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第一章〜転校〜
中一の夏の頃。せみの鳴き声と共に日々が始まる。
「今日は転校生を紹介する。入っていいぞー」先生の声と共に、一人の女子が入ってきた。しかし、様子がおかしかった。なんか棒を持ってカチコチしている。クラス中がざわめく中、先生が喋った。
「静かに。転校生の笹峰 唯華さんだ。仲良くするように。」
それに続けて
「私は、目がほぼ見えません。なので、白杖という棒を使って、生活しています。ご迷惑おかけしますがよろしくおねがいします。」
と元気よく笹峰が喋った。
すると、一人のクラスの中心であり、いじめっ子でもある石岡が「障害かよ」と一言発した。
その言葉にクラスは沈黙となり、それ以降みんなが何か言うことは無かった。
最初のうちは、笹峰は女子にも人気があり、よく話しかけられていた。目が見えないということは、顔が見れないので、みんなこの声が、私だよ。と一生懸命伝えていた。そんな姿に
石岡を率いるいじめっ子たちはむしゃくしゃしていた。俺は、特に何も感じることなく、いつも通りに暮らそうとしていた。
しかし、そんな平和も保たれるわけはなく。
「おい。原西。お前ちょっとこい」と、石岡が引っ張ってきた。抵抗すると何されるか分からないので、大人しくついて行った。
トイレまで連れてかれると、「お前、あの棒取って投げろ」と石岡が言った。もちろん俺は何度も抵抗した。「やらないならお前が痛い目見るぞ」と脅され、それだけは避けたかったので渋々と、笹峰の方に向かった。
やりたくなかったが、息を飲んで、かけ走った。
白杖を取った瞬間笹峰は「あ、やめて、」っと一言言ったが、俺は怖くて直ぐに白杖を持ったまま逃げた。
俺がやった事に後々凄い後悔をした。
笹峰は友達に支えられながら何とか教室に辿り着いてきた。石岡達は笑っていた。
俺は顔面蒼白になり、この後のことを考えると、震えて身が止まらなかった。
俺らは白杖のありがたさや、視覚障害者の大変さをしらなかった。
その後も日に日に石岡たちのいじめは悪化して行き、俺もその一員になってしまった。
ある日をきっかけに、俺はクラスから標的されることになった。
5回目の白杖を取った時、先生に見られた。
逃げようとしたが、逃げきれなかった。
先生につかまり、こっぴどく怒られ、親を呼ばれ、笹峰の親も呼ばれた。
笹峰、俺、双方の母、先生といった中で話をした。俺は笹峰の母から鬼のようにキレられ、殴られそうになったが、先生がそれを停めた。
俺はこの先のことが何も分からず、一言も喋れないでいた。ひたすらに謝る母、笹峰は何が起きているか分からない。耳でしか状況を読み取れない。
笹峰は、その後転校をした。それから俺はクラスの的になった。
今まで一緒にいじめてた石岡は今度は俺をいじめるようになり、教科書を隠されたり、噴水に落とされたり、殴られたりした。上履きが水浸しになってることもあった。しかし、先生はそれを見て見ぬふりした。親にも相談したが、当然の報いでしょ。と言い離されてしまった。
ついに俺は友達が一人もいなくなった。
俺は、周りと話すのが怖く、前を向くことすら嫌になった。常に下を向いていた。話しかけられることもなければ、話しかけることもない。
完全に孤立してしまったのだ。笹峰は転校をし、何をしているのか分からない。
謝ろうにも、連絡手段もなければ、どの学校に転校したのかすら分からない。
手も足も出ないこの状況がずっと続いていた。
そして明日の5、6限目は視覚障害の体験だ。