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「……ねぇ、瑞希。いつまでその顔してるのよ」
テーブルの上には、二人の名前が並んだ「婚姻届」。
「ボク、本当にいいのかな。えななんの真っ白な未来に、ボクが一生混ざっちゃっても」
ボクがこぼした最後の弱音を、えななんは鼻で笑って切り捨てた。
「まだそんなこと言ってんの?昔のこと引きずるわね〜 」
えななんはボクの手を強く握り、そのまま自分の苗字を書き換えた。
「暁山 絵名」。
ボクが忌み嫌っていた「暁山」という名前を、彼女は世界で一番誇らしげに、自分のものにしてくれたんだ。
「ほら、これで文句ないでしょ。」
ボクの瞳から、一粒の涙がこぼれて、婚姻届の端を濡らした。
あの日、ボクが「消えたい」と願った時、世界は真っ暗で冷たかった。
でも、今、えななんの隣で叶えた「ずっと一緒にいたい」という願いは、こんなにもまぶしい光を連れてきてくれた。
「……えななん、本当に、ボクには一生勝たせてくれないんだね」
ボクは、彼女の肩に頭を預けて目を閉じた。
「……大好きだよ、えななん」
「……当たり前でしょ。一人になんて、死んでもさせないから」
二人の前には、もう冷めきった孤独な晩餐なんてない。
朝日を浴びた真っ白な皿に、これから二人で、一生かけて「愛してる」を並べていく。
それが、ボクたちの、終わらないフルコース。
いつまでも、終わらない、果てしないフルコース。