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2000♡失礼します。 みんなの優しさがもうなんか泣けました(語彙力)
第11話「音が消えたあと」
夜。
会場を出て、車のドアが静かに閉まる。
外の世界は、驚くほど静かだった。
「……」
誰も、すぐには喋らない。
エンジン音だけが、一定のリズムで続く。
後部座席で、らんはシートにもたれていた。
さっきまでの光が、まだ瞼の裏に残っている。
「……は……」
小さく息を吐く。
胸はまだ重いけど、さっきの嵐みたいな苦しさは引いていた。
「らん」
助手席から、なつが振り返る。
「今、どんな感じだ?」
「……ちょっと……疲れた」
正直な答えだった。
「……でも……」
言葉を探して、少し間が空く。
「……幸せだった」
その一言に、なつは小さく笑った。
「そっか」
信号で車が止まる。
「……らんらん」
後ろから、みことの声。
「無理してない?」
「……してた」
素直に答えると、少しだけ胸が楽になる。
「……でも……」
らんは、膝の上で指を絡めた。
「……みんながいたから……」
それ以上、言えなかった。
「らんくん」
こさめが、隣から顔を覗く。
「今日さ」
一拍置いて、
「ちゃんと、すごかったよ」
その言葉に、喉がきゅっと鳴る。
「……ありがと……」
声が、少し掠れた。
「……ひっ……」
短い嗚咽が、思わず漏れる。
「……まだ……」
胸を押さえる。
「……終わったって……実感なくて……」
「いいんだよ」
すちが、静かに言った。
「今は、何も整理しなくて」
「……ただ……」
いるまが、前を向いたまま続ける。
「生きて帰る」
短い言葉だったけど、重かった。
車は、宿の前に止まる。
部屋に入ると、らんはベッドに腰を下ろした。
そのまま、動けなくなる。
「……は……」
深く息を吐いた瞬間、
緊張が一気に抜けた。
「……っ」
目の奥が、熱くなる。
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「……ひ……」
嗚咽が、小さく零れた。
「……やっと……」
誰に向けた言葉か分からないまま、呟く。
「……やっと……終わった……」
なつが、そっとドアのそばで言う。
「俺たち、隣の部屋いる」
「何かあったら、すぐ呼べ」
「……うん……」
らんは、ベッドに横になった。
天井を見上げる。
白くて、静かで、何もない。
(……明日も……)
そう考えて、少しだけ不安になる。
でも同時に、
今日を越えたという事実が、確かに胸にあった。
「……は……」
呼吸は、穏やかだった。
「……ありがとう……」
小さく呟いて、目を閉じる。
音が消えた夜は、
らんを責めることも、急かすこともなかった。
ただ、
生きている時間だけが、静かに流れていた。
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