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1 - 第1話「わたしの居場所」

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2026年02月18日

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第1話「わたしの居場所」
これは、

わたしとわたしの幼なじみ綾子が、まだ中学生だった頃の話。


 「おはよ、愛」

「綾、おはよ」


朝の眩しい日差しと、鳩の鳴き声。いつも通りの登校中、綾子はいつも通り隣を歩いてた。


「でさ、昨日のチカの話覚えてる?」


「あー……廊下で転んだやつ?」


「そうそれ。それでさ、確かなんだけど……2組の南條さんが関係してるらしいよ」


「関係……?」


「なんかね、2組の南條さんが穂川……だったかな、その人のこと好きだったらしくて。でも穂川には彼女がいて、その彼女がチカだった、みたいな」


「……え、あそうなんだ。えー、チカちゃんって彼氏いたんだ。」


「あ、そう。それで、嫉妬、みたいな感じ」


少し考えてから、わたしは言った。


「チカちゃんは……告られただけ、なんだよね」


「まあね」


「南條さんも……嫌なこと、あったのかもしれないけど……」


「優しすぎ」


綾子は笑った。

こういう会話、ずっとしてきた。


キーンコーンカーンコーン

「ヤバっチャイム鳴ってる!!」

「えっ!やばいやばい!」


二人で走って二人で焦る。こんな日常が大好きだった。


「はぁはぁ……、すっ、すみ、ませ……!あれ、先生は?」

「はぁ…はぁ、ちょ、綾子早いって……。え、あれ?先生は?」

二人でポカーンと立ち止まり、後ろから声がした

「こら。白崎さん、茶樹さん。遅刻ですよ。」


怒られても、綾子がいたら怖くもないし悲しくもなかった。ふたりでクスッと笑いあった。


その日のホームルーム。


「転校生を紹介します」


「転校生だって!」「えっどんな子だろ。、女の子かな?」

そんな会話をしていると、


教室に入ってきたのは、少し緊張した顔の女の子だった。


「え…えっと、は、橋本琴李です。よろしくお願いします」


「えっと……、席は…茶樹さんの隣ね。」


「え、ウチ?」


「よろしくね」


「……よろしく」


二人の声が重なった。


その日、少しだけ会話に混ざりずらくなった。

でも、すぐいつも通りに戻ると思っていた。


その日の帰り道、綾子に言われ仕方なく3人で帰ることになった。


いつもの帰り道、

「綾子ちゃんと話すの楽しい!笑」


「ウチも。琴李さんと話すの楽しい」


「…えへ、ありがとう。」


「琴李さんは、なんでこの街に越してきたの?」


「んー、家ケーキ屋さんやってて…でも、田舎だとお客さんこないじゃん?だから…都会に来たんだ!」


「へー!ケーキ屋!いいね。今日行ってみようかな…」


この時は、まだ普通だった。


「じゃあ。」


いつもなら、嫌でも家まで上がってくるのに、なんだか

寂しかった。


それから一週間くらいしてから、少しずつ変わった。


「ねえ綾子ちゃん!昨日のテレビ見た?」


「見た見た、あれやばかったよね」


「え、…なにそれ?わたしにも教えて…!」


わたしが聞くと、二人は顔を見合わせる。


「あ、えっと……」


「ごめん、話途中だった」


「……あ、そっか」


それが一度じゃなかった。


「ねえ、その話って――」


「ちょっと待って、今ここ大事だから」


「……うん」


声が、無意識に小さくなる。

割り込んでる気がして、怖くなる。


それから一ヶ月。


昼休み。


「それでさ!」


「やば、それ最悪じゃん」


二人は同時に話して、同時に笑う。


わたしは、いつ話せばいいか分からない。


今?

でも、さっき遮っちゃったし。

次?

もう話題変わってる。


結局、何も言えない。


「愛、どうしたの?」


「……なんでもない」


帰り道も同じ。


「ねえ聞いてよ!」


「うんうん」


二人の会話は、止まらない。


わたしは少し後ろを歩く。


ある日、ふと気づいた。

三人で帰ってるのに、

わたし、誰とも話してない。


その日も、家に帰る。


「おかえり」


「ただいま」


部屋でなんとなくスマホを見る。

綾子との、思い出写真。


笑ってる。

ちゃんと、隣にいる。


胸が、少しだけ苦しくなる。


夜ご飯の時間


「……ごめん、ちょっと残す」


「無理しないでいいよ」


「あとで一緒にテレビ見る?」


「……今日はいい」


部屋に戻る。


布団に座った瞬間、

急に、涙が出た。


「……え」


理由が分からない。


悲しいとも、寂しいとも、はっきりしない。

ただ、気づいたら、涙が落ちてた。


「……なんで」


分からないまま、

涙だけが、静かに増えていった。


――これは、

わたしが少しずつ、話せなくなっていった頃の話。



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