テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
訓練後の休憩時間。亜白ミナ隊長と神楽るりは、ベンチに腰掛けてお茶を飲みながら笑っていた。
「いやぁ、この前の出撃やけどなぁ、80%で抑えても骨格の軋みが止まらんようになってもうて」
「あぁ、確かにあれ以上踏み込むと筋繊維が断裂するリスクが高い」
二人はにこにこと微笑みながら、当たり前のように恐ろしい会話をしていた。
「出力制御」「神経伝達の遅延」「筋組織の再生限界」――聞けば聞くほど医学と軍事科学の専門書のようなやり取りだ。
そこへ保科宗四郎が、にこやかに歩いてきた。
「お、楽しそうやん。僕も混ぜてもらってええ?」
るりとミナは顔を見合わせ、自然に頷く。
「もちろんどす、副隊長」
「もちろんだ、保科」
保科は「よっしゃ」と腰を下ろし、腕を組む。
……しかし。
「で、出力リミッター外すと、末梢神経が過剰発火してオーバードライブ起こす…やはり難しいな」
「せやけど鉄扇やと、空気抵抗と衝撃波が干渉してエネルギーロスが出るんよなぁ」
「そのへん、どう補正してるんだ?」
「えっとなぁ――」
るりとミナが一斉に語り出す。
脳波制御、内臓の耐性強化、戦闘服の補助機能――まるで研究者の討論会のような熱量。
保科は最初こそ「なるほど」と頷いていたが……
(……え、なにこれ。急に難易度跳ね上がってない? 僕、場違いちゃう?)
冷や汗をかきながら、愛想笑いで「せやなぁ……」と返す保科。
だがるりとミナはまったく気づかず、楽しそうに議論を続けていた。
やがて、るりが保科に振る。
「なぁ副隊長。筋繊維の再生限界と神経伝達の遅延、どっち優先したらええ思います?」
「……え? えっと……どっちも……大事、やな?」
絶妙に噛み合わない返答に、るりとミナは顔を見合わせて笑った。
「副隊長はほんま真面目やなぁ」
「少し難しい話だったか」
――こうして保科副隊長は、密かに「高度な談笑に置いていかれた人」として隊員たちの間で語り草になるのだった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!