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私には友達がいない。いや、違う。友達を作ることが怖い。友達とわいわい遊んでた頃の記憶は小学一年生で止まっている。小学二年生から今の今までずっと友達0人で生きてきた。
私が今まで引きこもりにならずに生きてこれたのは亡くなったおばあちゃんの幽霊がいるからだ。今も私の肩の上で私に微笑みかけてくれている。おばあちゃんがいなかったらきっと私は今頃学校に行きたくないと泣き出して、不登校まっしぐらだった。
感謝はしているけれど、時々成仏させてあげた方がいいのかもしれない。とも思ったりする。何年も私と一緒に居てくれたから幽霊だなんて信じ難いけれど、亡くなったはずのおばあちゃんがここにいるのはそういうことなのだ。
でも私はおばあちゃんとまだ一緒に居たい。せめて小学校を卒業するまで、おばあちゃんに私の中学での制服姿を見てもらいたい。友達もちゃんと作っておばあちゃんに心配をかけないようにしたい。
いつも通り、帰りの会が終わって帰る準備をしていると知らない男子二人に声をかけられた。私は早く帰っておばあちゃんとお笑いのテレビを見るはずだったのに。このままじゃもう始まってしまうじゃないか、おばあちゃんも私のことを心配しているみたいだ。仕方ない、早めに話を終わらせて走って帰ろう。
「 私に何の用だ? 」
少し口調をキツめにした。その方が早く話をして早く帰ってくれるかもしれないと思ったから。ただ、予想外の言葉に私は目を見開く。
「 その肩にいる幽霊。退治させろ。 」
「 ………は? 」
私は一瞬時が止まったような感覚に陥った。なぜ私の肩にいるおばあちゃんがみえているのか。なぜ退治したいと言ってくるのか。こいつらは何者なんだ?わからない、ただこいつらに関わるとおばあちゃんが危ない気がした。
私は、一目散に逃げる。自分の家は向かって。不幸中の幸いか私は両親に鍛えられている為足は早い方だ。もしあいつらが除霊師か何かだったとしたら…?これから私は一人であの地獄を生きていかなきゃならないのか?
嫌だ、せっかく心の在り所がみつかったのに。また奪われるのか?
ああ…、また守らずに奪われる。嫌だ、今回だけは。嫌だ…。
おばあちゃん、どうしよう。私はどうすればいいんだ?おばあちゃんの命がかかってるんだよな。今私の足に…。
「 私は、大丈夫だから。現実から逃げないで。 」
おばあちゃん…?違う私は逃げてるんじゃない。これは逃げてない。ただ…。ただ、?
私は何がしたいんだ?おばあちゃんを私を苦しめるだけの現世に閉じ込めているんだぞ?それでもおばあちゃんに頼ってこのまま生きていくのか?そんなのおばあちゃんが可哀想じゃないか。でも、あいつらは退治と言った。もしかしたら成仏できないかもしれない。
でも、おばあちゃんが成仏できなかったとしたらこれは私のせいなんじゃないか?私がずっとここに閉じ込めていたから、あいつらも退治せざるを得なくなってしまったのかもしれない。
「 ああ、全部私が悪いんじゃないか。 」
そう口に出したら足が動かなくなった。安心したわけでも諦めたわけでもない。ただ自分を見失ってしまった。私の全てが間違いだと知って生きる気力を失ってしまった。
「 もう勝手に退治すればいい。もう逃げない。おばあちゃんの言う通り現実を見る。 」
目の前にさっきの男子二人が近づいてくる。このまま私も一緒に退治してくれたらどれほど楽だろう。友達も居ない、一番の生きる気力だった存在が私の手で…。
自分の目に涙が溜まっているのがわかる。でも絶対に泣かない。私は強い女の子だから。そう言って両親からは育てられてきた。でも、おばあちゃんは私に泣いてもいいんだよ。って優しく声をかけてくれた。
でも今の私はそんな言葉をかけてもらっていい存在じゃない。私は自分の名前を忘れてしまった。
もう何年も呼んでもらってない。最後に名前。呼んで欲しかったな。おばあちゃん今までごめん、そして私の心の在り所になってくれてありがとう。この数年間ずっと幸せだった。
「 おばあちゃん…。愛してる。 」
おばあちゃんに向けて言った最後の言葉。らしくない言葉だったけど、やっぱりそれしか思いつかなくて、一番伝えたい言葉だった。
そのあとは覚えていない。すっごい暴走して。おばあちゃんを退治した本人達に止められて。やっと正気を取り戻したと思ったらおばあちゃんが居ない現実に耐えられなくて慰められながらもひたすら泣いて。
私の情緒は完全に壊れてしまっていた。
この調子で帰すのはまずいと判断されたのか私の両親に連絡されて勝手にここに泊まっていくことになってしまった。ただ、そんなことは気にせず私は夜も寝ずに泣き続けた。
第一話 終