人里。ごくたまに迷い込んでくる人間たちが住む場所。妖怪の山からは、とても遠い場所にある。
「どうする?逃げる?私たちここにいたらまずくない?」
「まあ彩はやばいだろうけど…あ!」
「?」
「瞬間移動魔法!」
「あぁー。わかった」
フッ
彩の瞬間移動魔法で、3人は元いた場所…山の山頂に着いた。
「琴葉ー?里奈ー?鞠ー?誰もいないわね」
そこには、桜が舞っているだけだった。誰もいない。気配もしない。
「ここどこぉー!」
一方、里奈、琴葉、鞠の3人は、幻覚から抜け出し、山のふもとにいた。
「ここから山頂まで行くのは…」
「時間がかかりますねー」
ここから山頂までは、飛べば一瞬だが、歩くとなると、一週間以上かかる。
「瞬間移動魔法、私使えますよー」
「えっ!」
フッ
「琴葉!」
「お兄ちゃん!」
山吹兄妹が再会を果たした。無事、6人揃った。
「よくここまできましたねぇ。それだけは褒めてあげる」
「誰っ!?」
いつのまにか、桜の木に、一人の妖怪が座っていた。
「私は夢星ララ。人里の占い師ですわ。でも…どうして私の幻覚から抜け出せたの?いままで誰一人この魔法を破ったものはいないのに」
「私よ。私、あなたと違って長くを生きているの。これくらい簡単よ」
「…ふん。そうね…あなた…彩?知っているわ。直接会うのは初めてだけれど」
「…」
ララが彩を睨む。反対に、彩はララのことを面白そうに見つめている。
「ちょっと!そっちの喧嘩は後してくんない!?そろそろステージの準備もできたしぃ!」
もう一人、妖怪がいた。彼女はピンク色の髪に、アイドル衣装を身につけている。
「あっ!あんたね!人間のくせにこの苺愛寿さまのマイクを触ったの!」
「え?あなたのだったの?あ…ごめんなさい…」
「里奈!あんなやつに謝ることないって!名前書いときゃよかったじゃん!」
「確かに。あんなところに置いてあるし」
「俺もそう思う」
「私も同感ね」
みんなが里奈の味方になっていた。愛寿は、瞳をうるうるさせ、子供のようにしている。
「どうしてみんな私をいじめるのぉ!もぉ!許さないーっっ!」
愛寿がマイクを握りしめた。
「私の歌を聞きなさいっ!」
「いやまずはステージ作んなきゃ!歌うのはまだガマン!」
「はぁ!?歌さえあればどうでもいいでしょっ!」
「なんですってぇ!」
二人は喧嘩している。
「今のうちに逃げる?」
「そうするか」
「ちょっとちょっと待ってぇー!私と勝負しなさいっ!歌はいいから!あんたたちが勝ったら見逃してあげるわ!」
「でも、6対2はさすがに、ですよね?」
「じゃあ私が適当に選ぶ!そこの人間の子と、チビ!」
「誰がチビよ!」
「ふん!やるわよっ!他の奴らは下がってなさい!」
こうして、なにかが変な戦いが始まった…
「でも私、ほぼなにもできないし…能力借りないと…」
「それは反則でしょ!人間!」
「じゃあ私がまとめて片付けてようかしら?それでもいい?」
「別にいいわよ?また幻覚に閉じ込めてあげるわ!」
「面白いわね。最近の妖怪ったら」
相手は二人の妖怪、一人は幻覚使い…だとしても、生きている時間が違う彩に勝つのは、とても難しい。
さぁ、この勝負、どうなるのか…
〈続く〉