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第6話:狼の自責
若井side
涼架と綾華が店を去った後、俺はバックヤードほドアに背中を預け、大きく息を吐いた。
熱気で満ちた夏の日よりも、今の自分の内側の方がずっと熱く、そして苦しい。
「…くそ、何やってんだ、俺は」
俺は、自分自身に苛立っていた。
突然の涼架の誘いに、どう反応していいか分からなかったのだ。
彼女が、あんなにも勇気を出して、俺のバイト先まで来てくれたというのに。
(なんで、あんな言い方しかできなかったんだ)
頭の中で、涼架の震える声と、俺の吐いた冷たい「なんで?」という言葉が、まるで刃物のように突き刺さる。
いつもクールで強気な「狼」を演じている自分にとって、素直な気持ちを口にすることなど到底できなかった。
「忙しい」?そんなの嘘だ。俺の心臓は、彼女が「夏祭り行きませんか」と言った瞬間から、今もずっと、激しく打ち鳴らされている。
あの時、すぐにでも「行く」と答えたかったのに、反射的に出てきたのは、自分を守るための、最も愚かな拒絶の言葉だった。
「…あんな、わざわざ会いに来てくれたのに。俺って本当に、バカだな」
彼女が屋上から俺を見ていたことを知っている。俺の音を、真剣に聞いてくれていたことも。
そんな彼女が、俺という不器用な存在に、勇気を出して一歩踏み込んできてくれたというのに、俺はそれを無残に踏みにじってしまった。
俺は、ドアから離れ、手を顔に当てた。手のひらが、熱を帯びている。
「彼女は、今頃どんな顔してるんだろう。きっと、傷ついたよな」
涼架の「白熊」のような涼しげな瞳が、俺の言葉で曇ってしまったかと思うと、胸が締め付けられる。
俺は、そっとドアを開け、店内を見渡した。
もう彼女たちの姿はない。しかし、彼女たちが立っていた場所には、ほんのり甘い香りが残っているような気がした。
俺は、その残り香を胸いっぱいに吸い込んだ。
その香りが、俺の心に、小さな後悔を植え付けた。
俺は、自分の不器用さと言う名の「檻」の中で、深く、深く自責の念に苛まれていた。
いつだか、元貴に言われたことがある。「お前はただの臆病な狼」だって。その通り、俺はただの臆病な狼でしかなかったと実感した。
次回予告
[助け舟]
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コメント
3件
頑張れ若井!!今度は若井から誘うんだ!
んだー!ひろぱ!!頑張って! 今すぐにでも涼ちゃんの教室いってこい!
ふぇぇぇ(´;ω;`)ひろぱぁぁ!がんばれぇ!