テラーノベル
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第四十八話 君へ贈る一枚
「写真は、言えない想いをそっと届けてくれる。」
十一月。
街路樹の葉は赤や黄色に色づき始めていた。
フォトコンテストの締め切りまで、あと三週間。
湊は毎日カメラを持って学校や街を歩いていた。
でも——
「違う……。」
シャッターは切る。
けれど、どの写真も心に響かなかった。
「いい写真」と「伝わる写真」は違う。
そのことを知ってしまったからこそ、
迷いが大きくなっていた。
*
放課後。
写真部の部室。
部員たちもそれぞれ作品づくりに悩んでいた。
「神崎先輩。」
陽菜がカメラを抱えながら聞く。
「先輩って、写真が撮れなくなることありますか?」
湊は少し笑った。
「あるよ。」
「えっ!?」
「今がまさにそう。」
二人は顔を見合わせて笑った。
「焦ると、余計に撮れなくなるんだよね。」
その言葉は、
自分自身にも言い聞かせているようだった。
*
その日の夜。
紬から一枚の写真が送られてきた。
雪が降り始めた留学先の街。
街灯の下で、
小さな男の子がお母さんとはしゃいでいる。
写真の横には、短いメッセージ。
《初雪だよ。》
《神崎くんにも見せたくて。》
湊は写真を何度も見返した。
寒そうなのに、なぜか温かく感じる一枚。
「やっぱり朝比奈の写真、好きだな。」
そう呟きながら返信を打つ。
《ありがとう。》
《こっちも、秋が深まってきたよ。》
*
翌日の休日。
湊は近くの大きな公園へ向かった。
赤く染まったもみじ。
落ち葉を踏む音。
ゆっくり流れる時間。
すると、
一人の小さな女の子が落ち葉を集めていた。
そこへ、おじいちゃんが近づく。
「何してるんだ?」
「一番きれいな葉っぱを探してるの!」
女の子は満面の笑みで答えた。
「お母さんにプレゼントするの。」
その言葉を聞いたおじいちゃんも笑う。
「じゃあ、一緒に探そう。」
二人は並んで落ち葉を拾い始めた。
赤。
黄色。
オレンジ。
色とりどりの葉っぱが、
小さな手いっぱいに集まっていく。
その光景を見た瞬間。
湊の心が動いた。
カシャッ。
シャッター音が、静かな公園に響く。
写真を確認する。
そこには笑顔だけじゃない。
“誰かを想う気持ち”が写っていた。
*
帰宅後。
その写真を紬へ送る。
《今日撮れた。》
数分後。
返信は写真ではなく、メッセージだった。
《この写真、泣きそうになった。》
《きっと、お母さんも喜ぶね。》
《神崎くん。》
《この一枚、コンテストに出してほしい。》
湊は画面を見つめたまま、小さく笑った。
「やっと見つけた。」
自分が、本当に撮りたかった一枚を。
📷 Photo.048『秋の贈りもの』
撮影日:11月6日
誰かを想って選ぶ一枚は、
世界に一つだけの贈りもの。
その優しさは、
写真の中でいつまでも色あせない。
𝕜𝕠𝕞𝕒𝕔𝕙𝕚
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紫倉 紫
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#物語
コメント
4件
はい!待っててください! ありがとうございます! 無理しない程度に頑張ります!ー
え~~もう第48話…!?😭✨ 湊くんが「いい写真」と「伝わる写真」の違いに悩んでるところ、すごく刺さったよ…。女の子とおじいちゃんが落ち葉を拾うシーン、めっちゃあったかい気持ちになったし、そこを撮れた湊くんの成長を感じて泣きそうになったよ…!紬ちゃんからの写真も、離れててもちゃんと繋がってる感じがしてエモすぎる…!✨ 次も楽しみにしてるね!🌸