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どうも
いきなり思いついたネタです。
⚠︎死ネタです!!!!!
🗻✖️🐱
がら、
控えめにドアをスライドするとその音を聞き取った彼がこちらを向く。
一番端の広めのベッドの上で上半身を起こしていた。俺の姿を見た途端、嬉しそうに目を細めて小さく口を開いた。
「ぁ、フジ、きたんだ」
ふわふわと笑うキヨは日に日に細くなってきている。声も小さく、今日はいつもより肌が白い。
「うん、久しぶり」
手前にある棚に置いてあった花瓶に新しい花を挿す。陽の光に優しく照らされたそれは美しく輝いていた。うん、我ながらいい花を買えたな。
ふと、奥の棚に視線をずらした。何かが置いてある。 よく見てみると真っ白な封筒に入った手紙のようにみえた。もしかして、彼が書いたのだろうか。手を伸ばし、指を指す。
「ねえ、あれ、」
「なあ」
被せるように放った言葉は脆く、聞き取れたのもたまたまだったのかもしれない。
「俺、海行きたい」
振り返るたびにサラサラと揺れる髪はストレスのおかげで真っ白になっていて、茶色の目は透き通っている。
「キヨからのお願いには弱いんだよなぁ、」
「すげ〜!まじでこの辺って海あったんだ!」
病室から、病院から抜け出した俺たちに冷たく刺さるような風が体を抜けていく。
車椅子にキヨを乗せて、ガタガタの道を進む。これを借りるのも中々手がかかった。
看護師さんに「ちょっと、車椅子の持ち出しは…」なんて言われてしまったのだが、必死にキヨからのお願いだから、と何度も何度もお願いすると看護師さんは困ったように渋々了解してくれた。
砂浜まで着いたのだが流石にここから先は車椅子を押すことができない。俺が背中に乗せるかな、とか…
「なー、俺歩きたい」
「え、歩けんの?」
んー、と微妙な返事を返して、肘掛けに体重をかけると足に力を入れてふらふらしながらも立ち上がった。
「ほら見ろ!立てたぞ!」
「…うん」
楽しそうに両手を広げて、逆光を浴びるキヨは天使のように美しくって、儚い。きらきらとした海とキヨの笑顔がただ苦しい。
きっと、キヨとはもう───…
「…本当に大丈夫?」
「おう、今ここにいるんだから」
そうだよね、と呟くと無理したように笑う。俯いて溜まってきた涙を必死に抑えようとする。
すると、細い足で安定しない歩き方で近づいてきた。
「なあ、遊びに来たんだろ?」
俺はキヨを見上げる。
「うん、そうだ…っっっぶ!!」
俺はキヨに砂をかけられたようだ。結構痛い。
「油断してるからだよ!ばーか!!」
今までの不安定さは演技だったのかタタッ!と元気に走り出した。俺もその後を追いかける。
2人で子供のように砂浜を走り回って、寝転がった。
ちょん、と頬をつつかれた。
「俺、やっぱフジのこと好きだわ!」
きらきらとした笑顔に額に伝う汗が綺麗で、虚しい気持ちで心が支配されていく。
「俺も!おれもっ、キヨのこと、大好きだよっ!」
でも、やっぱり大好きな気持ちは消えないから、がむしゃらに愛を伝える。
「泣くなよ、ダセーな!」
「っでも、やっぱり、」
「俺もさ、ずっとフジといたい。でもそれ
はできないから、かなしくってさ…
いなくなるのもいやだし、さ。もういや
なことばっかりで、なんで俺なの、って
いっつもみんなのこと妬んで、っ、
よるは泣いてばっかりでさぁ、ばかだよね」
悲しそうに微笑むと立ち上がって、俺に手を伸ばす。俺も立ち上がって俺の手を引くキヨについていく。
崖、海はその真下。
「でもさ、もう終わりにしようぜ」
「ぇ、どういう…」
「お願い、もう目、覚まして。大丈夫だから」
引っ張られて、落ちた。海に一直線。俺の手には握っていたはずのキヨの手はなかった。
とぷん
思ったよりも軽い音が脳に響いた。
「…」
かたり、音を立てて体を起こす。眩しい日差しが目を刺す。痛い。
「あ!ふじさんっ!おはようございます!自分の名前は言えますか?!記憶は、ありますか?!」
朝の体調を見にきたのだろう。看護師さんが慌てた様子で走り寄ってきた。
「はい…あの、キヨは?」
一緒に、落ちた気がするんです。続けていうと看護師さんは悲しそうな顔をして、躊躇するように口をぱくぱくと開いたり閉じたりを繰り返す。
「…その、キヨさんは…あなたが海に落ちる前、亡くなりました」
「…ぇ、あ」
刹那、全ての思い出が頭を通っていく。
そっか、俺逃げたんだ。
「あと、フジさん。これを預かっています」
出された白い手紙。開くと弱い筆圧で細かく丁寧な文字が並んでいた。
家族への感謝、メンバー全員に向けられた一言。そして、俺への愛の言葉。手紙は最後にこう綴られていた。
『お前と、海行ってみたかった。』
じんわりと涙が浮かぶ。
「……ごめんね、いけなくって、」
小さな一言は風によってかき消されていった。
🫠🫠🫠🫠🫠🫠🫠🫠🫠🫠
ー解説みたいなのー
◯最初にあった看護師さんが「車椅子の持ち出しはダメ!」のことだが、患者さんなら好きなように連れ出していいのだろうか…?ということはキヨは………
◯不自然に改行しているところを縦読みすると………??(上手くできてなかったらごめんなさい🙏🙏)
コメント
1件
いえい好き♡(急な告白やめいキショいわ)天才で好き♡