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俺は柳春人(やなぎ はると)。高校1年生。可も不可もなく、平凡な人生を送っている普通の学生だ。そう。普通の学生。のはずなのに、なんで俺は今、こんな事になっているのだろうか。目の前には、学校で知らない生徒はいないと言ってもいい、3年生の先輩。
その先輩に俺は今、壁ドンをされている。本当に今、何が起こっているのだろうか。
ーー数日前ーー
高校に入学して、高校生活にも少しずつ慣れてきた頃。授業で委員会を決めていた。俺は友達と余っていた図書委員に入ることにした。そんな図書委員の最初の委員会の日、俺達は図書室に集められていた。
席に座って待っていると、図書委員の先生が教卓の前に立つ。
「みなさん、こんにちは。まず初めに自己紹介をしてもらいます。じゃあ、委員長からお願いします」
先生のその言葉で一人の生徒が立ち上がる。
「こんにちは。図書委員長の坂部愛斗(さかべ まなと)です。当番制だし、あんまり関わることもないかもしれないけど、よろしくね」
委員長はそう言って微笑む。そんな委員長にみんな拍手をする。そんな委員長に続き、次々と自己紹介がされる。そして一人の生徒が立ち上がった時、キャーッと歓声が上がる。
「どうもこんにちは。佐野冬馬(さの とうま)です。みんな、これからよろしくね」
そう言って彼が微笑むと再び歓声が上がる。この先輩の事は俺も知っている。学校で知らない人はいないと言っても過言ではないほどの有名人。イケメンで優しい王子様みたいな人だ。
(噂では聞いてたけど、本当に王子様みたいだな)
そんなことを思いながらも見ていると、先輩と目が合う。
俺は思わず目を逸らした。すぐに先輩を見直すと、先輩は既に他のところを見ていた。
そして先輩が座り、次々と自己紹介がされ、自分の番になる。俺は立ち上がってみんなの方に体を向けた。
「柳春人です。よろしくお願いします」
俺がそう言ってお辞儀をすると、委員会のみんながパチパチと手を叩く。顔を上げて座るとふと視線を感じ、目を向ける。すると、佐野先輩と目が合った。なんとなくそのまま見ていると、先輩も片手で頬杖をつきながら俺を見つめる。ただじっと見つめられ、気まずくなった俺は自己紹介をしている人に目を向けた。
そしてその後、図書委員の仕事の説明を受け、当番表が配られる。
「縦の繋がりも大事にしていきたいから3学年ランダムで当番を決めたからね。一週間交代だからよろしくね〜」
先生にそう言われ、当番表を見る。委員会は前期と後期で別れていて、半年のうち、図書当番は2回回ってくるか回ってこないかくらい。俺は2回。1回目は2年生の斎藤先輩。そして、2回目はあの人気者の佐野先輩だ。
(マジか…)
そう思っていると、一緒に図書委員に入った親友の真辺翔(まなべ しょう)が俺に寄って言う。
「全学年ランダムとか聞いてないんだけど」
「俺もだよ。2回当番あるけど、二人とも関わったことない人だし」
「俺は一回。でも3年生。まぁ、委員長だからいいけど。あの人優しそうだし。てかもしかして、みんなこれ知ってるから図書委員余ってたのかな?」
「そうかもな〜」
「だよね。てかお前佐野先輩とじゃん!みんなが狙ってる座だぞ〜」
「別に俺は興味ないけどな。まぁ、なっちゃったもんは仕方ないしな」
俺がそう言うと、翔は1度どこか見たあと小声で言う。
「ねぇ。なんかお前すごい見られてるよ。佐野先輩に」
「え?」
俺は思わず先輩の方を見る。さっきみたいにただ俺をじっと見つめている。
「さっきも見られたんだよね。もしかして俺、なんか付いてる?」
「いや。何も」
「もしかして興味ないってやつ聞かれてたかな?」
「いや。この距離で聞こえないと思うけど」
「だよね。じゃあ、なんで?」
「さぁ。本人に聞いてみたら?」
翔のその言葉に俺は苦笑いする。
「無理だよ。俺達が関わっていい人じゃない」
「でもお前当番同じじゃん」
「それは運だから仕方なし。まぁ、当番以外で関わることもないでしょ」
「まぁ、そうだな」
翔はそう言ってハハッと笑った。
そのあと委員会は何事もなく終わり、解散した。
けれど、図書室を出るまで、俺は一度も佐野先輩の視線を忘れられなかった。
それから数日後、俺と翔は昼休みに廊下を歩いていた。そんな時、前から歓声が聞こえる。声のする方を見ると、佐野先輩がこっちの方向へ歩いて来ていた。そんな先輩を見て、翔が言う。
「佐野先輩じゃん」
「1年のフロアになんの用だろう」
「さぁ」
俺が再び先輩の方を見ると、先輩と目が合う。なんだかこっちに来てる気がする。そう思った矢先に翔が言う。
「なんかこっち来てない?」
「いやいや。あの先輩が俺達に用なんて…」
俺はそこで言葉を止める。どう見てもこっちに来ていたからだ。俺達は思わず黙り込む。そして、目の前に来た先輩は俺の腕を掴んだ。
「えっ」
そう言った途端、俺は壁の方へ優しく投げ込まれる。そしてそのまま、先輩の手が俺の顔の横へドンッとついた。
(えっ?)
周りがシーンっと静まり返る。俺は混乱して、ただ先輩を見た。そんな先輩と目が合うと、先輩はニヤッと笑う。
「君、柳春人くんだよね」
「は、はい。そうですけど…」
俺がそう言うと、先輩は一瞬、俺の目をじっと見た。
逃げ場がないことを確かめるみたいに。
そして先輩は俺に顔を近づけて言う。
「ねぇ春人くん。俺、春人くんのこと好きになっちゃった。だからさぁ、春人くんも俺のこと好きになってよ」
先輩はそう言った後、ニコッと笑った。
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