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若井×涼ちゃん+元貴
大型音楽フェス。
控室の前はアイドルグループで溢れていた。
その中心にいるのは――若井。
「若井さんってギターほんとにかっこいいですよね!」
「連絡先教えてほしいです!」
囲まれてる。
普通に笑ってる。
距離、近い。
僕は少し離れた壁にもたれる。
――慣れてるはずなのに。
若井は顔もいいし、腕もある。
モテるのなんて今さら。
なのに、胸がざわつく。
涼ちゃんが隣に立つ。
「若井、人気者だね」
笑ってる。
でも指先が少しぎゅっとなっている。
「涼ちゃん、平気?」
「うん!元貴こそ平気?今日寝不足だよね?」
即答。でも目が泳ぐ。話を逸らす。
――平気じゃない。
僕はわかる。
だって僕も平気じゃない。
アイドルの一人が若井の腕に触れる。
近い。
近いって。
「写真一緒に撮ってもらえますか?」
「いいよ」
自然な笑顔。
それを見た瞬間、胸の奥がちくっとする。
――あんな顔、僕たち以外にも向けるんだ。
子どもみたいな考え。
でも止まらない。
涼ちゃんが小さく呟く。
「……僕たち、余裕なさすぎだね」
「…うん、そうみたい。」
少し拗ねて、気分転換に二人で飲み物を買いに行く。
逃げみたいに。
その背中を、若井は見ていた。
楽屋に戻ると、若井が先にいる。
「どこ行ってた?」
「別に?」
「ちょっと散歩行ってただけだよ」
ツン、とした空気。
若井は少し困った顔をする。
「なんか怒ってる?」
「怒ってない」
即答。
声が固くなる。
涼ちゃんはソファの端に座る。
「……僕は少しだけ、寂しかったかも」
正直。
その言葉に、僕の心もほどける。
「…僕も」
若井が近づく。
「何が?」
「若井がモテすぎて」
「は?」
若井は一瞬ぽかんとする。
「仕事だよ」
「わかってる、」
わかってるけど。
「でもさ、あんなに囲まれてたら そりゃあ…
取られそうって思っちゃうじゃん、っ」
口に出してしまった。
涼ちゃんも小さく頷く。
「若井は優しいからさ、断れないもんね」
その“優しい”は危険だ。
若井はしばらく黙る。
そして、ため息まじりに笑う。
「俺が好きなの誰だと思ってる?」
沈黙。
わかってる。
でも聞きたい。
若井はまず僕の顎に触れる。
「拗ねてる顔、かわいい」
「ッな、かわいくない」
「かわいい」
次に涼ちゃんの頭を撫でる。
「涼ちゃんは心配しすぎ。
嫉妬してくれてんのは可愛いけどさ」
涼ちゃんは少し赤くなる。
「っ、だって……」
若井は二人の手を取る。
「俺がモテても、帰ってくる場所はここ」
胸がじんわり温かくなる。
「外でどれだけ褒められても、俺が欲しいのは二人」
ずるい言い方。
涼ちゃんが笑う。
「ふふ、若井ったら溺愛だね」
「まぁね。自覚はある」
僕は小さく言う。
「……ちゃんと好きって言って」
一瞬の沈黙。
若井は真顔で言う。
「好き。好きだよ元貴」
涼ちゃんにも向ける。
「涼ちゃんも好き。二人とも大好きだよ」
顔が熱い。
涼ちゃんが照れながら言う。
「僕も、二人が好き」
僕も続く。
「……僕も、好き」
三人で笑う。
さっきまでのざわざわが、ゆっくり溶ける。
若井がモテるのは変わらない。
でも
選んでるのは、三人。
それだけで十分だった。