君の笑顔を縁取る遺影の前で手を合わせる。朝は必ずこうして仏壇に向かい合うのが日課だ。毎日変化のない写真を撫でる。もし君が居てくれればこんな無機質な冷たさではなく、この両手で温かさを包めたと言うのに。
あの忌まわしい事件が起こったのは今から約3年前だった。夜中に突然君からメッセージが来たかと思えば、解読が出来ないような文章だった。そんな悪戯なんか柄でもない君の異変に気付き、慌てて家に向かう。
鍵を使う前に念の為玄関のドアノブを回すと不用心にも施錠されていなかった。いくらここが日本とはいえ、嫌な考えの一つや二つくらいすぐに浮かぶ。いつもの様に笑顔を見せてくれる君の姿を願ってリビングに向かう。けれどそんな希望はすぐに打ち消された。散々物が荒らされた部屋の中に君は居なかったから。
その後の記憶は曖昧で、思い出そうとすると酷く頭が痛む。嫌な記憶を無いことにしようとする人間の制御本能だろう。これ以上何か辛いことを思い出してしまうよりかはいい。ただ、俺の記憶の中の君の色は変わらない。寝ても起きても、泣いたって怒ったって。上書きなんて出来なかった。
自分の出来る限りを尽くして君を探した。勿論警察にも頼り、捜索届けだって出した。けどそんなの全部無駄だった。今までの人生を全て捧げたって見つけ出すつもりだったのに。なんで、君の身体は見つからない?
居なくなってからの3年間は泣いてばかりで過ごしていた。そして今日、人生に線を引く。この線を超えたらもう後には戻れないだろう。でも後悔はない。戻った先には過去の君しか居ないから。
事前に用意していたナイフを鞄に入れ、身軽な服装に着替える。仏壇の傍に置いておいた君のネックレスを付けると、首元に触れる鉄の冷たさが心地好い。君の心臓に1番近くで居られるから、と渡したネックレスだってもう付ける人は居ない。だから代わりに俺が付ける。君の心臓を探しに行く為に。
コメント
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こうゆうお話大好きなので続きがめっちゃ気になる〜!🫣楽しみにしときます!!😊