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今回はなち様のイラストを基に小説を書きました!



青水です!!








「僕が地上に降りた理由」





 空のずっとずっと上。そこには、白い雲がどこまでも広がる天界がある。

 僕――ほとけは、そこでずっと穏やかに暮らしていた。空気は澄んでいて、風は優しくて、誰も争わない世界。けれど、そんなある日、神様から呼び出されて言われた。


「ほとけ、君に地上での任務を頼みたい」


 任務なんて初めてだった。戸惑いながらも、「はい」と答えると、神様は言った。


「一人の少年が心に深い傷を抱えている。彼の傍にいて、笑顔を取り戻させてあげてほしい」


 僕の羽が少し震えた。怖いわけじゃなかった。ただ、その“少年”という存在が、まだ見ぬ何かを感じさせたのだ。


 そして、僕は地上に降り立った。



「お、おい……お前、空から落ちてきたんか……!?」


 目を開けると、青空が広がっていた。そして、その空を背に立っていたのが――いふだった。

 彼は高校生くらいの年齢で、ぐしゃぐしゃの黒髪に、鋭い目つき。だけど、どこか寂しそうな目をしていた。


「僕は……天使です。名前は、ほとけ」


「天使ぃ!? ……うっそやろ……。でも、羽あるし……ほんまに……?」


「本当です。君に、会いに来ました」


「なんで俺なん……」


 いふは目をそらし、ポケットに手を突っ込んだ。彼の声には、強がりと哀しさが混ざっていた。僕はそっと、彼の前に立つ。


「君が……つらい気持ちを抱えてるって、神様が言ってた。だから僕は、君のそばにいるために来た」


 いふは一瞬だけ目を見開いたが、すぐにうつむいた。


「余計なお世話や……。天使とか知らんし……どうせ、俺のことなんか……」


「知らなくてもいい。でも僕は、君のことを知りたい」


 その言葉が、彼の心に届いたのかはわからない。けれど、いふはそのまま歩き出し、後ろを振り向かずにこう言った。


「……とりあえず、腹減ったやろ。家、来いや」


 ――こうして、僕と彼の奇妙な同居生活が始まった。



 いふの部屋は散らかっていて、だけどどこか温かい匂いがした。彼は料理が得意らしく、ちゃっちゃとオムライスを作ってくれた。


「……うまい?」


「うん。すごく」


「そっか……」


 小さな“ありがとう”が聞こえた気がした。天使として、これでいいのかなんてわからない。でも、こうして彼とごはんを食べられる。それだけで、地上に来てよかったと思えた。



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