コメント
3件

「…あ〜映画とか?」
「映画、良いね」
「じゃあまた明日」
神門に手を振って四季は祭りの明かりを背にした。
「また、明日か…」
空になったラムネの瓶を大事そうに握りしめて、へへと四季は笑う。
友達になれるかな。
四季は鬼という事も、父親の仇も忘れ淡い幸せに身を浸した。
「すみません遅くなりました」
彼女と別れてから直属の上司に呼ばれた鉄橋に駆けつける。普段見慣れた白いスーツでは無く黒いコートを着ている上司。ー 桃巌深夜が振り向いた。
「おい、テメェどこほっつき歩いていやがった」
高圧的に語る上司の声に返答し軽く謝りながらも神門は、常々この人とは反りが合わないなぁ…と考える。
ナツちゃん…ナツ君は物腰柔らかで丁寧な子だったけど、気分が上がると話し方も変わってて見てて楽しかったな…
「ーーー副隊長としての自覚を持て!」
意識を少し飛ばしてしまっていたことに気付きハッとした神門に目もくれず深夜は説教をしていた。
「すみません、気をつけます」
少し眉を下げて返せば深夜は怒りが多少収まったようで思考に耽っているようだった。その横顔を一瞥した後に神門は手に残っている射的の時の興奮を見つめた。
怒られてしまった…まぁ僕が悪いのだけれど…。
それにしても今日は良い巡り合わせだったなぁ…ナツ君、友達になれそうな気がする…
あぁ明日が待ち遠しい。
瞼を少し閉じれば、彼女の横顔が浮かぶ。
赤い提灯の光に照らされながらも、睫毛や髪の毛によって落とされた影。深い深い青の髪を赤い簪で一纏めにしているおかげでシャープな顎とシャツに隠れた首筋が妙に妖艶に見えた。
手を伸ばして触れて見たいと思ったけれども、同時にその儚さに接した途端に溶けて消えてしまうような感覚に見舞われた。
大人びていながらも、ふとした仕草に幼さを感じさせるその彼女に触れたいと願う人はきっと多いのだろう。
きっと愛されて育ってきたのだろう。普通に学校に行って、同級生と会話をして授業を受け。家に帰る。
両親は優しく包み込んでくれているのではないか。
射的屋の前にいた子供に接する対応から見ても兄弟がいてもおかしくは無い。
そう神門は思った。当たり前の如く思い込んでしまった。
けれども、ふと思った。
彼女はなぜ何者かから身を守るように『俺』と話すのだろうか…と。
一瞬だけ見えた憂いを浮かべた表情はなんだったのか…と。
ー翌日
神門と会えるのが楽しみなのか、四季は無意識に待ち合わせしていた時間よりも早く映画館前に着いていた。
映画館ベンチに座りながら足を遊ばせていれば、何やら下卑た笑みを浮かながら四季を指を指し話している集団が目に付く。
本当に暇な奴らなんだろうな…こんな女紛いの奴を見て何が楽しいんだろうか。と四季は冷めた目で集団を横目に微笑した。
ふと遠くでヒュという短い呼吸音のような効果音が聞こえたと思えば、昨日見たような黒いコートが視界を隠した。
「!!あぁ神門!」
「ナツ君早かったね」
神門もはえーよ。と言いながらニッと笑うナツ君。
遠くでナツ君をジッと見つめていた集団が何故か苛立たしく思えて、冷たく睨めば蜘蛛の子を散らしたようにそそくさと帰っていった。
「?何してんだ神門??」
「いや、なんでもないよ」
そう答えたは良いものの実際神門はどうして自分があの集団を睨んだのかも、苛立ちを覚えたのかもわからなかった。
今思えば酷なことをしてしまったのだろうか…と思うほどに。
「!お、これとかどう??」
ナツ君が指差した広告は如何にもなガンアクションの広告だった。
「うん、良いと思う。時間も合うし」
「良かった神門もこういうの好きなんかなってさっきから思ってたんだ」
楽しそうに笑っているナツ君は早くチケットを買おうと裾を引っ張った。
「神門は何買う?」
「カフェラテかな、ナツ君は?」
店員に差し出されたメニューと睨めっこしながらナツ君は首を傾げている。
「…最近初めてメロンソーダってのを飲んだばっかりだし、映画に何が良いのかわかんないや…」
ふと落とされた一言につい目を見開いた。最近?初めて?
どんな生活を送ってきたのだろうか…酷く質素な家なのだろうか、それとも普段家では紅茶を飲んでいるような家なのだろうか。
神門は思い込んでいた昨日の記憶を吹っ飛ばしてしまおうかと思った。
「んーじゃあ、定番にコーラとかで良いんじゃないかな?」
「…じゃあそうする」
ニコニコと注文を待っていた店員に、カフェラテとコーラを頼んだ。
「今ならカップル割で、チケット代が半額になりますが、いかがなさいますか?」
「「カップル割??」」
「はい、手を繋ぐかハグをしていただくかのどちらかでカップル割の対象となります」
神門が説明を詳しく聞けば、男女の関係問わず条件のどちらかを果たす事が出来ればチケット代を半額にするというシステムだった。その上今日は最終日だというので多くの人に声をかけているとのこと。
「ん〜じゃあ手繋ぐか?神門」
「えっ、ナツ君は逆に良いの?僕と手繋いで」
「神門が良いなら別に俺はどっちでも良いぞ?」
そう聞いた神門は差し出された手を恐る恐る手をのばした。
店員はその行動を確認して会計を出した。ついでに、もどかしくて可愛いかよと思いながら。
またナンパじみたことを書こうとしてしまったので未遂にしておきました。
ナンパから守る攻めが好きです。
ヘタレも好きですけれども…
月曜更新とか言っておきながら既に火曜日じゃねーかって話ですよね…すみません。来週から期末テストがあっててんやわんやしている途中なんです…
まぁ、そんな中でも一昨日桃源暗鬼の17から最新刊まで一気買いしたんですけどね…未だ一冊も読めてないですね…時間が足りない…
良い加減真澄隊長とか皇后崎君達と絡めたい…