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第1話 稽古そんなある日だった。僕は人攫いに会い、馬車の中で小刻みに震えていた。僕の感情は恐怖しかなかった。これからどこに行くのだろう。何をされるのだろう。いつまでもその恐怖と緊張は離れなかった。馬車が出発してからしばらくたち、いきなりピタッととまった。もう目的地に着いたのかと絶望したが、人攫いの男達は何やら言い争いをして小さな叫びの後、静かになった。なんの音も聞こえないのが逆に怖くなり僕は耳を塞いで目を閉じた。しばらくして目を開けるとそこにはじいちゃんの背中があった。僕が目を覚ましたことに気づいたじいちゃんは、
「よく頑張った。」
と褒めてくれた。周りを見てみると気絶している人攫いの男達と僕が乗っていたであろう馬車があった。その瞬間ぼくはじいちゃんが助けてくれたのだと悟った。それと同時に驚きもした。八十近くの老体であるじいちゃんがどうやって若く強そうな男性を倒したんだろう。気になった僕は
「…ねえ、じいちゃん」
「なんだ。」
「じいちゃんはなんでそんなに強いの?」
「…なぜそう思った。」
「だってもうこんなおじいちゃんなのに、若い人に勝つなんて不思議だよ。」
「お前も…強くなりたいか?」
「! うん。強くなりたい。」
「そうか。」
そのまま時はゆっくりすぎ、僕たちの住んでいる家に着いた。
僕を背中から下ろすとき
「早朝の午の刻(5時)に中庭に来い。」
とだけ言い自分の部屋に戻っていった。
朝起きて、中庭に行くとそこにはじいちゃんがいた。
「おはよう。じいちゃん。」
「おはよう。カイ。」
と軽く挨拶したあと木刀を持ち、
「今から儂の故郷の剣技を見せる。よく見ておけ。」
といい、色々な剣技を見せてくれた。この国の兵士が使っている剣技より何十倍も美しい剣技だった。…なぜだかじいちゃんの故郷であるニホンについて少しわかった気がする。
「基本的な技は見せた。お前はまず素振りから始めなさい。」
「えっ。どうやってやればいいの?」
「…そうか。そこからなのか。まず剣を構える。剣先は相手の目線に合わせるように。」
「こ、こう?」
「剣の持ち手が逆だ。右手が上になるように持つんだ。」
様々な指摘のおかげで素振りまではできるようになった。それからじいちゃんは僕に剣だけでなく、勉学も教えてくれるようになり、昔のような、しかし成長を感じる日々となった。気がする。
毎日稽古をしているうちに早3年が過ぎた。体も成長し、基礎練習は余裕でこなせるようになった。(まだじいちゃんには怒られるが)、勉学も…まあまあ…。