侑side
侑「警戒してるよね……大丈夫だよ」
?『……』
私の言葉に目の前の狼は驚いているような様子だった───。私は天霧侑、12月25日……クリスマスの日に生まれたA型の高校一年生だ。
寒空の下、不穏な噂がある深い森にいつの間にかいた。多分……いや、きっと私を嫌っている親が眠っている間にここに置いていったのだろう。私はそれ以外何も言わず、見つめる
?『……』
狼はやはり答えることはせず、何処かへ消えていってしまった。まぁ、初対面相手にすぐ警戒するなと言われて困るのは当然だろう。
?「……」
狼が去った方の茂みから紫色の髪をした不思議な女の子が来た。彼女も私のようになったのだろうか、そう思うと可哀想に感じる。
?「まふゆ」
侑「え?」
ま?「朝比奈まふゆ。私の名前」
私に名前を教えてくれるあたり……さっきよりかは警戒心は薄れたのかな。
侑「天霧侑だよ。狼さん」
ま「……何で分かったの?」
名前を教えてくれたのなら、自分も名前を教えてあげるのが筋と言うもの。私がそう言うと、表情は変わっていなかったが不思議そうに首を捻り、私に聞いた。何で分かった……か
侑「それは勘……っていう奴だよ」
ま「……今、心がぽかぽかした」
侑「……え?」
狼……まふゆちゃんが言うにはどうやら記憶喪失らしい。自分の名前、狼の神《大口真神》の化身と言うことだけは覚えているがそれ以外は全くと言っていい程覚えていないらしい
気付けば何も感じることが無かったらしく、だから今抱いた感情?が不思議だそうだ。
ま「……全部見てた。侑が此処に捨てられてる所。嫌われてる……の?」
侑「うん。私は所謂デキ婚で出来た子供だから……お母さんたちは夜遅くまで遊び呆けてるし、育児放棄されてた私を助ける人はいなかったね。いっその事死ねたら良いのにね」
ま「……侑といると本当の私が見つかるかも知れない……だから死なせないし、死なないで」
まふゆちゃんの言葉に私はそう答えた。そう彼女にも言った通り私はデキ婚で出来た子供
だから親は私のことを忌み嫌っており、夜遅くまで互いに遊び呆けている。そんな親の子供と言うだけで村の人からも忌み嫌われるようになり約15年。遂に私は捨てられたのだ。
そんな自分の不憫な人生に嘲笑うかのように憐れんでいるとまふゆちゃんがそう言った。
彼女に明らかな感情はなかったが、その言葉に少しだけ救われた気がした。
侑「……ありがとう、まふゆちゃん」
ま「……何だかぽかぽかとふわふわがある」
侑「うーん……嬉しいってことなのかな?」
ま「これが嬉しい……なの?」
侑「そうかもね」
私がそう言って頭を撫でるとまふゆちゃんがそう言った。彼女の表現はイマイチ良く分からなかったが、きっと喜んでくれていると言うことだろう。都合の良い解釈だが、喜んでくれているのなら嬉しい限りだ。
ま「これからどうするの?」
侑「出られないし、どうしようね」
この森には不穏な噂がある。それは一度迷い込んでしまえば、出ることが出来ないとされる夜音と呼ばれる森だ。迷い込んでしまったのなら仕方がない。まふゆちゃんと共に森を歩くことにした。
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