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勝手に顔が緩んじゃう。
大学に行けばるなちゃん何かいいことあったの?なんてみんなに聞かれて。
大事なネックレスは、クリスマスの日から肌身はださずつけている。
貰った日のことを思い出したくて、首まわりの空いたお洋服ばかり着るようになった。
鏡で見るたびにニンマリしてしまう。
あぁ、本当によかったなぁ。 ケーキも喜んでくれたしそれに
目をつむれば蘇るクリスマスの思い出
「ひゃぁ〜〜〜〜!!」
こんなことほぼ毎日してる。
記憶を呼び覚ませて叫ぶの繰り返し。
るるがびっくりしてフーって怒るから、その度に謝っていた。
『るなっ!?どーしたの!?』
「ごめんね、えとちゃんなんでもないよ」
なぁんて、実はお茶会の真っ最中でした。
もちろんLINE電話繋げてだけどね。
『またぁクリスマスの日のこと思い出してたんでしょう』
「ちが、ちがうよ!?」
思い出してました…。
『で、お願いってなんなの?』
「あのね…
今度大阪にシヴァさんが遊びにくるんだけど…えとちゃんとうりりんも一緒にこない?」
side sv
「シヴァさぁーん、何やってんのそんな隅でぇ」
「反省してるんだって」
「反省…?」
どうしよう、後悔しかない。
なんであんなこと言っちゃったんだろう。
年明けて何日か過ぎ去った頃
配信が終わりシェアハウスの一室。ハゲずみんなでダラダラしていた。
連日編集作業をしているなおきりさんも今日は泊まり込みだそうで。
「なに、クリスマスふたりとも消えたと思ったらるな具合悪かったんだって?」
「…」
「シヴァさんるなさんいなくなってからすぐキョロキョロしてたものね」
「…」
「ちょ、きいてる!?」
るなさん具合悪いのわかってたのに…のに…
「なんだよ、具合悪いのにるな襲って嫌われたとか?」
うりの言葉がどストレートに心臓へ突き刺さる。あれは襲ったってことになっちゃうの?
いや、でも嫌がってなかったよな??大丈夫って言ってくれて…
あれ、俺もしかして脳内で補正してる?混乱してきた。
「まさかぁ、シヴァさんがそんなことするわけ…」
なおきりさんのフォローが入った。
「…シヴァさんちょっと」
「なんか言ってよ」
俺の沈黙を不審に思った二人が近づく。
「「まさかそのまさかなわけ!?」」
「そ、そんなことは…」
ねじはずれの綺麗な顔と声が俺の前で揃った。
ない、とも言い切れず言葉を詰まらせて下を向く。
前略、クリスマスで仲良くしてるゆあんくんとるなさんに嫉妬した俺は
あろうことか体調の悪いるなさんに詰め寄っちゃってしまいにはキスまでしたあげく次は我慢できないとかなんとか
言ってしまった。
「ごめん、聞かないで。後悔しかしてないんだよ」
「やらかしたんかい」
あーあ、と天を仰ぐうりとは対照的に、ふうんと興味があるんだかないんだかわからん返事をするなおきりさん。
そして今週は年明け初めての三連休。
…大阪へ出向かなきゃならんのだ。自分で言ったからな。
あのクリスマスの次の日、体調が良くなったるなさんは朝早くに大阪へ帰ってしまった。
しかも俺寝てて見送りできなかったんだよ…
なんで起こしてくれなかったのかとのあさんに聞けば 、”るなさんが疲れてるだろうから起こしたくないって言ったんですよ”と言われてしまった。
俺に会いづらくてそう言ったのかな、と勘ぐってしまう。
その後、電話はできなかったけどLINEは途切れることなかったし、メッセージもいつも通りだった。
「なに、なんかるなに言われたの?」
「いや、るなさんからはなんも…俺が一方的に気にしてるだけ」
「なぁんだよ、んならいーじゃんか!」
余計な心配したわ、とうりが自分のベッドに倒れ込んだ。
「クリスマス、プレゼンと渡せたの?喜んでくれた?」
「うん毎日つけてるって」
「よかったね、ならなんでそんな凹むの?」
「いや…」
なおきりさんの追求する目が痛い。そらすにもついてくるんだけど。
またつまらないことで悩んで、とため息つかれさすがにムッときた俺は言い返した。
「ちがうっ」
「じゃあなに」
「あ、会ったらなんかリミッター外れそうで」
