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自分の布団が擦れる音のみが響く真夜中、なんだか変な時間に目が覚めてしまった。体を起こしてベッドから足を降ろす。隣で寝息を立てているしにがみくんは、少しの物音でも起きてしまうため気をつけながら部屋の扉を開けて廊下に出た。

少し肌寒い気がしたので、トラゾーのカーディガンを無断で借りる。まぁあとで返すし大丈夫だろう。目がしっかり冴えてしまった今は布団に戻っても寝れる気がしないので、眠くなるまで何かをして暇を潰さなければ。とはいえ照明をつけると誰かが起きてくる可能性がある、照明をつけない状態でできることは少ない。さて、何をしようか。

読書は文字を読むだけで頭が痛くなってくるし、手遊びやボードゲームも1人ではつまらない。…うーん、外の景色でも見て考えよう。これで眠くなったら万々歳なのだが。

物置の小窓を開け、空を見上げる。黒い空に無数の星、今日は晴れていたので余計に星が綺麗に見えるのか。特にあの緑色の星がよく見える……ん?あれ、だんだん大きくなっている気が───

俺は空を見ながら固まっていたが、あの緑色はあれだけ高いところから降ってきたにも関わらず、トンっと軽い音を立てて小窓の縁に着地する。

「…あ、お前この前の……!!」

大きな緑色の魔女帽を深く被り、宝石のような翡翠をこちらに向けダボダボな白い服を身にまとっている。その瞳からは敵意も好意も感じられない。俺が困惑していれば、ふんっと生意気そうに鼻を鳴らす。は?何だこのガキ。

文句を言おうと口を開いたが、目の前の翡翠が妖しく揺れる。あ、あの時と同じだ、飲み込まれるような───

はっ!何だ?一瞬頭に霞がかかったようになるが、すぐに解ける。この子が何かしているのだろうがただの人間の子供である俺にわかるはずもない。

「ナンデェ!?」

「何が!?」

「ナンデ魅了チャームかかんないの!?」

「ちゃーむ…?」

「…アッ、いやナンデモナイ…」

勝手に困惑されても俺は何もしていないのでな…少しこの翡翠を可愛らしいなどと考えていれば、俺の首に小さな手が伸びる。しかしその手はバチッと火花のようなものを出して弾かれた。その様子に驚いていると俺の周りにポンッと複数匹のラタミが現れる。しかし今までのような愛らしい様子とは裏腹に、この翡翠に敵対しているように見える。声だって軽快な明るい声ではなく、低く唸るような声をしていた。

翡翠はそのうちの1匹を乱暴に掴み、忌々しそうに呟いた。

「お前らのせいカヨ…ラダオクンの使魔ダカラって調子に───」

「おい!!ラタミを離せよ!!!」

「ウルサイナ、良いの?お前の友達起きちゃうよ」

「あっ、…っラタミのこといじめないで」

俺は精一杯睨みながら声を鎮め告げる。不機嫌な顔のまま翡翠はラタミをぶんっと投げ、そしてどこから取り出したかわからない、緑色に光る弓矢を構えた。

「こいつらが傷つけば、ラダオクンは出てきてくれるカモネ」

「は!?おい、やめ────」

「ストップ」

俺の手が空を掴むのと同時に、翡翠の背後からこれまた人間離れした容貌の男が現れた。

背中にタコもしくはイカのような触手を背負い、顔の半分は赤と紺の模様が描かれた紙で隠されている。咄嗟に思った、胡散臭い、という言葉はこの男にとてもぴったりだ。偏見でしかないのだけれど。

「も〜、きょーさんに続いてみっどぉまでやめてよね。

───勝手なことされると、困るんだよ」

「ひっ…」

「…チッ、ゴメン」

「お、素直に謝れて偉い!じゃあ大人しく帰ろうね、君もごめんね?」

そんなお手本のような笑顔をむけられても不機嫌極まりないオーラがビシビシと感じられるので尚更怖いだけなのだが?

その人は翡翠の彼の肩をがっちりホールドしながら、じゃあねとこちらに背を向けて窓から飛び降りた。ここは地上3階、あんな風に背中から落ちたら……と思って窓から身を乗り出したが、真夜中ということもあって視界が悪く、何も見えない。しかし何かがいるような気配も何もしないのだ、それこそ、消えてしまったように。

あぁ、短時間で色々ありすぎて頭がパンクしそうだ。状況整理は明日にして今日はもう寝よう。…って、そうじゃないだろバカ俺!

「ラタミ!大丈夫…?ごめんね、ありがとう!」

「ギギ…ッ、ピ!ピィ!」

1匹のラタミは怪我した羽を隠すように身をよじり、笑顔を見せてみせた。急いで部屋に走り、絆創膏を持って戻る。擦れている羽の箇所に貼ってやれば、嬉しそうに俺の周りを飛び回った。絆創膏を貼っただけでこんなに早く治るとは思えないが、大事にはならなさそうで良かった。

ふぅ、と息をついたらなんだか眠くなってきた。ラタミに手を振れば、ラタミも羽を振り返してポンッと消えていく。よくわからないが、あの人たちの発言からして彼のちゃーむ…?とかいうやつから守ってくれたのはラタミなのだろう。次のお土産は少し豪華にしようかな。

「ふあ…ねむ…」

踵を返し部屋へ戻ろうとすると、背後に視線を感じ、勢いよく振り返る。するとそこには暗闇に浮かぶ紫色の双眸が…

「…し、しにがみくん…?いつから…」

「…これで、『何も言えない』は無しですね。何があったのか、洗いざらい話して貰いますからね!!!」

ひとりぼっちの青鬼様

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コメント

8

ユーザー

ウラベさんお疲れ様です!! ラタミ、大丈夫か!?ぺいんとさんに絆創膏貼ってもらってよかったです!! コンちゃんが出てきた!? 最後はしにがみくんにバレましたがこれからどうなるんだろう…! 楽しみにしてるね! 自分のペースで頑張ってね!

ユーザー

最高です!!!!

ユーザー

ラタミっ!!!いやっ!!!いやっ!!!!!mdくん大好きだけどラタミに怪我させたのだけは許せないわ!!!!傷隠して心配かけないようにするのかわいいね!!!pnちゃんのこと守ってあげるのかわいくて偉いね!!!手(羽)振るのかわいいいいいいいいあああああああ() .....失礼取り乱しました

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