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【注意】
・こちらの作品は二次創作となっています。御本家様とは関係ございませんので迷惑のかかる行為はおやめ下さい。
・映画を見た方がご覧になることをお勧めします。こちらの作品はネタバレも含まれますので未視聴の方は控えて早く見に行ってください。絶対ですよ?
・もうなんでも良いよ来いやゴルァ!!という男前な方はどうぞお楽しみください。
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「ただいま帰りましたぁ。」
今日も喧しゴホンゴホン、元気な子供たちを相手し疲れた体を引き摺り水木の家へ帰る。
今でも水木の家に帰るというのが慣れないが自分の家に帰るよりもここは暖かく、自然と帰る足が早くなっていた。
どうやら水木はまだ帰っておらず水木のお母様も見当たらない。
まぁ、私が今日いつもより早く帰れたというのもあるだろう。
「鬼太郎は……ん?」
もしかしたら寝ているかもしれない鬼太郎に配慮し足音を立てぬよう廊下を歩き、そろりと襖を開ける。
すると、中から鬼太郎のきゃらきゃらと楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
はて、何かと不思議に思い部屋へ足を踏み入れる。
そしてそーっと鬼太郎へ近寄れば、そこには動く小さな赤い目玉が鬼太郎をあやしていた。
もう一度言おう。
小さな赤い目玉が鬼太郎をあやしていた。
「……ゑ????」
「ゲゲ、見つかってしもうた。」
赤目をした目玉から小さな体が生えたようなこの異形。
そいつは最初、私に驚いたもののすぐに平然に戻るとまた鬼太郎の相手をしだす。
驚きすぎて思考が停止した私だったが、すぐに我に返ると慌てて目玉と鬼太郎を離すように鬼太郎を抱き上げた。
この目玉、喋ってる……!?
「なっなんです貴方!?もしかして、鬼太郎の親族……?迎えに来たのですか。そ、それなら帰ってください!この子は私と水木が育てるんだ!!」
パニックになりながらもとにかく必死に、鬼太郎を取られまいと悲痛に叫べばこの異形は目を驚きの色に染めた後、落ち着いた声で諭してきた。
その雰囲気は昔ぐずっていた私をあやしてくれていた祖父を思い出させ、自然と声が萎んでいく。
「この子を迎えに来たのではない。わしはこの子の親での、倅を育ててくれているお主らには感謝しとるんじゃ。見ての通りこの体では育てるのにあまりにも無力。じゃから、人の子ではない鬼太郎を見捨てず育ててくれているお主らには本当に感謝してもしきれぬ。」
優しく落ち着いた話し方。
だけど、私はこの赤い瞳を見ていると不安に駆られた。
自分はどこかでこの赤い瞳を見た気がするのだ。
既視感が自分を襲い蓋をした記憶を開けようとしてくる。
だが本能が拒絶するように思い出したくないという気持ちと、思い出さなければという気持ちが胸の中でグチャグチャに混ざり合い焦燥感が強まるばかりだ。
こいつは、一体なんなんだ。
こいつは、一体誰なんだ。
こいつは、こいつは、
「初夏?どうしたんじゃ?」
「あっ、いや……どこかで、貴方と同じ瞳を見た気がして……いえ、なんでもありません。して、どうして私の名前を知ってるんです?」
「いっいやそれはぁ……えぇと、こんな姿じゃがわしも親じゃ!倅が心配での、様子を見に来ていた時に偶然知ったんじゃよ!」
「なるほど……?」
まだ信用したわけではない。なんならまだ危険性があるこの異形を鬼太郎に近づけたくはない。
だけど、この異形の目に慈愛と優しさが見えてしまって、意図せず肩の力が抜けてしまった。
これもこの異形の妖術なのか?
「水木がこれを見たら何と言うか。」
「あやつはきっといい反応をしてくれるじゃろうな。」
「違いない。」
そも、本当なら目玉を見て叫び声でも上げるべきなのだろう。
それに親だと言うのに我が子を素性の知れぬ人間に任せるなど無責任だと叱りたい。
だけど、こいつは望んでその姿になったわけではなさそうだったから少し哀れみを抱いてしまった。
その姿では己のややこを抱くことすら出来ないだろう。
それは親としてとても可哀想だと思えざる得なかった。
私もまだ人間らしい心があったようだ。
「本当に、お主らは優しいのう。」
「は?確かに水木は出来た男だ。鬼太郎を拾ったのは水木でこの家で育てると決めたのも水木だ。なのに、何故私まで?」
「やや、無自覚とは恐ろしい。」
突拍子もない事を言い出した異形に怪訝そうな顔を向けるが、この異形は呆れたとばかりに首を振っていて少し腹が立つ。
なんで初対面なはずの目玉に心にもないお世辞を言われなきゃならんのだ。
妖の苦手な物など分からぬが塩でも撒いてやろうかと心の中だけに留めておきながら、しっかり塩の場所を頭に入れておく。
いつかこの異形にムカついたら容赦なく撒いてやろう。
「いま帰ったぞぉ。」
「ありゃりゃ、水木が帰ってきた。早く手の上に乗ってください。貴方が鬼太郎の親だと言うなら育てている水木に挨拶すべきだ。」