「大いに外してくればいいだろ、彼氏と彼女なんだし」
「それは、その…」
多分なおきりさんは俺が何で引っ掛かってるか検討がついてるんだろう。
そう、あったら我慢できなくなりそうで怖いんだ。だから自分から猶予をつくって今度うちにきた時と自分で予防線を張った。
「シヴァさんさー、気にしすぎ。溜め込むと爆発してもっと凹むとかしないでよ?」
「う」
「だからふたりで恋愛しろって言ってるの。シヴァさん相変わらず大好きな彼女を愛でて片想いみたいだもん」
やれやれ、となおきりさんが肩をすくめた。
前にも言われたそれ。
全部当たってて返す言葉もねぇ。
「ちな大阪はもちろん泊まりでしょ?」
「ひ、日帰りじゃダメっすか」
「ヒヨるなよ」
さっきまで寝っ転がって話を聞いてたうりも会話に参加する。
「そんなさんさ、るながかわいそうよ。私なんかしたかなってなるじゃん」
「自衛するくらいならるなさんのこと考えなよ」
ズバズバ槍みたいに二人の言葉が刺さる。
わかっちゃいるけど、大阪いくの緊張するわ。
その時コンコン、と扉をノックする音がした。
返事をするまえにさっさと開いたが。
「しばおいるー?あ、いたいた」
「俺?なに」
「るなからお願いされたんだけどさ
大阪、わたしとうりも一緒にきてって言われたんだけど…ほんとにいーの?」
困り顔のえとさんに、俺たちは固まるしかなかった。
「なんでも二人きりが嫌とか、そんなんじゃなくて。緊張しちゃうからえとちゃんもきてって…おいきーてんのかしばお!!」
「どうどうえとさん、シヴァさんも色々あんのよ」
大阪行きの新幹線、なぜか三人席に仲良く並ぶ俺、うり、えとさん。
るなさんから後日連絡があり、”えとちゃんも誘ってみました〜”とのこと。
聞けばせっかくならダブルデートしてみたいって…本当なのかな。
「だいたい会いづらいのなら、そもそもこの日をキャンセルにするでしょ」
るなさんのことをよくわかってるえとさんに諭され、まぁそうだと納得する。
警戒されてるのかな…。
「シヴァさんほんとるな好きなんだね」
「…うん」
俺の答えにえとさんが驚いてうりと互いに目を合わせた。
「ちなさー、るなが出てる動画とか見るの?」
「あんま見ないようにしてる」
「なんでよ、見てやれよ」
呆れたうりがえとさんの話にのっかる。
あれとか、かわいかったよね。初めてのおつかいとかさ、とえとさんが付け加えた。
「あれなぁ…」
「あれな、の後なんなの」
「まっっじでかわいい。本当好きなんだよ…」
「うわぁ」
「なんで引くの!?なら聞くなよ!!」
「喧嘩すんなやふたりとも」
珍しくうりが割って入る。
仕方ないだろ好きなこがでてる動画なんざ平常心で見れるわけない。
るなさんは可愛いんだっての、だからこんなに擦らせてるんだよ…。
「でもその可愛いこがシヴァさんの彼女なんだよ?」
「知ってる、いつも 尊すぎて困る」
「シヴァさんて恋愛するとオタクみたいなんだな」
悪口じゃねぇよ言っとくけど、とうり。
否定はしねーわ、俺もどっかそんな感じしてたから。
しきりに俺がるなさんを”愛でる”と表現してたなおきりさんも、薄々感じていたんだろう。
「んで。クリスマス何があったの?」
「聞くの!?」
「るなだっていつも通りだったんだろ?なら聞いてハッピーな話だろが」
「ちなみにるななら幸せそうにしてるけど」
「なら聞いていい案件だな」
あ、ちょうど富士山通過した…
なんて富士山を堪能する余裕もなく問い詰める瞳が俺を許さない。
言 え よ
美男美女に詰められた。
「…ゆあんくんと仲良く話してるのが、その、気になりまして…」
「あのふたりフタゴみたいな距離じゃん」
「そんときは妙に気になったの!!…だから余裕なくって…」
くそ、嫌でも思いだす。
「キスして、我慢できなくなって…」
「それで!?」
「えとさん…」
えとさんのほうが食い気味に聞いてくるんだけど。ここで勘弁してよ、と苦し紛れにお願いしたら、すげー圧力で「全部吐け」って怒られた。
「いろいろ、その…「「あら〜」」
「なにそのご近所のおばちゃんみたいな反応!!!!」
いやなんでここまで話さなきゃいけないの!?俺だって言いたかねーわそんなの、普通言わねーよここまで!!!
