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君へ渡す言葉。

32 - ドーナツホール。

♥

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2024年10月05日

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曲パロでございます。


今回はハチ様のドーナツホールです。


太敦です。


舞台は荒廃気味の世界。(完全な荒廃では無い)


ドーナツホールって


十年くらい前の曲何ですが、


何と今年、新MVが公開されたんですよ。


一寸あまり詳しくは無いんですが、


GODIVA(チョコで有名な所)が商品として作ったみたいな?


概要欄を読む限りだと、


MVの原画をプリントしたチョコが出るらしい……?


一先ず、ハチさんが帰ってきてくれた事に感動してます。


砂の惑星以降ボカロには関わらないと思ってたから……


なので折角だし曲パロしたろ、と思って書きます。


適当だなぁ……()


取り敢えずスタート。



『廃品回収業を営んでおります


壊れていても構いません』


カサついた紙にサラリと書き込む。


やる気の無さが透けて見える字だ。


「こんなの、金になるんですか?」


「起きたのかい?敦くん」


「はい。珍しく早いですね、太宰さん」


「それで、これが張り紙ですか?」


「あぁ。そうだよ」


「文字、汚いですね……」


酷いなぁ、とペンの蓋を締めながら云う。


彼の真っ白な髪が朝日に照らされ輝いている。


左側だけやけに長い髪を耳に掛ける。


其の仕草がやけに艶めかしい。


「さて、開店の時間だよ」


「はい」


くだらない日常が好きだった。


■■■


「ドーナツかい?」


「はい」


質問に答える為一度ドーナツを口から離し、


応えた後再びドーナツを口に付けた。


「ドーナツって何で真ん中が空いてるんだろう」


「さぁ……?」


どうでもいいとでも云う様にドーナツを食べ始める。


「敦くんたら冷たいなぁ」


「そうですかね?」


「そぉだよ〜太宰さん寂しいよォ〜」


「そんな子供みたいな……」


目を薄め眉を顰めた。明らかに引いている。


大の大人がこんな事してたら誰でも引く。


「ねぇ〜チュウしよ〜最近してないでしょ〜?」


「はぁ!?何云ってんですか!」


「今店開いてるんですよ!見られたらどうするんです!」


「いいじゃない。見せ付けたら」


この人は!と顔を顰める。


「まぁ、どうしても嫌と云うなら良いよ」


「えっ、」


簡単に引き下がってくれた。


こんな事もあるのか。


然し、あまり気分の良いものではないな。


では、仕方ない。


ドーナツを白い皿に置き、


太宰に近付く。


「今日だけですからね」


そう云ってふわりと唇を付けるだけの接吻をした。


「へ……」


何時になく間抜けな顔に思わず笑ってしまった。


「太宰さんって、そんな顔出来るんですね」


「……人間だからね」


「そうでしたね」


「何か人間じゃないみたいに云うね」


「人間失格じゃないですか」


「一寸ぉ?」


あははっ!と優しい笑い声が部屋に響いた。


此の日常が続けばいいと思えば思う程、


後の非日常が心にくるものなのだろう。


■■■


「あつし、くん……」


目の前の愛し子は安らかな笑みで眠っている。


髪と同じくらい白い肌は、


氷でも触っているのかという程冷たい。


呼吸なんて等の昔に終わっていて。


人間である限り、何時しかこんな時が来る。


来るのに。


私達は、そんな事知らぬとでも云う様に平気で暮らす。


今考えれば、こんな時は何時来てもおかしくない。


なら、毎日を大切に生きればよかった。


守ればよかった。


後悔するのは、


何時も、全てが手遅れになった時だ。


バイバイ。もう永遠に会えないね。


■■■


あれから何年なのだろう。


私の心はあの時彼が食べていたドーナツの様。


真ん中には何も無い。


私はもう、彼がくれた体温すら忘れてしまった。


この胸に空いた穴が今、君を確かめるただ一つの証明だ。


上手く笑えないんだ。どうしようもないまま。


さて、こんな事をしていても飯を食えない。


軽トラを停めてある場所に行く。


随分と汚れている。今度洗おう。


車に乗り、発進させる。


過去に録音したアナウンスをスピーカーに流す。


『壊れていても構いません』


涙が出るんだどうしようもないまんま。

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