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はぁ、っ … はぁ、っ …
赤黒い液体
時間遡行群からは出るはずの無いものだった。
傷ひとつない己の身体。
白い服に目立つ鮮血。
気づいた時には持っていたつもりだった刀も
びちゃりと血だらけの床に落ちた。
「 …、は、なんだ…? 」
思わず口角が上がる。
戻そうとしても口が震え戻っていかない。
力が入らない、所謂「しょっく」というものだった。
「 …、ここは、主の部屋…? 」
暗い部屋では、光が照らされている部分しかよく見えなかった。
でも電気をつけることはなかった。
何故か手足が震えて動かない、可笑しいんだ。
主は、… 逃げたか?
ならば安心だ、記憶がなくとも僕の手柄だ。
やっと足の震えも落ち着いてきて、
壁に手を置けば歩けるようになった。
電気をつけるために釦を探す
安心して足を前へ前へ進める。
何か、柔らかいモノを踏んだ。
咄嗟に靴を離すと靴からは、くちゃっと音がした。
怪我人を踏んだか?
刀を取り、刃を出す。
刃を出して警戒体制を取る。
だが、僕の刀は真っ赤に染まっていた。
光が当たっているからわかる。
明らかに赤黒い、血のようにベタベタとした。
いや、これは血だ。
焦り襖を勢いよく開ける。
部屋に光が入る。
「 あるじ、……? 」
「 ッ、主、どうした! 」
返事はある訳がなかった。
今自覚した。
主は僕が殺した。
地に塗れた手足で廊下を歩いたり、襖を掴んで閉じようとしたり
情緒は不安定、僕は冷や汗を流す。
血を廻すぎて頭がくらくらする。
痛い、あたまがいたい。
吐き気がする、なにか胃の中から込み上げてくるような。
だけどなにも出てこない、いっそう気分は悪くなった。
主の青白い顔を眺める。
口元を押さえ、細目で視界を狭くし、眺める。
何故だか、主人の首元を押さえていた僕の手は
主の首の皮を破る勢いで強く押さえた。
なぜだ、もっと力を弱くしたいのにずっと力は強いばかり。
なんだ、イライラする。
顔はいつも通りだ。
少し青白く、冷たくなっただけだ、美しい。
体型もそのまま、表情は冷たいまま。
この顔に何の文句があるんだ、一文字則宗。
『 則宗さんは、普通の人間に生まれてたら出来損ないって言われてたと思うんだ 』
『 出来損ない…? 』
『 言い方が悪いけどね。そう言う自由なところも、上から目線なところも僕は好きだよ。 』
苛っとしたんだ。
なんだ此奴は、口を開けばそんなことばかり。
出来損ない
この言葉が僕の心の中で突き刺さってた。
主人が不器用だってことはわかってたのに。
不器用にも程がある。
何を目的にそんな事を言ったのか。
意味がわからない。
僕がそんなに必要なかったか。
その翌日、任務後に主に顔を見せに行き、
その時殺した。
大きな傷は、下腹部のみ。
苛々した心を発散したくて、長い時間苦しませることにした。
でも苛々と、苛々と、心の中から消えることはなかった。