「そうじゃの、失礼する。」
ちょこん、と効果音がつきそうな座り方で手のひらに乗った目玉を仕事から疲れて帰ってきた水木の元へと連れていく。
鬼太郎は惜しそうに異形を見送っていたから、もしかしたら本当にこいつは親なのかもしれないなと思った。
「水木、おかえりなさい。疲れたろ。」
「お、初夏。もう帰ってたのか。」
出迎えに来た私にやつれた顔をしていた水木の顔がぱっと明るくなる。
だがな水木、すまん。今からその笑顔を私ゃ壊す。
「帰ってきたところで悪いんだが、水木に挨拶したいという者が居るんだ。」
「俺に挨拶したい者?」
「そう。」
ちょいちょい、と手招きをして少し屈んでもらう。
そして何を見ても驚くなよ、と警告してからそっと手を開ければ、赤い瞳をした目玉が声を弾ませ自己紹介をした。
「ヒィ!め、目玉ぁ!?しっ初夏なんだこいつは!?」
「わしは鬼太郎の父親じゃ。鬼太郎を育ててくれているお主に挨拶と感謝を申し上げたくての。」
「だ、そうだ。鬼太郎も随分と心を許していたようだから、もしかしたら本当に親かもしらん。」
化学の時代に妖怪なんて!と笑い飛ばしていた男に、どうやら動く体の生えた目玉は刺激が強すぎたらしく近所迷惑な程に大声を出して腰を抜かしてしまった。
100点満点の反応である。
「おい、こいつ……!俺が前見た奴だっ!」
「あの目玉を見たってやつかい?なぁんだ、うちについてたのはこいつじゃないのか。」
水木を起こしてやろうと手に目玉を乗せたまま近づくと、水木の肩がびくりと跳ねる。
やはりこの反応が当たり前なのか。
自分は前から妖の部類は信じていた方だったからこの程度で済んだのかもしれない。
いや最近寝不足でちょっと反応が薄いというのもあるかもしれないが。
まぁ、でも。私がケロリとしているから大丈夫と判断したのか水木が目玉をじろじろと見るために一歩前のみになる。
まだ信じきれていない顔が可笑しくて少し笑ってしまった。
「妖怪は見ようとしていないから見えていないだけで、お主らが生まれた時から今に至るまで傍にずっと居る。両目でしっかり見ようとするからダメなんじゃ。」
「お前に言われると説得力があるな……」
「水木なんて居るわけないと決めつけてるから尚更見えてなかったんだろね。この堅物め。」
「誰が堅物だ。」
玄関で3人(?)固まってじゃれているという意味が分からない状況を終わらせたのは、鬼太郎の泣き声だった。
鬼太郎の泣き声が聞こえた途端、ばっと勢いよく3人で振り返る。
私はまだ靴を履いたままだった水木の代わりに鬼太郎の元へと目玉を手に乗せたまま向かった。
「ご飯はまだ出来てないから、少し待っててくれよ。」
「すまないな、今日の飯はなんだ?」
「肉じゃが!」
「少し手伝うぜ。」
「そりゃありがたい。」
くふくふと笑いながら泣いている鬼太郎をあやす。
また暫く泣き止まぬかと思っていたのだが、目玉を見たらあの鬼太郎が少し泣き止み内心驚いてしまった。
それと同時に嫉妬もした。
「なんだか、夫婦みたいじゃな。」
「ふうふ……?誰と誰が?」
「初夏と水木じゃよ。他に誰がおる?」
「う、うちと水木がぁ!?アンタそらぁ、水木が可哀想だよ……本人の前で言うのはやめてあげな。」
この目玉はどこをどう見てそう思ったのか。
心外だと全力で顔に出して嫌そうにすれば逆に驚かれてしまった。
お互いに恋情を持っていないのにどうしてそうなるんだ。
「それに、今は鬼太郎が居るからね。うちも水木も暫くは恋だの浮ついた話とは無縁だろうよ。」
「……すまんな。」
はて、何故この目玉が謝るのだろうか?
見るからにどんよりと空気が沈んだ目玉に困惑しておろおろしていると、過ごしやすい服に着替えた水木が後ろから顔を覗かせた。
「金を稼ぐのに仕事が忙しいとかそんな意味じゃなく、鬼太郎があまりにも可愛いから他の連中に目が行かないってこいつは言いたいんだろ。」
「おぉ、水木よく分かってるじゃないか!そうさ、アンタの息子が可愛いもんだから、ほとんど鬼太郎に恋してると言っても過言じゃないのさ。変に勘違いしてんじゃないよ。」
どうやらこの目玉は私たちが仕事に追われ恋をする暇も無いと勘違いしていたらしく、なぁんだと笑ってしまった。
そんな意味で言った訳では無いのにコイツは申し訳ないとこんなにも落ち込むのか。
妖だからと、人とは違うと思っていただけでそうではないようだ。
まぁ、これが演技かもしらんが。
「……にしても水木、やっぱりあれだな。流石社畜と言うべきか順応性高いね。」
ズズ、と茶を飲んでいた水木にそう言えばと言ってやれば、奴は盛大に茶を吹いて自分でも驚いていた。
その様に目玉と一緒に笑っていれば、お前妖怪の素質あるんじゃないか……?と水木が言ってくるもんだから気味悪く笑ってやれば拳骨を貰ってしまった。
こいつ鬼太郎関係なく嫁さん出来んだろ!!
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調子乗ってまた載せてしまいます。お許しください。