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何度目かの弐十展も終わり、久しぶりの実写配信。
内容は待ちに待った心霊配信!の前夜祭のようなものだ。
前回の心霊配信でもあったように、今回もみんなの呪物を送ってもらってそれをジュネさんに見て本当に呪物かどうかを判断してもらうつもりだったのだが、登録者が増えた影響か20個近くの呪物が届いた。
さすがにそれらすべてをジュネさんに見てもらうことはできないから、配信内でみんなとジュネさんに見てもらう呪物を5個くらいにまで減らすつもりだ。
予告ツイートをして配信の準備を行う。
送ってもらった呪物をパソコンの近くまでもってきて机の上を簡単に片す。
本当は清められた塩というやつも用意したかったが、残念ながら胡散臭い物しか見つけることができず、それはそれで別の配信に使いたかったため今回は何も用意しなかった。
前回の伯方の塩はジュネさんからの注意も受けてしまったし。
配信を付けるとさっそくコメントがいくつか書き込まれる。
俺も何個かコメントを書きこんでオープニングが終わるのを待つ。
ミュートを解除して配信を始める。
「待機、待機待機、こんばんは、こんばんは。アーカイブは、あるかどうか分かりませんが、あったらこんばんは。ども、VTuberの、弐十です!」
「今回は!いよいよ来週になった心霊配信に持っていく呪物を決めようの回!」パチパチパチ
『それって、ジュネさんに見せるやつ?』
「そう、ジュネさんに見せるやつ」
「いやね、嬉しいことに!みなさんから27個の呪物が集まりました!」
「あのさ、みんな大丈夫そ?呪物ありすぎじゃない?」
適当にコメントを読みながら配信を進める。
「さて、タバコも吸い終わったことですし、さっそく1つ目の呪物をお見せしましょうか」
手元のカメラに袋に入った黒い粉を見せる。
「みなさん!いったいこれはなんだと思いますか?」
『やばい粉』
『ごま?』
『わかんない』
「やばい粉、違います。ごま、あーね。残念!どれも違います!」
「なんと!こちらお塩だそうです!」
俺のその言葉で一気にコメント欄が進む。
「さっそくお便りの方を読ませていただきますと、」
塩と共に同封されていた手紙を読み上げる。
「えー、弐十くんこんばんは」
「こんばんは」
「これは3年ほど前に家に置いていた盛り塩だった物です。当時夢見が悪く、その夢は黒い手に首を掴まれるというもので、非常に気味が悪かったため、霊感があるという噂の友人に相談したところ、盛り塩をしてみるといいと言われ行ったものです。夜寝る前に行ったのですが、朝起きたときにはすっかりともう黒くなっていました。それ以降あの悪夢を見ることもなく、盛り塩が黒く変色することもありませんでしたが、燃えるゴミに出して良いかわからず。」
『え、やばくない?』
『まじか、、』
『は・か・た・の・塩(500円)』
「ねねこさん、スーパーチャットありがとうございます。あとで、まとめて読ませていただきます」
『黒くなったてことは効果があったってことなのかな』
「効果があったってことなのかな。そうなんじゃない?それ以降夢も見てないみたいだし」
『食べて』
「食べて。え、ヤダ。怖いとかじゃなくて、普通に衛生的なことを考えてヤダ」
投稿者によると送り返しても返さなくてもどちらでもいいと言っていたので、ジュネさんに聞いて大丈夫そうなら次の弐十展に向けて保管しておこうと思う。
ある程度話してからカメラに次の物を写す。
「お次はこちらです!」
『口紅?』
『リップだ!』
「はいこちら、一見するとただの口紅ですね?」
『どこのメーカーだ?』
「どうやらこちらの口紅、送ってくださった方の友人が作ったものだそうです」
『手作り、ってこと!』
『すごい!』
『え、怖くね?』
『絶体ダメなもの使ってるとかでしょ』
「なんで、そんな友人からの贈り物が呪物として今回送られてきたんでしょうね?お便りを読ませていただきましょう」
今回は手紙ではなくDMに書かれた内容を読む。
「弐十さん、初めまして、こんばんわ。こんばんわ。これは20歳の誕生日に幼馴染の友達からもらったものです。とてもきれいな赤色で、もらって以来、私は毎日のようにその口紅を付けていました。」
口紅のキャップを開け、カメラに口紅の色が見えるようにする。
「こんな感じですね」
『赤ってか、茶色じゃね?』
『こんな口紅が欲しい!』
「口紅を付け始めて1週間が経った頃でしょうか、飼っていた犬が死んでしまいました。」
「あら、ご愁傷様です。」
「その時は、長年連れ添っていたこともあり、悲しみこそすれど、特に何とも思っていませんでした。ですが、その後、仲の良かった友人が次々と事故にあい始めました。事件性のない物でしたが、中には一生物の傷を負った人もいました。1カ月が過ぎたころ、母が突然病死しました。その頃になるとさすがにおかしいと思い始め、模試や私は呪われているのでは?と思い始め母の葬式のついでに、お坊さんにお祓いを頼みました。お坊さんは特に気にする必要はないと言いましたが、私がよっぽどひどい顔をしていたのか、簡単なお祓いをしてくれました。」
『それでもう安心?』
『いい坊さんだな』
「その後、いつも通り、口紅を塗ろうとしたら、変色していることに気が付きました。友人は手作りだと言っていたため、早めに腐ってしまったのかな?と思い」
