テラーノベル
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昼食も無事に済ませて、次は防具屋へ向かうことに。
防具屋……というのは、冒険用の装備を扱っているお店のことだ。
普通の衣類が欲しい場合は服屋や古着屋、裁縫工房などに行くことになる。
ちなみに裁縫工房というのは、いわゆるオーダーメイドをするところだ。
「よし、それじゃルークの防具を探そうか!」
「あの、アイナ様……。私は本当に今のままで十分なのですが……」
「まぁまぁ、防具屋に入る口実だと思って!
私とエミリアさんは、別に買うものが無いわけだし」
私はクレントスでオーダーメイドで作った服があるし、エミリアさんは法衣がばっちりサマになっている。
折角お店に入るというのに、何の目的も無いのは寂しいところだ。
「はぁ……。分かりました……」
ルークは困りながらも同意してくれた。
ほぼ強引に、引き出した形ではあるけど。
「――おお、これはすごい!」
何件かの防具屋を回っていると、あるお店で超立派なヘビーアーマーを見つけた。
あらゆる部位が金属で覆われており、渋い金色に輝いている。頭のてっぺんから足の先まで金色だ。
「本当に、色々な意味ですごいですね。
私の場合、これを身に付けたらロクに動けなくなりますが」
ルークは攻撃と素早さの両方を活かした感じの戦闘スタイルだからね。
こんなヘビーアーマーを装備したら、素早さが完全に死んで攻撃もままならなくなるだろう。
「……空箱の魔石を付けてみるとか?」
「魔石スロットはひとつですね、これ……。
いえ、たくさんあっても実際には難しいです」
そういえば、魔石スロットはひとつしか付いていないようだ。
仮に空箱の魔石(大)を付ければ45%は軽くなるけど……それだけ軽くなったところで、やっぱり重くはあるだろう。
それに空箱の魔石(大)だって、金貨90枚以上するわけだし――
……私はふと金額が気になって、ヘビーアーマーの値札に目を移す。
金貨50枚!
うん、そうだよね。それくらいするよね……立派だもんね。
「……まぁ、やっぱり普通くらいの鎧が良いのかな?」
そう思いながら、普通の鎧を見てみる。
今のルークはいわゆるライトアーマーというやつで、旅のために軽装にしているそうだ。
「そうですね、これくらいの鎧なら仕事でずっと身に着けていたので問題はありません。
しかし長旅ということを考えれば、やはり重いですね」
うーん、確かに。
でも、例えば街に拠点を置きながら行動するときとかは、これくらいあっても良いんじゃないかな?
荷物が増えたところで、私のアイテムボックスがあるわけだし――
……そんなことを思いながら見て回っていると、何やらとても素敵な鎧を見つけた。
格好良い感じの、ちょっと立派な感じ! それなりの立場の人を護衛する騎士みたいな感じ……っていうのかな?
「おぉ……、これ、いい! とってもストライク!」
「そ、そうですか?
旅をするには少し立派すぎではないでしょうか……」
確かに! 確かに旅をするには立派すぎるんだけど――
「ルークは知ってたっけ?
私、クレントスを出るときにルイサさんから服をもらったの。ルイサさんの作で」
「そうだったんですか? ルイサさんが裁縫を……。
あ、そういえば話だけは聞いたことありますね。話だけですが」
「で、その服と合うんじゃないかなーって思ったんだけど……。
あ、ちょっと着替えてこようかな」
「え? ここでですか?」
「あそこに試着室があるでしょ? お店の人に相談して、着替えてくる!」
お店の商品を試着するわけじゃないからね。
一応使って良いかを確認して、鎧を買う気もあることをアピールしながら交渉したらすんなりOKをもらえた。
「じゃ、じゃーん♪」
本邦初公開! ルイサさん作の『はったりをかます服』!
ルイサさんの談によれば『ちょっとした聖人っぽいイメージ』で、上等な布で作られた法衣のような丈の長い服だ。
「うわー! アイナさん、素敵ですっ!」
「おぉ……アイナ様の素晴らしさを凝縮したような……。
まさかルイサさんがここまでの腕だとは……」
ふふふ。
こはる
しめさば
#独占欲
私は服をもらって着替えただけだけど、何だか鼻高々である。
「ほら、何か偉い人に会うとか公的なところに行ったりとか……あとは本当にはったりをかますとき? に、使おうと思ってるんだ。
それでほら、さすがにこの服を着ると、ルークのその旅の格好は――」
「……場違い感がありますね」
「ぐっ!」
エミリアさんの容赦の無いひとことに、ルークは精神的なダメージを受けた。
「そこで、この鎧! これだったら丁度良い感じじゃない?」
「むむ、確かにそうですね……。
アイナさんとルークさんが並んだら、すごくそれっぽいです!」
「……そうですね、アイナ様もそういった場所に行くことは当然あるでしょうし……。
分かりました。私はこの鎧が欲しいです!」
おお、ルークを説得することが出来た。
「ちなみにお値段は――」
……ちらっと値札を見る。
金貨30枚!!
ヘビーアーマーよりは安いものの、やはりそれなりのお値段ではある。
これにはルークも唸り声を上げてしまう。
「……金貨30枚ですか。うぅん……」
「ミラエルツで一か月も金策し続ければ貯まる金額ではあるけど――
……うん、金策のことも少し考え直してみようかな?」
「そうですね。お二方には申し訳ありませんが、よろしくお願いします」
おや? いつもだったら『やっぱりいいです』とか言い始めそうなところだったけど……。
これはエミリアさんに、『場違い』って言われたのが理由かな?
「ううん、全然大丈夫だよ。
まだ滞在し始めたばかりだし、こういう目標があった方がメリハリが出ると思うからね」
「そうです、そうです。ルークさんはお気になさらず!」
「……さて。それじゃ、私は元の服に着替えて来ようかな」
「え? もう着替えちゃうんですか?」
「だって汚れたら嫌ですし……。
それにほら、ここぞというときのとっておきなので」
「残念です……。次に見られるのはいつのことでしょうね……」
「それじゃこの鎧を買った後に、着替えてルークと並んでみますか」
「わぁ♪ それは良い考えだと思います! ちゃちゃっと買っちゃいましょう!」
ちゃちゃっと金貨30枚は出せません! まずは金策です!
「――というわけで、頑張ってお金を貯めましょうね!」
「はい!」
「はーい」
その後、私はいそいそと着替え直すことに。
着替えた後は店員さんにまた来る旨を伝えて、そのまま二人と合流――
「……さて、そろそろ次に行きますか」
「ちょっとわたし、向こうの方を見てきても良いですか?」
「それなら私も――」
「いえいえ、軽く一周してくるだけですから!」
そう言いながら、エミリアさんは奥の方に歩いていった。
何となく目で追い掛けていると――
「……あれ?
エミリアさん、魔法使いの服のところに行ったよ?」
「本当ですね。
何かアクセサリのようなものでもあったのでしょうか」
「うーん? 次はアクセサリ屋に行くのになぁ……。
気が早いというか? それなら私も一緒に行きたかったのに――」
……などと言っていると、エミリアさんは早々に戻ってきた。
「何か気になるものでもあったんですか?」
「いえいえ、本当にただ一周してきただけですから」
「そうなんですか? それじゃ、次に行きましょう」
「はーい、次はアクセサリ屋ですね! どんなのがあるか楽しみです!」
若干のエミリアさんの挙動不審さを感じながらも、私たちは防具屋を後にした。
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