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ひゃーもう何もかも最高すぎです…!! ほんとにありがとうございました…!
すこーし、少しだけなんだけど、ちょっと距離が近いとは思う。慣れてはいるがかなり近い。
『ファンサービス』その言葉は聞いたことはあるし、俺だって勿論する。相手に嫌な顔をされないかどうかは置いといてだ。
「あ、ありがとうございます………」
彼があわあわと耳を少し赤くしながら握手を交わしているところを初めて見た、そんな日のこと。
先に帰ってきていたフリをして、「おかえり」と鍵の音と同時に告げる。
「あれ、来てたの」
「ん。」
「…なんで?忙しいって言ってなかったっけ。」
「彼氏なんだし別にいいでしょ。」
「………なんか機嫌悪い?」
いつもよりも早い返事。ぶっきら棒な言葉。無意識な少しずつが、相手の勘を働かせていた。
「べつに…」
「それ駄目なやつじゃん。」
くつくつと小さく笑って、「ゲーム。」と彼はゲームの用意をし始めた。
「あの映画が面白かった」など、最近のことを細かく、馬鹿らしい話でも些細なことを今日は沢山話してくれる。
いつもならそんなに喋らないくせに沢山の話をしてくれた。気を遣われたのか、積もり積もった話を聞かされたのかは定かではないが、俺は少し気が緩んでしまった。
それと同時に、口も緩くなった。
「…キヨ君」
「ん?」
「………握手…お願いします…。」
「……え?…え??」
状況が把握しきれていない慌てふためいてるキヨ君を見て、こういうのを知っているのは自分だけという優越感に浸りながらも、煮え切らないもやもやが胸を渦巻いていく。
「俺、キヨ君がファンサービスしてるの見たよ。」
以前見たのよりもファンへの対応が上手くなっていて、それが余計に周りの雰囲気を柔らかくしていた。その上、俺にはなかなか見せない表情を彼女たちには見せていた。
「ファンサービスしてよ。」
緊張でからからになった喉で、今の自分の心の内を詰め込んだ一言を俺は目の前の人に伝える。
「……レトさん、別に俺のファンでは…」
「実況のお前のファンじゃない。……キヨ君、のファン………癪だけど。」
「だから…いいでしょ?」
微かに縮こまって、沈黙が長引く。外のトラックが走る音が耳に張り付く。
「………一応キヨファンならまぁ…」
「まじ…?」
「レトさんが言ったんでしょ。」
驚きで行き場を失ってしまった両手をするりと握り、その上急に抱き寄せられてしまった。
「…ぅえ?」
恋人になってから手を握るのは初めてで、二人の手は震えていた。
これが特権かぁとしみじみ感じている暇もなく、目の前に現れたのは真っ黒な服の素材と彼の匂い。
「キヨく」
「レトさん、黙ってて」
質問を言い終わる前に彼は腕を引いてぎゅっと俺を抱いていた。
柔軟剤の匂いと、いつものシャンプーの匂い。隣でいるときとはまた違う感じ方。今まで付き合ってきた子は俺より低い身長で、目の前が真っ暗になることなんてなかった。
けれど今では、地味に此奴の表情が垣間見えて俺の方が低い方。
此奴と手を握るのも、抱き締められるのも初めて。驚きか、もしくは羞恥心が突破しているのかで働かない脳がショート寸前である。
「うぅ~……」
そんな俺を置いて、ぐりぐりと俺の肩に頭を押しつけながら嬉しそうな声がいつもより近い距離で聞こえる。
「…レトさん、見てたの?」
「………」
「…無言は肯定と取るからね」
もごりと口の中では発した言葉が上手く声にならなかった。
「……嫉妬、してくれたの?」
その発言にドキリとする。
いや、ただ、俺は
弁解しようとした瞬間、さらりと髪の毛が耳にかけられてしまい、びくりと身体を震わせる。絶対今耳が真っ赤だ。身体が死ぬほど熱いからそう思う。
「もう離れる」
「まだ、もうちょっとだけ…お願い。」
此奴は少し力を強めた。
「…俺、嫉妬してくれたのすっごい嬉しい。本当に……もっと嫉妬してくれてもいいよ。まぁ…そうさせないように努力はするけど。」
「……けどね、俺にとってはレトさんが」
その言葉を聞くと、嫉妬をしていた自分が馬鹿馬鹿しく思えてきて、彼に見えないように頬を緩ませる。
「またやきもち妬いても許してな」
俺はきゅっと彼の服を握った。
fin.
ーーー
れるさん、リクエスト有り難うございました!
リクエスト内容に沿えてなかったら本当にすいません!