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「昼間は暑いけどさ…夕方になるともう、秋って感じだね。」
悩みに悩んで捻りだした余りにも弱すぎる話題をキミに投げ掛ける。昨日は自分や自分の周りの人の話ばかりしてしまったから、少し反省。返答を求めるような話題じゃないけれど何か言ってくれるかなと思い、眉を上げ首をかしげてみる。
……あ、頷いた。
頭が傾くのと同時に揺れるキミの髪が夕陽に当たって、絹糸みたいに煌めく。つい見過ぎてしまい、恥ずかしさを誤魔化すために街並みに目線を逸らす。また少し話題を考え、口を開いた。
「もう9月終わるしと思って日焼け止めサボったらさ、めっちゃ焼けた。ちゃんと塗らなきゃだよね」
あは、と付け加えるような笑い声を添える。キミは日焼け止めなんて塗らなくっても白いし、あんまり興味ない話だったかな。もっとキミの好きな事の話とかしたいのに、そこまで踏み込む勇気がない。
え、今ちょっと笑った?声は出てないしすぐに下を向いてしまったけど、笑ったような気がする。どうしよう、嬉しい。嬉しい 。
一緒に帰るようになって二ヵ月くらい経って、始めて進展したような気がする。嬉しさを噛み締めるのに必死でしばらく声が出なくて、数分経ってようやくまた話し出す。
「こんな時期になるとさー…ほんともう、ちゃんと受験と向き合わなきゃって感じだよね。やんなる」
自分で話題に出したのに少し気が滅入ってしまい、小さくため息を吐く。
しまった、キミの前では、笑っていたかったのに。気が緩んだな…。
頷くキミを横目に歩き、あっという間に自分の家に着いてしまった。
あぁ、もう少しだけ、キミといたいな。もっと話したいことも聞きたいことも、沢山あるのに。自宅の柵の扉を開きながら考える。言いたいことが頭の中に入り乱れて、結局なにも言えなかった。今日も声、聞けなかったな。キミは俺の事、もしかして嫌い?何となく、そんな気がする。それでも諦めないからさ、明日こそ、一言くらいさ
「…じゃぁ、また明日。今度こそ声聞かしてね、無口クン。」