「え、ねぇ、みんな、口紅って、腐るの?」
『腐るよ』
『手作りだと腐るかも』
『私はなったことない』
『変色したことならある』
「あ、そーなんだ、口紅って腐るんだ、へー」
「続きを読みます。腐ってしまったのかなとお思い、使うことをやめました。」
「まぁ、そうでしょうね、腐ってるんだもん」
「ですが、友人からもらったものを早々に捨てることはできず、保管しておくことにしました。色は本当に気に入っていたため、何とかよく似ているものを探し、それを付けていました。もらった口紅を使わなくなってしばらくたったころ、友人が突然自ら命を絶ちました。」
『え、』
『そっちが?』
「家族ぐるみの付き合いだったこともあり、憔悴しきったご両親に代わって、私が友人の部屋を片付けることにしました。部屋を片付けているうちに、1冊のノートが目に入りました。見てはいけないと思いはしたものの、妙に気になって、私はそれを見てしまいました。するとそこにはノートの全ページに渡って○○不幸になれと書かれていました。慌てて他のノートも確認してみると、計13冊のノートが同じように埋まっていました。ちなみに友人はお風呂場で首を切って亡くなっていたそうです。」
「こーわ!え、怖くない?これ」
『絶対血じゃん』
『腐るのが速い←察し』
「え、だよね、絶対血で作ってるよねこれ。ていうか血じゃなくてもヤダ」
コメント欄を見てもほとんどの人が引いているみたいだ。
俺も怖いというよりも気持ち悪いという意味で引いている。
自分に置き換えるとニキ君やトルテさんが俺を憎んでるということだ、残念ながらいまいち想像がつかない。彼らなら嫌いな奴とは付き合わないだろうという確信があるからだ。きっと俺のことが嫌いなら今頃同じ事務所には所属していない。
「ここらでいったん軽いの挟んでおきますか」
コメント欄の流れを読んで、口直しとは違うが、怖くないネタ系の物を挟んでみる。
「えー、お次は先にお便りを読みます」
「弐十くゆへ♡」
「ふっ、変な人」
「これは、今から、30年以上前に、オリジナルの縫いぐるみを作れるお店で作ったものです。」
『急に真面』
『うわ!いきなり落ち着くな!』
「以上です!」
『え、、』
『これで終わり?』
『何が呪物なの?』
『もしや、手紙自体が呪物とか?』
コメント欄が盛り上がっているのを見つつカメラに猫の縫いぐるみを見せる。その瞬間、コメントの勢いがさらに増していく。
『縫いぐるみ?』
『きれいすぎじゃね?』
『30年?3年の間違いでは?』
そうなのだ、綺麗すぎるのだ、まるで、この企画の為に買ってきたのかと邪推してしまうほどに。汚れどころかほつれてすらいない。
念のため釣りの可能性も考えて、縫いぐるみの発売日などを調べた。するとおそらくこれだろうという、思うサイトが出てきたため、それを配信画面に移す。
「僕の方で色々調べてみたところ、おそらくこちらなんじゃないかというものがありました!」
そのサイトによると、オリジナルの縫いぐるみを作るサービスは、もうずいぶん前に日本からは撤退しまっているというものであった。
「ね?なんかほんとっぽくない?」
『信憑性が出てきたな』
『大事にしてただけじゃない?』
「大事にしてただけも、確かにあるかもしれないけど、それでここまで綺麗かな?」
『真ん中の方になんか入ってない?』
「なんか入ってるか?」
コメントに聞かれて少し強めに探ってみる。
「あ!確かになんかあるっぽい!」
コメントをした人に詳しく聞いてみると、如何やら日本版では特別に縫いぐるみを作る際に中央に心臓を模した塊を入れていたらし。
心臓を模したというよりかはただの丸いビーズのようなものが入っているようではあったが。
そのまま何個か紹介したところで、一旦タバコ休憩に入る。
「え、今んとこみんなどれが1番やばそう?」
『2番目の口紅』
『1番目でしょ』
『青い袋』
『簪』
『2番』
『口紅』
『2個め』
『かんざし』
『圧倒的に口紅』
「やっぱ?口紅が一番多いね、俺もね、今のところあれが1番ヤダ。次点で簪かな?え、でもさ、あれはちょっといい話だったくない?最後の方」
『どこがだよ』
『分からなくもない』
『あれがいい話はロボットすぎる』
『ガガガガガガ』
俺的にはいい話だと思ったのだが、どうやらみんなはそうではないらしい。ニキ君たちのせいで配信中もロボット呼ばわりされることが増えたような気がする。ぶっちゃけそこまで気にしていないが、今度の撮影で絶対にとんでもない目に合わせてやろうと心に決める。あの処女中がよ。
「もう残りわずかとなってきました!」
残っている呪物の数を数える。あと3個ほどだ、そのうちの1つはごりっごりの実名が書かれているためお便りだけを紹介させてもらう予定だ。
もう5時間くらい配信時間が経過している。いつもの配信から見て、そこまで長時間とは言えないが明日はトルテさんたちの撮影が入っている。遅刻したならどんなドッキリをされるか分かった物じゃないから何が何でも寝坊するわけにはいかない。
「鼻水出してきます」
いったんミュートにして鼻をかむ。
カタンッ
……部屋の外で小さな音が聞こえた。配信している部屋は防音室となっているため隣の部屋や外の音ということはあり得ない。
もしものことを考えてミュートにしたまま部屋の外に出る。
「え、」
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