『班長』
「五条か」
『班長もヒロの後つけてるの?』
「もってことは五条もか」
『うん。ヒロが1人で動く頃だと思って』
「何かあんのか?」
『ヒロが話さないなら私からは何も言えないな』
「そうか…」
『着いたね』
「バイクショップか?」
『ヒロのとこに行こう』
班長はヒロの肩に手を置く。
「悪いがつけさせてもらったぜ…お前が尋常じゃねえ顔で出かけてったから…」
「伊達班長!?」
『私もいるよー』
「セリ!?」
「何を調べにここへ来たかは知らねえが…言いたくなきゃ言わなくても構わんよ…俺はそばで見てるだけ…邪魔はしねえから…たまーに独り言を言っちゃうかもしれんがな…」
『私も邪魔しないよー。ヒロを1人にしたくなかっただけだし』
「…ありがとう」
「あんたもしつこいねえ…お客さんの個人情報は教えられないって言っただろ?」
「ゴブレットのタトゥーを入れたその男性に会わせてくれるだけでいいんです!」
やはり店員とヒロの押し問答だ。
「それって入江さんの事かねえ?」
「え?」
「あんたクリーニング業者の…」
声をかけてきたのは近所のクリーニング店のおじさんだ。
「困りますよ外守さん!」
「大丈夫!警察官になろうって兄さん達だから…この前もコンビニで助けてくれたし…」
「どうも!」
「その入江って人…どんな方なんですか?」
「無口な金物屋さんだよ…この前も町内会の温泉旅行で一緒だったけど…」
「写真とかありますか?」
「入江さん、写真嫌いだからなあ…」
『団体で旅行なら普通撮ったりするよねー』
「集合写真…」
「そー言えば撮った撮った!」
「ほ、本当ですか?」
「ほら!これこれ!この黒いタンクトップ着てるのが入江さんだよ…でも、何でタトゥーを入れてる人を捜してるんだい?今時はタトゥーを入れてる人なんてザラにいるよ?店員さんの首の後ろには蠍のタトゥーが入ってるし…私も二の腕に観音様を…」
「いや…俺が昔見たのは…肩口にゴブレットが入った…」
ガゴッ
何か大きな音が鳴る。
「な!?」
「何だありゃ!?」
大型トラックが軽自動車を引きずってゆっくりと走っている。
『どうしました?』
「ブレーキとアクセルを踏み間違えてトラックに追突したら…バンパーが挟まってしまって…」
「それに気付かずトラックは発進したってわけか…」
「やばいよセリ!班長!運転手が病気か何かで気を失って…」
『スピードが上がってる』
「アクセルを踏んだまま気絶したのか!!」
私は軽自動車のボンネットに乗る。
「セリ!?何するつもり?!」
『どうにかバンパーを外す。2人は他のこと頼んだ』
私はボンネットを開けてもらってバンパーを外そうと試みる。工具がないと駄目か。しょうがない術式を使うか。私は無下限を捻り上げながら壊さないようボルトを外していく。
「よお大将!待たせたな…」
fdを運転した萩原、助手席に松田、リアにゼロが乗って登場した。
「いいのか?入校者の車の運転は禁止されてんのに…」
「あん?エンジン音がうるさくて聞こえねえなあ…てかセリ!お前は何してんだ!」
『バンパーどうにか外してる』
「工具無しでか?!」
『辛いから工具持ってんなら投げて』
松田と会話をしている間にfdをトラックにぶつけて止めようとしているが質量の違いから止まらない。私は術式で丁寧にボルトを外していく。するとfdが空を舞う。飛んだfdから松田とゼロが降ってきた。そして松田が私の隣に、ゼロがトラックの方へ向かった。
「どうやって工具無しでここまでやったんだセリ!」
『企業秘密。いいからあとは頼んだ』
「おう!」
松田が順調に外していく。
「よーし!バンパーの内側のクリップは全て外した!サイドブレーキだー!目一杯引いてバンパーを引きちぎれ!!」
キキィィ
私たちが対応していた車は無事止まった。しかし、前方、道が途切れている。
「アクセルだ!アクセルしかねえ…踏めえゼロ!!」
fdとトラックが飛ぶ。fdは届いたがトラックは道にぶつかり横転する。
「おい!?大丈夫か!?ぜ…」
グーサインをしたゼロがいた。私達はみんなグーサインをする。
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