テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
何かがおかしいと言われ
MENはここ数日、ある男の行動を凝視していた。
「ぼんじゅう〜る!ぼんじゅうるだ!どうもでーす!」
「はい……おつです、おおはらです。」
そう、ぼんじゅうるだ。
『……なんか、わかんないけど、ぼんさん居なくなりそうな気がする。 』
「……」
んな馬鹿な、何を言ってるんだドズさんや。
どう見てもいつものぼんさんだ。変わらない。
変わらないはずだ……けど、なんだろな、これ、違和感?
MENはドズルの言葉が頭から離れないでいた。
で、ぼんじゅうるを観察するがわからない。
けど、これは無視してはいけないと頭のどこかで警報がなっている。
「わっかんねぇーよ」
ボソリと呟いた言葉。頭を強く掻きむしる。
でもあのドズルさんが言ってるんだ、ただ事ではない。
そしてまた冒頭にもどる。
何日これを繰り返した?
何も分からないが何か違和感がある。
そんな事は考えながら今日も1日が始まる。
今日の配信は、ドズル社の仕事部屋から5人でのんびりとお茶でも飲みながら、まったりマイクラ建築となっている。
コメントを読みながらのんびりとする回……
……そう、のんびりとするはずだったんだ。
『ぼんじゅうるとかいう奴はまだいんの?うざっ』
ドキッ
ドズルとMENは流れていくひとつのコメントが目に入る。
それはほんの数秒程の出来事だった、すぐにそのコメントは流れていき見えなくなる。しかし、MENとドズルは見逃さなかった。
そのコメントが流れた瞬間、ぼんじゅうるの手が、表情がピクリと反応した。
本当に少しだったが見逃さなかった。
それは、生々しく刻まれていた。
そして、また少しして……
『ぼんじゅうる〜消えてよ〜邪魔〜他の4人でプレイして欲しい』
流れていくコメント、そして消える、視聴者もすぐに流れるコメントに反応はなく自分のコメントを打ち込む。
『皆さんこんばんは〜』
『初見です』
『今日も来ましたー!』
明るいコメントでアンチコメントが上へ上へ消えていく。
しかし、ぼんじゅうるの目にはそれのみが写り、他のコメントが読めなくなる。
上へ消えてなくなったコメントが頭の中で木霊する。
表情はにこやかに、声はハキハキと、手は忙しなく、
「みなさーん!ぼんじゅうるがここを建てました!ここですよ!すごいでしょー?!」
と配信を続ける。
しかし、あの2人は決して見逃さなかった。
あのふたつのコメントで確信した。
そして、無いはずのものがある事に困惑した。
ぼんじゅうるは、今とても危ない状態であると。
誰かが息を吹きかけると折れるのではないかと思われる程、弱っていたのだ。
明るい、いつもと変わらない、でも、思考が読めない。
(それは、そうだろ!!何してんだよ俺!相手は元俳優だぞ!)
(隠す事も偽る事もお手の物じゃねーかよ!くそが!)
ドズルとMENはグッと奥歯を噛み締めて画面の中で流れるコメントを睨みつけた。
完璧に隠す、完璧に成り代わる。
そう完璧が故の違和感。
綺麗すぎるのだ、綺麗にぼんじゅうるなのだ。
だから違和感がある。
長い付き合いのドズルはそれにすぐに気づけた。
そして、今日の配信で疑惑は確信へーーーーー……
「皆さん、すみません、あと少しお時間残ってますが本日はここまでとしたいと思います!」
「えーー?!なんでー?もう少ししたかったー!」
「んーー?どうしたー?」
ドズルのハキハキとした声が部屋に響く、おらふくんとおんりーはいきなりの事でなんでなんでと疑問の声を出す。
MENはそんな2人をよそにぼんじゅうるを見つめる。
「え、ドズルさんどしたの??」
(どしたの、じゃねーよ。)
MENは心の中で悪態をつく。
ぼんじゅうるは、普段と変わらず終了の挨拶をするドズルに首を傾げる。
「えーとですね、とても言いにくいのですが。今日は少し別件を進めようと思いまして、建築もキリがいいですし終了です!」
「え!?別件?!なになになにー!?聞いてないんだけどー!」
ドズルの飄々とした声色とぼんじゅうるの「なにそれ!サプライズ?!え?また鬼畜企画されんの!?」とワタワタした声。
おんりーとおらふくんもそれに乗り「やだー!建築したいー!」「また僕らに黙って〜!何させるのさ!」と騒ぎ立てる。
「実はこのおおはらMENも知ってるんですが、、それはまた次の動画で、という事で!」
ドズルに助け舟を出すMEN。
それにまた、3人は「うわー!」とか「絶対やばい企画だ!」と騒ぐ。
『たのしみー!』
『またか!wwwみんなどんまいw』
『無理せずに!程々にね〜』
コメント欄もザワザワと先程の倍の速度で流れ始める。
そして、配信が終了となった。
何も知らないスタッフはドズルに聞かなければと勢いよく部屋に突撃する。
「あの!何事ですか!?サプライズ企画なんてこっちは何も聞いてな……っ」
「ぼんさん!!!休もう!!!!」
配信が終了した瞬間、ドズルは今までで一番の声を上げぼんじゅうるの両肩を掴んでいた。
ぼんじゅうるは「え?」と顔を引き攣らせてドズルを見つめ返す。
2人の間に流れる空気にスタッフはMENを見る。
MENは、後で話すから今は出てくださいと部屋からスタッフを追い出した。
「え、あの、話が見えませんが?どしたの?ドズルさん、MEN?」
ハハハッとまた茶化そうとするぼんじゅうるにすかさず、
「笑うなよ!!!あんた今、やばい事になってるの分からないのか!?」
ビクッ!
