激しい爆発音がする。吹き飛ばされないように必死に地面に這いつくばる。
少しして煙が消えると、血だらけの柚が横たわっていた。
「柚……。」
すぐに脈をはかるが、わずかしか聞こえない。傷だらけの体からは絶え間なく血が流れだしていた。
「小娘が…わしに勝てるとでも思ったのか……。」
黒鬼院が立ち上がり階段を下りてくる。血が滴る剣を握っていて、矛先は俺たちに向いている。
「本当に…全部貴方が仕組んでいたのですね…?」
「左様。下僕は失ってしまったが、わしの勝ちだ。その娘を渡してもらおうか。」
「花月は渡さない…。」
「条件がある。」
「劉磨クン…?」
「俺らと勝負しろ。もしあんたが俺らに勝つことができたら、柚も花月もくれてやる。
「ほう……決闘かね?じゃが、わし相手に5人とは少し卑怯ではないか?」
「なら……俺が1人で戦う。」
「泣かせるのう……愛する女子のために自分の命を顧みず、わしに勝負を挑むとは……。」
「花月…。」
花月のもとに行き頬を撫でる。
「花月…戦ってくるから……ここで奏たちと待っていろ。ただ……絶対俺の姿は見るな。」
「え…?」
「俺の本当の姿は見せたくない。愚かで醜悪な姿を。だから、俺がいいというまで、絶対に目を開けるな。」
「分かった。」
そういうと、花月は素直に目をつぶってくれた。
「奏…俺が戻ってくるまで花月を頼む。」
「もちろん。」
「これで本来の姿でお互い戦える。」
「若造が凄んだところで、わしに勝つことなどできんよ。」
黒鬼院が飛び掛かってくる。老人とは思えない速さ。どんなやつでも純血種は純血種ってことか……
「さすが吸血鬼協会にいただけある。大した力だ。」
わずかに目で判断できるかどうかくらいの素早い剣さばき。避けるだけでも精いっぱいで、反撃ができない。
「ふん、この程度の力でわしに歯向かおうなど……身の程知らずな。」
「この程度の力だと……?少しでもあんたが悔いて謝るなら生かしておいてやろうと思ったがそれももう終わりだ。俺らの大事な奴を何回も傷つけた恨み、受けてもらうぞ。」
意識を集中させ、拳を黒鬼院にぶつける。
「不死身と言われる吸血鬼。俺の力があんたにどれだけの傷を負わせるか分からないが、これが最後のチャンスだ。すべての罪を認め償うか、ここで死ぬか、好きなほうを選べ。」
「わしもここまでか……。お前の言う通り罪を認めよう。」
「分かった。」
後ろを振り返り花月たちの元へ行こうとしたそのとき――――――
「劉磨、後ろ!」
「死ねぇ!」
奏の言葉に振り返り、慌てて剣を抜く。俺の剣は黒鬼院の心臓を貫き、すべてを灰にした。
「最後のチャンスだって言っただろ。お前はここで死ぬ。」
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