「そっからは!?」
「なんもしてねぇ!!!これ以上あぶねーしさすがにシェアハウスでやろうとおもわねぇよ!だから猛省してんの!!!!」
「シヴァさん声デケェ」
どうどう、と胸の辺りをうりに叩かれた。
いかん興奮してつい声が大きくなってしまった。
辺りを見回せば俺ら以外あんまり人が乗ってない。ほっと胸を撫で下ろした。
「んで、何言ったの他に」
「お前は刑事かよ」
今度はうりがえとさんのしつこさに呆れた声を出した。
「もう我慢できないって、だから…次東京きたら、みたいな…」
「ひゃぁあ!!!そんなこと言ったの意外!!!」
「えとさん声がデケェ」
身を乗り出すえとさんにうりが両手で押さえつけている。
…えとさん一歩進んだ恋バナ好きなんだな。のあさんだってここまでは流石にきかねぇよ。
「待って、じゃあこの大阪ふたりでよかったじゃん。なんでうちら誘われてんの?」
「いやだってえとさんが言われたんでしょーよ…俺には一緒に遊びたいってきたけど」
「…ワンクおきたかったんじゃねーの」
俺とえとさんのデカい声に疲れたのか、スマホでゲームし始めたうりがぽそりと呟いていた。
「だよね、あった瞬間襲われたらやだもんね」
「そんなことしませんっっ」
そんなことして嫌われたら俺の人生終わるんだが。するわきゃないわ。
「ま、とにかくさ。るなの言うダブルデートってやつを素直に堪能しとけばいんじゃね?」
うりの言葉と重なって、まもなく大阪到着のアナウンスが流れた。
アレさっき富士山見てなかったっけ、とえとさんと話してると
アンタらだいぶ白熱してたのよ、と疲れ切ったうりが教えてくれた。
何度目かの大阪で慣れた改札をぬける。辺りを見回すとスマホを持ってそわそわしてる見知った顔ひとつ。
まっすぐ進むと俺に気づいたのか、ぱぁっと顔を明るくさせて走ってきてくれた。
「しばさーん」
にこにこと駆け寄る彼女が誠に可愛いらしい。
なんかじーんとくるものがある。今日も幸せいっぱい胸いっぱい。いつ死んでも悔いなし、である。
「元気だった?」
「めちゃ元気ですよーお電話あんまりできずすみません」
「お互い忙しかったから」
よかった、今回も元気そうだ。
しばしるなさんを堪能していると、あのう、と後ろから声が聞こえる。忘れてた。
「オレらのこと忘れてませんかねぇ」
「えとちゃんもうりりんもようこそー」
「一年ぶりにオーサカきたー」
そうか二人は約一年ぶりか、あのみんなで大阪に会いに行ったきり以来。
となると、るなさんから告白されてもう時期一年立つのか…早いな。
「会った瞬間オレらの存在なかったことにされてたな」
「ね、ほんと」
うりとえとさんがにやにやしながら俺の両脇をつついてくる。仕方ねぇだろ、いつもいないんだから。調子が狂う、恥ずかしくなって首の後ろを掻いた。
「今日、きょおはみんなで大阪楽しみましょうね!!」
「別行動でもいいんだよ?」
「いやいや、みんなで、ね!」
おたおたするるなさんの”みんな”を強調する話ぶりが少し気になったが
まあ今日は割り切って普通にデートを楽しもうと思う。
ただ誰かがいる面で恋人の振る舞いができない。
手とか繋げなくて、やっぱり物足りないなと思ってしまった。
四人で大阪をぐるぐると回る。
るなさんが学校行事でしか行ったことないという大阪城は綺麗に通過して、のあさんがいってこいと話してた某チーズケーキのおじさんカフェにきた。
焼きたてのチーズケーキがふかふかで、ひとつ全部食べれないというるなさんは俺と半分こ。
えとさんとじゃなくていいのかと間抜けなことを聞いたら、えとさんに「そこは彼氏の役目でしょうよ」と睨まれた。
ちなみにこちらのチーズケーキは帰りに買ってこいとのあさんからお達しが出ている。
その後はラーメン!これものあさんのオススメだった。いや、チーズケーキ食べた後にラーメンていけんのか?