ぼんじゅうるはドズルに怒鳴られ肩を揺らす。
嘘だろ、何言ってんの?いやいや分からないはずだ、気づかれてないはずだ。
内心ドキドキのぼんじゅうるは表情は変わらずヘラヘラとする。
そんな二人の間にMENのため息と少し苛立った声が走る。
「……ドズルさん、やめましょ、そのやり方は逆効果ですよ。」
「っ〜〜でも!!!!!」
「ドズルさん!」
MENは首を振りながらドズルの肩に手を置く。
それに苦虫を噛み締めたような表情で床をみるドズル。
「あ、あの2人は何を怒ってるの?」
「ぼんさん、ポカーンとしてますよ?」
おらふくんとおんりーは状況をつかめず3人をキョロキョロ見つめる。
ふーっと息を吐き、少しの間の後ドズルはハッキリと話した。
「この人、鬱になりかけてる。いや、もう、なってるかな。違う?ぼんさん……」
「「え!?」」
ドズルの言葉におんりーとおらふくんは勢いよくぼんじゅうるを見た。
「しかも、寝てないでしょ、サングラスで見えにくいけどクマすごいっすよ、」
MENは真剣な表情でぼんじゅうるを見つめる。
「……飯も食べてねぇ、最近ピタリとXの投稿もないし、誰に聞いてもぼんさんとご飯に行った人いない。前はよく外食してたのに、」
ドズルは苦しそうにぼんじゅうるに語りかける。
「ぼんさん、、休もう、、このままじゃ、本当に壊れるよ」
ぼんじゅうるは、皆を見つめる。
(こんなおじさんがそんなんになって面倒臭いよね?
このぼんじゅうるが?って思ったよね?)
とへへっと苦笑いをする。
「やー、そうなんかな?自分的には全然大丈夫だし、なーにも変わってないんだけどさ?なんかおかしかった?」
ふふふっと笑うぼんじゅうるにドズルは泣きそうな声で叫んだ。
「完璧すぎて気持ち悪い!1枚透明な膜張ってるみたいで!
こっちは元医療系だぞ!舐めんな!!」
なんで隠す!仲間じゃないのか?なんで、ここまで気づかなかった!まさかとは思っていた、でも確信がなかった、けど、、見えてしまった!
「あんたのこの!手首!なんだよ!!」
「っ!?!」
ドズルが勢いよくぼんじゅうるの右手の袖を捲し上げる。
「っ!な、なんで!!」
「ぼんさん、、え、なんで」
そこには真新しい赤い線が沢山ついていた。
白色の手首にはとても目立つ程、痛々しいそれはかなり上まで刻まれていた。
おらふくんと、おんりーはその傷を信じられないと嘆く。
MENは奥歯を噛み締め、目尻を抑えた。
「あんた、他にもあるでしょ。なにしてんのよ。」
どうりで最近厚着なわけだ、いつもはお決まりの半袖Tシャツなのに、可愛子ぶって萌え袖パーカーなんか着ちゃって…………まさかこれ隠すためとはね、はははっ
MENは腸が煮えくり返る気持ちを抑えぼんじゅうるのTシャツのお腹の部分を掴み、捲り上げる。
「っ!いっ!な、なにその痣?!」
「ぼんさん何してんのさ!!あんた!」
おらふくんは痛々しい痣の数に目を手で覆いながら叫ぶ。
おんりーはぼんじゅうるに疑問と怒りをぶつける。
「はははっ、俺が聞きてぇーよ。」
(最悪だ、なんだよ、これ、どこでバレた? )
前髪をかきあげ、はぁーとため息を着いたぼんじゅうるはこれまたにこやかに完璧な笑顔で4人を見つめ言葉を発した。
「本当になんでもねぇーのよ、ただ少し食欲ないだけだし、体はなんか気づいたらこんなになってるけど、本当に、なんでもないのよ」
はははっと笑いながらドズルとMENから距離を置くように後退る。
「……休もう、ぼんさん、お願いだよ。」
おんりーもこのままではヤバいと感じたのかドズルの隣に立ちぼんじゅうるを説得する。
「大丈夫だって」
「……ぼんさん、」
おらふくんもドズル達と足並みを揃えた。
「……ぼんさん、お願いだ、休んでくれ」
MENは泣きそうな顔をして懇願する。
