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※注意※
・本作はwrwrd様の御名前をお借りした二次創作です。御本人様とは一切関係がありません。
・スクショ、拡散等はお止め下さい。
・エセ関西弁。
・色々やばい話なので正気に戻ったら前触れなく消す予定です。
※本作に含まれる要素
バリバリの死ネタ、バリバリの軍パロ、grさんの骨を食べるemさん、ちょいグロ、「愛してる」まで述べているemさん(友愛によるもの)、grさんにクソデカ感情を抱くemさん、骨噛みのシーンだけ書きたかったためその他が雑
本当になんでも114514の方のみどうぞ↓↓↓
骨噛み
「私が死んだら、骨はお前が食べてほしい」
そう告げた時のあの赤い双眸を、私は今でも鮮明に覚えている。あの時、男の赤眼は確かに私を捉えていた。故にその酷い冗談の宛先が私であると、確信せざるを得なかった。
私はあの時、どんな顔をしていただろうか。
「⋯なぜ?私の胃の中なんて、あの世に比べればずっと窮屈でつまらないですよ」
焦りを悟られぬようわざと冗談めかしく返した。顔の筋肉が硬い、笑顔にはなれていないだろう。それでも努めて穏やかに返した。
しかし、そんな私の努力や気遣いを軽んじるかの様に、彼は、グルッペン・ヒューラーは口元を綻ばせて言った。
「だってお前に食われれば、この国を動かす脳味噌の糧になれる訳だろう?最期までこの国に貢献できるなんて素晴らしいじゃないか」
その微笑が、堪らなく憎かった。自己愛の欠片もなく、ただ国と理想のために燃え尽きようとする貴方が、憎らしかった。私よりもずっと、狂気とも呼べる自己犠牲を抱えて生きる貴方が。
貴方は、私の怒りには一生気付かないのだろう。いや、気付いたとしても受け止める気など端からないのだろう。貴方はいつも一人で先立つのだから。
「⋯私にカニバリストの気はありません。そんなことは死んでもしない」
努めて平坦に返したが、それでも言葉の節々から怒りが漏れ出ていたかもしれない。
私の言葉を聞いた貴方は僅かに目を見開き、驚いた様な表情を浮かべた。だがそれも一瞬のことで、またすぐにあの胡散臭い笑みを浮かべて言った。
「⋯はは、まぁ。あくまでも願望を言っただけだ。そうしろとは言わん」
「命令されてもしませんよ、そんなこと。正気の沙汰じゃない」
──今思えば、これは貴方なりの遺言だったのかもしれない。
けれど、半分冗談で半分本気の様な、どこまでも軽薄で演技臭い貴方の真意は、結局最期まで分からなかった。
グルッペン・ヒューラーが死んだ。
軍神であった彼らしい、戦場での死だった。
どれ程の地位についても尚前線で指揮を執っていた彼は、或る日敵砲に飲み込まれ、呆気なくその生涯を終えた。神だ悪魔だと数多の国民から畏怖の念を抱かれていた彼も結局は一人の人間でしかなかった事実を、彼の肉塊に近い遺体を目の当たりにしてやっと気付いた。遅すぎる気付きだった。彼は絶対に死なないと、なんの根拠もない確信と慢心があった。私だけじゃない、全国民にだ。
だが、貴方は死んだ。
小さな葬儀で遺体は燃やされ、彼は静かに骨へと還った。
内々で行われた話し合いの末、彼の遺骨は私に託された。と言うのも、グルッペンという男を土に埋めるには、彼の信者が多すぎたのだ。グルッペン・ヒューラーを神聖視している者からすれば、彼の遺骨は神様の骨だ。そうなれば折角の墓を暴かれてしまう恐れがある。ならば形だけの墓標を立て、本当に大切なものは見える所に保管しておくというのが我々の考えであった。他のメンバーも私なら適切に保管してくれるだろうと、満場一致で私に彼の遺骨の管理を任せた。
神の骨が、私に贈呈された。
「随分、小さくなりましたね」
骨壷の蓋を開ければ、そこには当然彼の遺骨が入っていた。当たり前に、白くザラザラとした骨。心のどこかで彼の骨は金で出来ていたり、虹色に輝いたりしているんじゃないかと思っていたが、いざ目の前にしてみればそれはなんて事ない普通の骨であった。
白くザラザラとしたよくある骨。けれどどうしようもなく愛おしい骨。生き急ぐ貴方を支え続けた、支柱とすら言えるもの。
貴方の骨壷へ手を伸ばし、骨片をそっと摘む。その途端、ぼろぼろと崩れてしまいそうな恐怖が指先を震わせた。貴方の中身はこんなにも脆かったのか。
震える手で、骨片を口元に運ぶ。唇に骨が触れた時、私は一瞬逡巡し、やがて覚悟を決めたように彼の遺骨を口に含んだ。
舌上にザラりとした感触が襲う。奥歯まで導いて、そっと噛む。ガリっという鈍い音が鼓膜に響く。砕ける。ひどく脆い。
嗚呼。あんなにも強かった貴方が、今はただ噛み砕けるだけの存在だなんて。心の奥では、やるせないような、しかしどこか満たされた奇妙な感情が渦巻いていた。
私にカニバリストの気は無い。もちろん人骨だって食べたくはない。けれどそれでも貴方の願いというならば、私は骨になった貴方を嚥下することだって厭わない。貴方を愛しているのだ、骨の髄まで。これ以上の愛は無いだろう。
けれど私は、この有り余る愛の一片さえも貴方に伝えることが出来なかった。貴方は高尚で、あまりにも荘厳で、どんな友愛の言の葉も、貴方の前では酷く陳腐に思えてしまった。親愛も、崇拝も、憎悪も、貴方の高潔さの前ではおしなべて下らなく思えた。貴方は私に、骨を食むことまで許してくれたというのにも関わらず。
端から受け止める気がなかったのは、私の方だった。
「⋯どうか私の糧になり続けて下さい」
それは祈りだった。貴方の願いと重ね合わせた切なる祈り。どうか常世にすら登らず、私の中で生き続けてくれという祈り。
貴方はもう居ない。だが神の骨はいずれ血となり肉となり、この脳味噌を動かす養分となるのだろう。貴方の願い通り、貴方を糧にして私がこの国を背負い続ける。それが貴方の本懐ならば、私は喜んで戦場に立とう。
再び貴方の遺骨に手を伸ばす。指先はもう震えていない。ごつごつとした骨を摘み、静かに口へ運ぶ。ザラリとした感触を歯の奥で味わう。砕けた欠片が舌の上に舞い散り、静寂の中、貴方への想いと遺骨を嚥下した。
あとがき(蛇足)
タイトルは「骨噛み」と「神様の骨」でずっと迷ってました。実は途中で没になって中途半端に終わった全く異なる話の「骨噛み」があります。そこそこ書いててもったいないので、気が向いたらあげよかな。