テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
冬の朝、目覚めたときに昨日の夜から雪が降っていたことを思い出す。何故か知らないけど、記憶を辿っても雪を見るのは初めて。
「早くっ・・・!雪が見たい・・・!」
そんな独り言を呟き部屋の中で学校の用意をする。あれこれ済まして・・・
「ユキー?学校の準備するんだよー?」「今行くー!」
おばあちゃんの催促を遮るように私は声を出し階段を下る。それほど初めて見たり、触ったりする雪に期待が止まらない。カバンを手に持ち、勢いよくドアを開ける。開けた先には一面が白く染まるほどの雪景色。
「どこが道路か分からないや・・・」
そうこう言いながら歩道を探しつつ学校へと向かう。雪を踏みしめながら。楽しんでいるのもあっという間で、もう学校が目の前にある。今日は少し早く来すぎたのか、私は誰も居ないか確認をしても誰一人校舎には居なかった。校庭を見ると案の定雪は積もっていて、倒れても痛くなさそう。
ドサッ!
私はより雪を楽しみたい気持ちを抑えきれず、積もった雪に倒れこむ。起き上がると跡がついている。歩き出し、転がり、倒れたり、また歩き出し、その繰り返し。こんなに雪と戯れるのは誰もいないから、そして今だけしか出来ないこと。流石にずっと遊ぶのも疲れる。雪を服からはらい、教室へと行こうとして、振り向くと正面には誰かがいた。
「だれ・・・ですか?」
恐る恐る問う。見たことはある顔、記憶の片隅にはある気がするけどなかなか思い出せない。
「人間としての生活は楽しかったか?ユキ。」
私の本当のお父さんだった。私は元々雪女だったんだ。目の前の人間が本当のお父さんだったことを思い出し、氷が溶けていくように色々な記憶を思い出す。私が雪を降らせる側が嫌になったのを見て本当のお父さんが人間として生きていける時間を与えてくれたこと、何も着るものも食べ物もない私を見て拾って、育ててくれたおじいちゃんおばあちゃん。今までのことを思い出していくうちに涙が溢れていく。
「さあ、本当の家《そらの上》に帰ろうか。ユキ。」
突っ立っている私に手を握ろうとする。
「・・・ちょっとまって!」
よく分からないけど駆け出した。家の方向に。雪がまた降り出す。
「どんな姿でもいいからっ・・・!あと少し・・・!」
家へ向かう一番の近道であったら道ではないところでも駆ける。駆ける。とにかく駆ける。私の頬には涙がまた伝う。みるみる手や顔の血色はなくなり白くなる。寒さも少しずつ薄れていく。服も白いワンピース。家の玄関が見えてドアに倒れこむ。
ドンドンッ「お母さーんっ・・・?開けてっ・・開けてくれない・・?」
必死に家の玄関を叩く。叩くうちに本当の家に帰ることを思いさっきより涙が溢れる。その時、鍵が開き、ドアノブが開く。私の母が出てくる。
「ユキ・・?どうしたのそんな姿・・・」
母が私の姿に対して問う。でもそんなのは関係ない。
「お母さんっ・・・ありがとう・・?」
この最後の五文字に伝えたいことを詰めた。また駆ける。さっき来た道を戻るように。学校の校門に着く。校庭へと歩き出し、本当のお父さんのほうへ行く。
「もうやりたいことは終わったよ・・・。もう、行こう。」
もう悔いはない。雪は楽しめたし、母には今までの感謝を伝えることができた。その時、私の同じ教室の生徒が学校前まで来るのをみて、無心に手を振る。それと同時に校庭だけに猛吹雪が吹く。本当の父と手を握り、飛ばされるように空へと飛び立つ。
この地に、「さようなら」を・・・。