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rbru ※VTAの話あり
淡い、ぼやけた月にベイプの煙を吹きかける。
「寒くない?よく外で吸おうと思うね」
同居している星導が俺の羽織を持ってくるのでベイプを咥えながら着る。
パーカーは中で温められていて冷えた身体が包み込まれた。
「あんがと。」
「いいえ。俺邪魔?」
「いいや。ぼぉっと月見てただけだから」
星導は俺の右側に来て俺と同じように
空を見る。
「満月でも綺麗でもないのに…変なの。」
興味を失うようにこちらに目を落とす。
暫くしてから星導が俺のピアスにそっと、触れる。
「…なに?」
「小柳くんって元からピアスしてた?」
その質問に言葉を失う。
混乱し、分かりたくないと拒絶するのに同時に変な期待に鼓動が早まる。
「してただろ。デビューの時…」
求められていない言葉で場を繋ぐが星導は苦しそうに遮る。
「じゃなくて、VTA…のときの事。」
VTAの単語に心臓が殴られるような衝撃が走る。苦しくなり、息がうまく吐き出せない。
何で今そんなこと…もしかして、
「ごめん。月夜で照らされた小柳くんのピアスが…なんか、懐かしくって。思い…出せないんだけど」
懐かしい…か。そうか。お前は…
「…黒のピアス2つ、ここに付けてた。星導が今触ったとこ。」
おまえの中にまだあの時の俺が居るんだ。
「そうなんだ」
困った風に笑う星導は俺の頬を撫でて
口付けをする。
「知れて嬉しい、過去は小柳くんしか知らないから」
過去は謎の生命に奪われた。星導晶と共に。
でも、出てくる自我は彼で、きっと中身はそのまま。
「過去だけで良かったな持っていかれたの」
ベイプを吸い煙を星導に吹きかける。
「なっ」
「覚えとけよ、煙だらけの綺麗じゃないこの月の日を」
そう言って俺は中に入ろうと背を向ける。
「ふふっ俺は鑑定士ですよ。」
「あ?」
「さ、入ろ!ね、あったかいなのもうよ」
スリッパを揃えて中に入る。
暖かい部屋はいつもより居心地が良い。
「また牛乳?」
「ココアにする?」
「や、同じので良い」
「じゃあっためるから待ってて」
レンジの前で待つ2人。
指が重なり、体重をかける。
こんな平和が…いつまで続くか分からないけど。もう少しだけはこの心地よさに触れていたいそう想い少しの間だけ、瞳を閉じた。