◇◇◇◇◇
シルヴィアはリオたちをじーっと眺めている。
あの少年だよね?
どうしよう。声かけていいかな?
シルヴィアがモジモジしている間に、リオたちは大聖堂を出て行こうと入り口の方に歩き出している。
あ!行っちゃう。ダメ!
シルヴィアは勇気を振り絞ってリオたちに近づいていった。
シルヴィア:「あ、あのー。ちょっとよろしいですか?」
リオ:「あ!はい。」
ん?誰だろう?
シルヴィア:「突然すみません。
私、シルヴィアって言います。
さっき、その、聞いてしまいまして。
女神様とお話しされてましたよね?」
リオ:「え?……。」
リオは突然の問いに言葉を詰まらせた。
リンドウ:「場所を変えましょう。」
リンドウが助け舟を出す。
シルヴィア:「あ!はい。でしたら、こちらの別室へ来ていただけますでしょうか?」
リンドウ:「いいわよ。」
話題が話題だけに、ここではまずい。
リオたちはシルヴィアの案内で別室に移動することにした。
◇◇◇◇◇
大聖堂内のシルヴィアの部屋にて。
シルヴィア:「こちらでも良かったでしょうか?」
リンドウ:「あなた、ここの人なのね。」
シルヴィア:「はい。少し前に13歳になりまして、その時の成人の儀にてこちらと関連する固有スキルを授かりまして、現在、こちらでお世話になっています。
元々も、12歳までここの孤児院にいましたのでお世話になっていたのですが。」
リンドウ:「ふーん、そうなの。
で、何が聞こえたのかしら?」
リンドウがシルヴィアに問いかけたと同時にナスヴィー様が割り込んできた。
プチュン!
女神:『あ!リオ!まだいるみたいね!』
リオ:『え?どうしたんですか?』
シルヴィアはまたもや女神様との会話が始まったので、眼をギョロッとさせてビックリしていた。
女神:『言い忘れたわ。ここにいるシルヴィアは最近聖女になった女の子よ。シルヴィアもワタシの声が聞こえるのをすっかりうっかり忘れてたわぁ。
というわけで、リオとの会話は筒抜けだったみたいね。』
リオ:『聖女ですか……。』
シルヴィアもコクンコクンと頷いている。
女神:『そう。ただ、教会はまだ公表していないみたいだから、ここだけの秘密ね。』
シルヴィアもコクンコクンと頷いている。
女神:『聖女はワタシの言葉の伝道師ね。
各国に一人ずつ存在するのよ。
基本、ワタシはこの世界に干渉はしないんだけど、たまにね。』
リオ:『はぁ。そうなんですね。公表してないということは、命の危険があったりするからですか?』
女神:『いや、それはないわね。聖女は特殊で固有スキルに絶対防御というものが加わるの。政治的に利用できないようになってるのよ。
なのでよっぽどのことがない限り寿命を全うするわね。
公表していない理由は知らないけど、たぶん近々公表するんじゃない?
そこはあまり気にしなくていいよ。』
リオ:『なるほど承知です。』
女神:『シルヴィア。
これも秘密だけど、よく聞きなさい。リオはちょっと経緯があって、ワタシ女神ナスヴィーの使徒なのよ。唯一ワタシと会話ができる存在ね。
それとリオの横にいるお姉さん剣士がリンドウ。リオの従者よ。そして、そこの仔狼がゼータね。リオの召喚獣よ。仲良くしなさい。』
シルヴィアはまたコクンコクン頷いている。
そして、リオを見る目が尊敬の眼差しに変わっている。
女神:『じゃあ、そういうことで。またね。』
プチュン!
わざわざ、それをいうだけのために?
リンドウ:「で、シルヴィア。全部聞いちゃったのね?」
シルヴィア:「あ!はい……。」
リンドウ:「まあ、女神様が信用しているみたいだし、秘密にしてくれるならいいけどね。」
シルヴィア:「はい。女神様に誓って絶対に言いません。」
リンドウ:「ふふふ。なら安心ね。」
リオ:「シルヴィアさんは聖女なんですよね。
聖女って何をするんですか?」
シルヴィア:「はい、女神様がおっしゃっていた通り、伝道師の役割があります。それ以外には、光魔法に適正がありますので、皆さんの治癒をしていくんだと思います。まだ、初級魔法のヒールとキュアしか覚えてませんけど。」
リオ:「へえ。そうなんですね。」
コンコン!
シルヴィア:「はい。」
ガウチョ:「シルヴィア。戻っていたのか。入っていいかね?」
シルヴィア:「ちょっと待ってください!」
シルヴィアは、この状況をどうしたものか?
リオたちに小声で聞いてみた。
シルヴィア:「外にいらっしゃるのは、大司教のガウチョ様です。入っていただいてもよろしいでしょうか?」
リンドウ:「あなたの部屋でしょ?好きにすれば。
私たちが困ることはないわ。」
コンコン!
ガウチョ:「シルヴィア。どうしたんじゃ?!」
シルヴィア:「はい!入っていただいて結構です。」
ガチャ!
ガウチョ:「ん?客人がいたのか?珍しいのう。
で、こちらはどなたじゃ?」
シルヴィア:「はい。そのー……。」
シルヴィアは何と説明したらいいのか……。
リオ:「突然お邪魔してすいません。
僕は冒険者のリオです。」
リンドウ:「同じくリンドウよ。」
リオ:「彼はゼータです。」
ガウチョ:「わしはガウチョじゃ。ここで大司教をやっておる。そなたたちはシルヴィアとはどのような関係じゃな?」
リオ:「関係ですか?
うーん。何と言ったらいいのか……。」
関係は言えないよね〜。
シルヴィア:「ガウチョ様。
先程、リオ様たちが女神様にお祈りをしているところを私が声をかけさせていただいて、こちらに来ていただきました。
勝手にすいません。」
ガウチョ:「それはいいのじゃが、初めて会った者をここまで連れてくるのはいかがなものかとな。
リオ様ということは、貴族のお方かのう?」
リオ:「あ!いえ、僕は平民です。」
ガウチョ:「うーん。ますますわからんのう。
経緯を教えてくれんかのう?
これでも、わしはここの責任者なんでな。」
ちなみに、ここ大聖堂はナスヴィー協会の総本山であり、ガウチョは聖ナスヴィー教会の総責任者である。性格は温厚だが偉いさんである。
リンドウ:「ガウチョさん。
私たちは、もう行くわ。」
ガウチョ:「そうか。追い払ったみたいで申し訳ないが、理由も聞かずにいてもらうわけにはいかないのでな。シルヴィアは大事な娘なのでな。」
リンドウ:「わかってるわ。
シルヴィア。それじゃね。
リオ、ゼータ、行きましょ。」
シルヴィア:「あーー、行っちゃうんですか?」
ガウチョ:「これ!シルヴィアよ。
引き留めるんじゃない。」
シルヴィア:「は、はい……。」
たしかに初めて会ったのに怪しいよね。
もう少し話したかったけど、仕方がない。
シルヴィアの視線を背に、リオたちは大聖堂を後にした。
ただ、帰り道にリオはポケットに入ったレインボーメダルを手で確認して、いろいろ妄想を始めている。
リンドウ:「リオ、ちゃんと前を見て歩きなさい。
それと変な顔してるわよ。」
ゼータ:「兄ちゃん!前!」
リオ:「わ!危なかった。」
ぶつかりかけたリオを見て、リンドウとゼータは笑っていた。
ウチに帰ったら、早速するんだろうね。
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