悔しさの向こう側
春の県大会が開幕した。
柳城は順調に勝ち進んだものの、試合内容は決して圧倒的ではなかった。
――3回戦。
打線はチャンスを作るが、あと一本が出ない。
「まだ勝ち切る力が足りないな」
小早川はキャッチャーマスクの下で歯を食いしばった。
――準々決勝。
接戦の末、なんとか勝利を収める。だが監督はベンチで厳しい表情を崩さない。
「お前たち、秋と同じじゃないか。ここで突き放せないようじゃ、夏は勝ち上がれんぞ」
選手たちは悔しそうにうなずいた。
準決勝で強豪・九州学院大附と対戦。
序盤はリードを奪うが、終盤に逆転を許し、3対4で敗退。
県大会ベスト4という結果に終わった。
「また…あと一歩で届かないのか」
試合後、ベンチ裏で小早川は拳を握りしめる。
だが城島監督は、意外にも笑みを浮かべていた。
「いい顔をするようになったな、小早川。勝てなかったが、確実に前に進んでいる。夏に勝つための材料は、ここにある」
その言葉に選手たちの目が光った。
彼らの胸には、再び夏への炎が宿っていた