「はははっ皆、怖いよ、どうしたのさ大丈夫だって、、ん?それか、俺これ遠回しにクビ宣言?それならまぁ、しょうがないからお暇いただきますが……」
「ちがう!!ぼんさんにいつまでもいて欲しいから!今は休んで欲しいんだよ!ぼんさんの為なんだ!」
『大きなお世話なんだよ!!!!』
ドズルの声に多い被せるように、ぼんじゅうるが怒鳴る。
今まで大きな反抗もなく、ドズルに歯向かった事も無いぼんじゅうるが、初めて怒鳴ったのだ。
ビリビリと室内が揺れる。
それほどにぼんじゅうるの声は、怒りは背筋を凍らせた。
「っ……」
メンバーはここに来て、ぼんじゅうるは自分たちより遥かに年上で、今まで大人な対応をしていてくれたのだと、そんなぼんじゅうるに甘えて無茶を沢山通していたと感じてしまった。
「大きなお世話なんだよ、、お前らはいいよ、若さもセンスも何してもトップ走って行けんだからよ…」
「……ぼ、ぼんさんだってすごいじゃないですか、その歳でここまで頑張ってこんなにファンもいて……」
「はっ!よく言うわ!」
おんりーのその一言で、ぼんじゅうるは腹の底で仕舞い込んでいたどす黒い想いをぶつけてしまう。
「登録者数も、出した動画の再生数も、ファンの数も、何しても安心してそこを走って行けるから、そんなことが言えんだよ。」
「えっ……」
ダメだ、そんなこと、、言ってはダメだ、本当は思ってない、でも口が、声が止まらない。
「君たちが休んで戻ってきて、それを待ってくれる人は沢山いる。でも、でも!俺はどうだ?少し休むとその分、離れていくはずだ!!!帰ってきた時には誰もいねぇ!この歳で、先なんて真っ暗で、後ろも前もわかんねぇ道、我武者羅に走っていかないと落ちんだよ!止まっちまったら……そうなったら俺に何が残る!?!?なにも、何も残らねぇ!!」
ドズルは目を見開きポロポロと涙を流した。
「……ごめん、ぼんさん、……ほ、本当に、ごめん、そんなに追い詰めてたのか、本当に…ごめん、」
ぼんじゅうるは息を荒らげながら、謝るドズルを睨む。
「社長さんよ、俺をクビにするなら今だぞ。それが出来ないなら、俺は今まで通り仕事をする。」
ドズルは、何も言わない、言えない。
他のメンバーも何も言わなかった。
「頼む、俺のことは気にしないでくれ。ほっといて。そうすれば今まで通りのドズル社だから。」
少し声が震えたかもしれない、でも大丈夫なはず。
(まだ俺は出来るんだ、足を止めたら……何も無くなる。)
ぼんじゅうるは、ふらつく身体で部屋を後にする。
後ろでドズルさんがすごい声で叫んでる、そして
ドアがガチャガチャ鳴って誰かがバタバタ追いかけてくる音。
大声で泣いてるのはおらふくんかな、
すごい音で何かが壊れてる音と怒鳴り合う声。
MENが暴れてるのかな……、皆、ごめん……
クンッと服の袖が引かれる。
振り向くと、息を切らし嗚咽混じりに泣きじゃくるおんりーがいた。
「どっ、どご、いぐんでずが!!まだ!話はっ!終わっでません!!」
おんりーの珍しい表情を見ても今は何も感じない。
とにかくここから離れたい。その一心でその手を払い除けた。
パシっ!
「えっ」
「ごめんね、色々酷いこと言っちゃって。怖かったよね……?今後は距離置いて仕事するから。」
こんなおじさんにいつも迷惑かけられて大変だったでしょう、本当にごめんよ。
おんりーの大きな瞳からポロポロと流れる涙を見て、(君の周りの人は、泣く君を必ず慰めて、一緒にいてくれる、、俺が君のように泣いても返ってくる言葉はマイナスばかりだ)とぼんじゅうるは少し冷めたようにため息をついた。
そして、二度と振り返らず帰路についた。
.
コメント
2件


リクエスト!では無いのですが、この続きを渇望しています...!!!!!