テラーノベル
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第10話「幕が下りた、その先で」
ステージの照明が落ちた瞬間、
足の力が、すっと抜けた。
「……っ」
視界が揺れて、らんの体が前に傾く。
「らん!!」
なつといるまが、ほぼ同時に支えた。
「……は……っ」
息が、うまく吸えない。
胸がぎゅうっと縮んで、喉が鳴る。
「……っ、ひ……」
嗚咽が、抑えきれず漏れた。
「楽屋、今すぐ!」
すちが、はっきり言う。
ステージ袖を抜けた瞬間、
歓声が遠くなっていく。
「……は……は……」
肩が大きく上下する。
呼吸が速すぎて、頭がぼうっとする。
「らんくん、座ろ」
こさめが、椅子に誘導する。
座った途端、
らんは前屈みになった。
「……っ」
口元を押さえる。
喉の奥が、きゅっと縮む。
「……え……」
小さく、吐き気を堪える音。
「大丈夫、大丈夫」
みことが、背中をさすった。
「今は、吐かなくていい。呼吸、呼吸」
「……っ、は……」
でも、涙が止まらない。
「……ごめ……」
嗚咽混じりの声。
「……迷惑……」
「違う!」
なつが、即座に否定した。
「迷惑なわけあるか」
少し、声が震えている。
「……よく……やった……」
その一言で、
らんの中の何かが完全に切れた。
「……っ、ひ……っ」
肩が大きく揺れ、
声を押し殺しても、嗚咽が溢れる。
「……怖かった……」
初めて、はっきり言った。
「……途中……息できなくて……」
「知ってる」
いるまが、短く答える。
「でも、立ってた」
少し間を置いて、
「……一人じゃなかった」
らんは、顔を上げられなかった。
涙が、止まらない。
「……は……」
呼吸が、少しずつ落ち着いてくる。
「……らんらん」
すちが、静かに言う。
「今日は、ここまで」
「もう、十分」
その言葉に、胸がじん、と熱くなる。
「……うん……」
力のない返事。
「……もう……動けない……」
「動かなくていい」
こさめが、すぐ答えた。
「こさめたちがここに いる」
その一言で、
らんの目から、また涙が落ちた。
楽屋の隅で、
らんは小さく丸くなりながら、息を整える。
——歌えた。
——ちゃんと、最後まで立てた。
体は限界で、
胸はまだ苦しい。
それでも。
(……今日だけは……)
薄く目を閉じながら、思う。
(……生きて、ここにいた……)
外では、まだ余韻の拍手が続いていた。
その音が、
らんを静かに包んでいた。
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