隣の小さなカラダの胃袋が気になる。
「るなさん食べれんの?」
「食べれますっ」
オススメのされたラーメンは家系でなかったからまだよかった。いや、るなさん家系食べてるイメージないけど。
一生懸命すする姿がまた、うん。いい。
「今絶対可愛いって思ったでしょ」
「えとさんしぃっっ」
「ラーメンが可愛いの???」
心の声がダダ漏れだよと教えてくれたえとさんを制し、るなさんになんでもないよと伝えた。
ラーメン可愛いってなんだろう。
一通りのやり取りにうりが笑い声を上げた。
食い過ぎたからいい加減動かないと。
そこでうりが行きたいとこがある、とある場所を提案した。
「「「海遊館?」」」
大阪の水族館、ジンベエザメが見ものの海遊館に行きたいらしい。
「暗いとこで静かになりたい」
「うりもしかして眠いの?」
「腹いっぱいで動くの辛いの」
さっきから足取りが重かったから、疲れてきたんだろう。でもまぁちょうどいい。
「たぶんうり座って動かないとだろうから、しばおとるなふたりでまわっといでよ」
半分寝かけているうりを支えているえとさんに、いっておいで、と手を振られた。
「じゃ、まわろっか」
「そうですね!!」
荷物をロッカーに預けてこれたからほぼ手ぶら。ふたりで横並びになると自然と手がぶつかる距離。
小さな手が遠慮がちに、俺の手を握った。
「えへへやっと繋げた…え、シヴァさんどうしたんですか!?」
「ごめんね、なんでもない…いま全世界に感謝してただけ…」
「え?感謝??」
尊すぎて悶える俺を、るなさんは全力で心配してくれた。
「今日シヴァさんどこのホテルとったんです?」
「あそこあそこ。ホラ、最初に大阪きて急いで予約とったとこ」
そう、あの告白の返事をしに大阪へ来た日。
新幹線止まっちゃって急遽とったあのホテル。
どこに泊まろうかと考えた時、ふと浮かんだのはあそこだった。
「なんか懐かしいです」
「ついこないだな気がするのにね」
るなさんが大きな水槽にさしかかると、ちょうど大きなジンベイザメが横切った。
手を繋いだまま、大きなガラスの水槽にるなさんがべばりつく。
「わぁ!しばさん、みてーおっきいですよ」
俺の顔とジンベイザメを交互に見る姿が面白くて思わず吹き出してしまった。
はしゃいでいるのかな。可愛いわ。
「いーよ、俺なんかよりサメみときなよ」
「じゃ、シヴァさんも」
「俺前行くと後ろの人見えないから。るなさんの後ろに立ってるね」
るなさんの後ろに立つと、ちょうど胸の高さにポニーテールが当たった。
小さいな、このまま腕を回したら俺にすっぽり隠れる大きさなんだな。
上を見て下を見て、右から左。一生懸命サメを追う彼女に笑みが溢れた。
「ところでさ、るなさんなんでえとさんとうりよんだの?」
ダブルデート、とは言ってたけど。他に本心があるんじゃないのか。
聞くなら今だと、思い切って聞いてみた。
するとるなさんはジンベイザメから俺へと視線を移す。
「…それ聞いちゃいます?」
「だって二人が嫌なのかと」
「違います、逆ですよ」
逆?って。
「ふたりだとね、いっぱいくっつきたくなっちゃうので…えとちゃんとうりりんを呼びました」
「え?」
「もうこのお話はおしまいです!つぎ、つぎいきましょ!!」
ぎゅぅっと小さな両手で握られて、一瞬夢と勘違いしてしまった。