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西の空が深い赤に染まってきた頃、俺は家の前で立ち止まっていた。
今日もあいつと顔を合わせないといけない。
ふぅっ、と息を吐き出して、玄関の扉を開けた。
『…ただいま』
もちろん『おかえり』だなんて返ってくることもない。
電気もついてないリビングに、るぅとがソファで寝ていた。
ここ最近は、まじまじと顔を見ることもなかったから、なんだか変な感じがする。
近くにあった毛布をかけると、ビクッと反応した。
起こしてしまったようで、うっすらと目を開ける。
『ごめん、起こした?』
『別に、大丈夫』
『そ、ならよかった』
これだけで、俺らの会話は終わってしまう。
お互い干渉しない生活。
これが当たり前になってしまった。
だが、今日は少し違ったようで。
『…ッ待って』
『何?』
気持ちとは裏腹に出る低く、面倒くさそうな声。
『少しだけ…隣居て』
『…は?』
『?!…ごめん』
流れる沈黙が空気を重くする。
『しゃーねぇーな』
上に羽織っていた薄手のブラウスを脱ぎ、隣に座った。
隣を見れば顔を赤くしたるぅと。
珍しいな、なんて思っていると、肩にぐっと体重がのし掛かる。
え、寝た?
心配になって顔を覗き込むと、なんだか息が荒く感じられた。
まさか…
額に手を当てると、意外に熱かった。
こいつ、風邪引いてるな。
理解するまでに時間はかからなかった。
そのままゆっくり抱え、ベッドに運ぶ。
元々軽かったるぅとだが、今日はさらに軽く感じた。
とりあえず、冷えピタ?なんてものはないので、濡らしたタオルと体温計。あと起きたときに薬とご飯…汗かいてたら着替えもいるか、などなどやることが沢山あった。
るぅとは…無理しすぎなんだよ。
濡らしたタオルを隣で絞っている時、ふと思った。
こんな弱々しい体で、色々なことを抱えすぎている。
…って、無理させてんのは俺のせいか。
俺が居るから、るぅとは…
やめやめ。考えたらこっちまで頭痛くなる。
どうせ、いつか終われる。
そう願って、るぅとの頬に軽くキスし部屋を後にした。
『…キスはするんだ、笑』
『本当、そうゆうところだよ。さとみくん。』