機械のように泣き続けることしかできなかった。神なんて肩書きでどうにかできるものでは無いほどに、私はどうしようもなく自分勝手だ。苦しみから逃げるために大切な記憶にまで蓋をしてしまった。どのくらいの時間が経ったのだろうか。顔を上げると大ちゃんが心配そうな様子でこちらを見つめていた。


「そっか、君も本当は存在するはずじゃ無いのに私の力で生まれてきちゃったんだよね、ごめんね…」


それを聞いた瞬間、大ちゃんは自身から生えている枝のようなものを伸ばし私の手を引く。向かう先は洞窟の外。




入る時に潜ってきた扉を抜けると辺りはすっかり暗くなっていた。それだけの時間、あの場で泣いていたのだろう。大ちゃんに促されるままに空を見上げると、そこには数々の星たちがまるで自分はここにいると主張するかのように煌めいていた。それはいつか元気と一緒に見たこともあったであろう美しい星空。彼を偲ぶかのように、はたまた私を慰めるかのように、さんざめく星たちは私をただ見守っていた。



いくら考えても、頭の中に巣喰う負の感情はぐるぐると私を苦しめる。めぇ…とか細く鳴く大ちゃんの声が耳に入る。


「大ちゃん、私どうしたらいいの…?もうわかんないよ……」


呟いた瞬間、ふと背中に暖かい感触を感じる。




「ひーちゃんが俺を大事に思ってくれてるように俺もひーちゃんが大事だから、ひーちゃんには笑って欲しいな」と、そう言って笑いながら私の手を握った時と同じ温もり。どれだけ鈍感な私でも気づく。元気が背中を押してくれている。生きて欲しい、と。自分がいなくても強くあって欲しい、と。



「…もう、相変わらず元気は無茶なこと言ってくるなぁ…わかったよ、私、ちゃんと生きる。元気が私にくれたもの全部、大切なもの全部、未来に繋ぐからッ…」



止まりかけていた涙が再び堰を切ったように溢れ出す。それでも、繋いでもらったものを守り続けるために前を向かなければいけない。たとえそこに存在するのが人間でも神でも、世界はそうやって今日まで繰り返されてきた。何千年も何万年も。



「…だから、今度会った時に逆に元気の方が私のこと忘れてるなんてそんなことしないでよねッ…!もし忘れそうだって言うんだったら、私が毎日、嫌になるレベルで話しかけてあげるから!」



大ちゃんだって永遠の命を持っているわけではない。大ちゃんがその生を終えた時、私はまたこの星に一人になるのだろう。だが今度は「独り」ではない。姿が見えなくても声が聞こえなくても、私はいくつもの大切なものに守られながら生きていく。



遥か彼方、遠くの地平線から朝日が上りその光が地上を照らしてゆく。消えることのない後悔もこれから先自分が背負っていかなければならない悲しみも今日を生きるための希望も、その全てを包み込んでくれるような眩しく暖かな光。




「もう朝かぁ……こんなさっぱりした気持ちでこれ言うのも久しぶりな気がするなぁ」




今後どんなに辛いことがあったとしても、恐らく私は立ち直れる。それは、あなたが遺してくれた暖かなものを胸に抱いて今日を精一杯に生きることができるから。今日が、最高の日になればいい。そう思えるから。



だからその感謝を伝えるためのせめてもの餞として。



何万年の時を超えて今、あなたに贈る言葉。それはきっと、いくつもの悲しみと確かな愛を含んだ、始まりの言葉。



















「元気!おはよう!」


















クトゥルフ神話TRPG〜GoodMorningAll〜

KP:むつー    PL:しにがみ、ロボロ

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