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送迎がつくようになって、一週間。
表向きはいつも通り。
笑って、歌って、取材もこなす。
でも
一人になると、静かすぎて落ち着かない。
玄関の鍵を二回確認する。
カーテンの隙間を見る。
スマホの通知に過敏に反応する。
――大丈夫、もう来ない。
頭では分かってる。
でも身体が覚えてる。
その夜。
涼ちゃんが先に帰っていて、
僕は仕事で少し遅くなった。
部屋に入った瞬間、涼ちゃんがぱっと立ち上がる。
「おかえり」
その声だけで、胸がじわっと熱くなる。
「……ただいま」
靴を脱ぐ前に、抱きついてしまった。
自分でもびっくりする。
涼ちゃんの腕が優しく回る。
「今日は長かったね」
子どもみたいだ。
わかってるのに、離れたくない。
そこへ若井も帰ってくる。
状況を見て、一瞬で理解した顔。
何も言わず、後ろから抱き寄せる。
「今日は甘えたい日?」
からかいじゃない、やわらかい声。
僕は小さく頷く。
プライドとか、ツンデレとか、
今日はどうでもいい。
ソファに三人で座る。
僕は真ん中。
無意識に、二人の服を掴んでいる。
それに若井が気づく。
「そんなに怖い?」
「……ちょっとだけ」
本音が出る。
涼ちゃんが僕の髪を撫でる。
「怖い思いしたんだもん。仕方ないよ」
否定しない。
責めない。
それだけで、少し救われる。
若井が僕の額にキスを落とす。
「俺たちがいる」
「うん」
涼ちゃんも頬に触れる。
「どこにも行かない」
胸が締めつけられる。
――失うのが怖い。
あの出来事のあとから、
その感情が強くなった。
「僕、依存してるかも」
ぽつりと呟く。
若井がすぐに言う。
「いいよ」
「え」
「依存されるの嫌じゃない」
涼ちゃんも笑う。
「僕も。三人で依存し合えばバランス取れるもんね」
その発想、ずるい。
僕は二人を見上げる。
「重くない?」
若井は首を振る。
「むしろ嬉しい」
涼ちゃんも笑顔で頷く。
「必要とされてる感じがしていいじゃん」
涙がにじむ。
強いフロントマンでいようとした自分が、
少しずつほどけていく。
その夜。
僕は真ん中で眠る。
右から若井が手を握る。
左から涼ちゃんが腰に腕を回す。
動けないくらい、ぴったり。
「元貴」
若井が囁く。
「ちゃんと守るから、安心していいよ」
涼ちゃんも続ける。
「僕たちはずっと元貴の隣に居るからね」
呼吸が重なる。
安心の重さに包まれて、
やっと深く眠れた。
依存かもしれない。
でも
三人で選び合っている限り、
それはきっと、愛だ。